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[大学選手権]阪南大DF松下主将と大体大ルーキーFW浅野が見せた勝負

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[12.13 全日本大学選手権準々決勝 阪南大3-2(延長0-0)大阪体育大 西が丘]

 関西勢が激突した準々決勝の1試合。阪南大(関西2)が大阪体育大(関西5)に延長戦の末に3-2で勝利した。阪南大は1点リードかつ数的有利ながらも攻め続けると、カウンターからのピンチも招いたが逃げ切り、2年連続の4強入りを果たした。

 1-1で迎えた延長前半11分に阪南大が2度目のリードに成功。MF松下佳貴(4年=松山工高)からパスを受けたMF重廣卓也(2年=広島皆実高)は「前を向いたときにスペースが広大にあった。浮かせたら央樹くん(前田)なら走ってくれるだろうな」と判断。浮き球ループパスを選択すると、抜け出たFW前田央樹(3年=福岡U-18)が右足で豪快なシュートを叩き込んだ。

 振り返った重廣は「初戦もループパスから央樹くんが決めているし、お互いにわかっていた」と“阿吽の呼吸”で生まれたゴールを喜んだ。

 このゴールで2-1に突き放した阪南大だったが、数的有利かつ1点リードでも前へ攻め込んでしまい、延長前半終了間際の15分には痛恨の失点。松下のミスでボールを失い、左サイドを押し込まれる。ドリブルで駆け上がる大阪体育大のルーキーFW浅野雄也(1年=四日市四郷高)を止めようと必死に追いかけた松下がスライディング。しかし、これもかわされて左足シュートを決められた。

 松下は「2-1になって後ろで回して時間を使おうとなっていたのに、ああいう簡単なミスから軽い守備をして、チームメイトに申し訳なかった」と言うと、「ミスをしたのもあって、早く取り返したい気持ちが先走って、ああいう軽いプレーになったのかなと思う。普段ならあそこで自分はアタックしないので」と冷静になって振り返った。

 松下がスライディングを選択した、もうひとつの理由に直前のワンプレーがあった。失点直前のワンシーン、浅野の突破を松下はスライディングで食い止め、ボールを奪っていた。いいイメージがあったからこその“チャレンジ”だったが、2度目は成功といかずにかわされ、失点した。

 来季のヴィッセル神戸加入が内定しているMFは「一回スライディングでボールを奪っていたから、そのイメージでいったら、上手くかわされた。ドリブルがすごい選手だとは知っていたんですけど……」と悔やむ。

 実際に浅野も松下にやられた最初のスライディングが脳裏に残っていたといい、「試合中に一本スライディングで取りに来ていたので。もう一回来るかなと様子を見てたら取りに来たので、浮かせてかわすことができました。狙い通りでした」と振り返った。

 ルーキーFWに一本取られる形となった松下だが、失点後も自分を見失うことなく平常心でプレー。「あそこで引きずってもダメ。自分が取り返すとみんなにも言っていた」と強い気持ちで攻守に駆け回ると、これに応えたチームメイトが延長後半2分に3-2の勝ち越しゴール。「ほっとしました。本当によかった」と松下も安堵した一撃が決勝点となり、阪南大は2年連続の4強入りを決めた。

 昨年の準決勝で阪南大は、関西学院大に1-2で敗れると同校史上初の決勝進出を逃した。ファイナル行きの壁は厚いが、今年こそは歴史を変えたいところ。松下主将は「去年主力としてやった中で準決勝で負けて悔しい思いをした。強い気持ちを持ちながら、みんなを信頼してやりたい。まずは決勝へいくことを目標にしながら、目の前の試合を頑張りたい」と力強く静かに誓った。

(取材・文 片岡涼)
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