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[大学選手権]リーグ5連敗から全国4強の国士舘大、チームの泥臭さ呼び覚ました4年生FW

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[12.13 全日本大学選手権準々決勝 早稲田大1-4国士舘大 西が丘]

 負の連鎖を断ち切った。国士舘大(関東5)は全日本大学選手権(インカレ)・準々決勝で早稲田大(関東1)に4-1で圧勝。今季2連敗していた相手に快勝すると、2年ぶりの4強入りを果たしてみせた。今季最小失点を誇る関東王者・早稲田大から4発を奪っての勝利。しかし、チームは決していい状態で全国大会を迎えたわけではなかった。

 今季の関東大学リーグでは、最多となる8度も首位に立っていた国士舘大だが、ラスト5試合で5連敗。5戦2得点で5位まで順位を落とすと、辛うじてインカレ出場権を手に入れて、リーグ戦を終えた。MF荒木翔(2年=日本航空高)がアシスト王、FW松本孝平(3年=藤沢清流高)が得点王に輝くなど、個人タイトルは獲ったものの、チームとしては不甲斐ない結果だった。

 細田三二監督は「リーグでは失速して、1試合1試合やる毎に順位が下がっていった」と苦笑。「けが人が出たり、ここぞの試合で大きい選手を欠いて、ターゲットがいなくなったり、負の連鎖でした」と振り返る。不完全燃焼に終わった選手たちは話を重ねていたといい、DF山田真己人(4年=神戸U-18)は「一番首位に立っていたのに、5位で終わってしまって、本当に不甲斐ないとは言っていました」と明かす。

 11月15日に関東大学リーグは閉幕。それから約1か月のときが経ち、インカレの開幕を迎える。今月10日の2回戦・桃山学院大戦では3-2で勝利し、公式戦6戦ぶりの白星を手にした。待望の勝利で準々決勝進出を決めたが、内容が伴っていなかったことから、選手たちは「ほっとしました」と言いながらも、どこか不満げな表情。「リーグ戦の悔しさを晴らしたい」という強い思いが裏目に出てしまい、まとまりを欠くと空回りしていた印象だった。

 ささやかな不安を残し、中2日で準々決勝が控える中、細田監督は選手たちへ「素晴らしい先輩たちがいるんだから、みんなも頑張りなさい」と声をかけたと言う。JリーグのCSを制したサンフレッチェ広島には、国士舘大出身のDF塩谷司やMF柏好文、MF柴崎晃誠がいる。

「Jで一番になるようなチームに3人も、それもレギュラーで出ていて、みんなの先輩は素晴らしいんだぞ」と指揮官は選手たちを諭した。ACLで塩谷がゴールを決めたばかりだったこともあり、「お前たちにもやってやれないことはないんだ」と激励。「先輩たちもこのピッチに立ったんだから」と言葉をかけたという。

 そして迎えた準々決勝の早稲田大戦。MF仲島義貴(4年=神戸U-18)が大腿裏を傷めているために欠場。FW大石竜平(1年=清水桜が丘高)は「1年生特有の疲れなのか、精細さがない状況だった」ためにベンチ外。すると初戦から代わって、ピッチに立ったMF諸岡裕人(1年=正智深谷高)とFW山本真也(4年=静岡学園高)が奮闘。諸岡は前半27分に先制点につながるPKを獲得した。

 また、トップチームでの出場機会の多くない山本だったが、Iリーグからの叩き上げという意地をみせてプレー。まさに“叩き上げコンビ”の松本とともに前線から相手を追い回すと、その運動量は脅威となった。今季リーグの早稲田戦では出場のなかった山本。相手にとっては、“計算外”の嫌な存在だったのは違いない。
 
 チームメイトの山田は「山本真也もずっとサブでやってきた。普段から気を抜かずにここまでやってきたから、今回出ても活躍できたんだと思う」と同期を称える。細田監督も「動き回ってよく角をとった。あれで相手は相当嫌になった。大きな動きを連続するのが彼の特長。前からのプレッシャーで山本と松本に追いかけられるのは、相手からしたら嫌だったと思う」と賞賛した。

 前線で必死にボールに食らいつく山本の姿に感化されるように、チーム全員が球際での激しさを存分にみせ、素早い切り返しでセカンドボールも追いかけた。考えすぎずに必死にプレーした選手たちは本来の姿を取り戻した。

 1失点したものの、国士舘大は早稲田大を寄せ付けることなく、4-1の完勝。早稲田大の主将であるDF金沢拓真(4年=横浜FMユース)に「間違いなく国士舘大の方が戦っていましたし、切り替えからプレッシャーをかけて、アクションを多く起こしていた」と言わしめる戦いぶりだった。

 試合後、指揮官は「(大学サッカーには)パス回しやポゼッション系のチームが多くなったなかで泥臭さが一番出たんじゃないかな」とコメント。「素晴らしいゲームだった」と選手たちを労うと、「初戦に出来なかったことで共通理解ができて、4点も取れた。これは次につながるかな」と手応えを口にする。

 次戦の相手は阪南大(関西2)だ。初の決勝進出を目指して食いかかってくる相手をどう上回るか。「今日のようはことを一生懸命やれれば」と話した細田監督は「相手の良さよりもこちらの良さを出せれば」と微笑む。関東王者を撃破したプライドを胸に泥臭く、2年ぶりのファイナル行きを勝ち取るつもりだ。

(取材・文 片岡涼)
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