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国士舘大ルーキーFW田場ディエゴ「つぶれていっちゃうんじゃないか…」、苦悩の一年

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 華々しい舞台を終えて待っていたのは、苦しく忍耐を強いられるシーズンだった。国士舘大FW田場ディエゴ(1年=日大藤沢高)はルーキーイヤーを振り返ると、「このままつぶれていっちゃうんじゃないかと思ったりしました」と胸中を明かした。

 日大藤沢高のエースFWとして2015年1月の全国高校選手権を沸かした田場。しかし大学進学後は思うようにいかない日々が続いた。高校選抜の遠征中に故障すると、国士舘大へ合流後も約2か月はリハビリ生活を強いられた。「スタートで躓きました」と悔しそうに振り返る。

 それでも前期リーグ最終節・慶應義塾大戦(3-3)でようやく初出場を果たし、大学デビュー戦で初ゴールも記録。迎えた後期リーグでは3試合連続で先発したが、第15節でメンバー外。第17節・駒澤大戦で先発復帰するも、その後はベンチを温めるばかりで出番が回ってくることはなかった。

 田場が最後に出場した第17節終了時には首位に立っていた国士舘大だが、そこから泥沼の5連敗。戦力になれないなかでチームは落ちていった。無力感に苛まれたFWは「リーグ終盤は悲しかったです」と言う。12月の全日本大学選手権(インカレ)も2回戦・桃山学院大戦(2-3)に途中出場するに留まった。

「試合に出ていないのは辛いです。国士舘大のサッカーに合ってないんじゃないかと思ったりすると……合わせようと思ってもなかなか難しいなと」

 国士舘大は高さのあるFW松本孝平(3年=藤沢清流高)を的にボールを蹴り、角をついて切れ込んでいくプレーが多い。「できれば真ん中にいたい」という田場だが、チーム戦術に沿って角を取るためにサイドへ流れてしまう。「自分は足が速くないので、角を取っても追いつかれる。というか角を取っても、取った先に何もないんです」と困惑した表情を浮かべる。

「ドリブルができなくなりましたね」とつぶやいたFWは「高校のときよりも抜けなくなっているので。周りのレベルが高いから、高校で出来たことも出来なくなっているんじゃないかなと。自分の技術の向上を図らないと、このままつぶれていっちゃうんじゃないかって。自分のドリブルが全く通用しないんだけど……という感じで。試行錯誤でやっている最中です」と話した。

 国士舘大のサッカーに慣れるまで、まだ日はかかりそうだが、チームにはしっかり馴染んでいる。全日本大学選手権(インカレ)では、ベンチにいる田場へ先輩たちが「ディエゴ!ディエゴ!」と事あるごとに冗談交じりの声をかけていた。うっとうしそうにしながらも、どこか嬉しそうな表情で応じていた田場。“いじられる”ことについては「嬉しい気持ちもあるけど、うるさいなって気持ちもあります」と笑った。大学サッカーでぶち当たった壁を越え、ピッチでその笑顔を見せたいところだ。

「見ていた国士のサッカーではなく、自分が出て一緒にサッカーをやりたい。そして優勝を目指したい。見ていることが多かったシーズンですけど、次のシーズンこそは、絡んで貢献したいです」。“桜旋風”から早くも1年が経つ。忍耐の時を経て、来季は国士舘大の田場ディエゴとして、ピッチで躍動をみせるつもりだ。武器である切れ味鋭いドリブルを取り戻して。

(取材・文 片岡涼)

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