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[選手権]「東京五輪世代の逸材集結!冬の主役候補たちvol.8」青森山田MF高橋壱晟(2年)_「自分の殻を破れ」ハイレベルな能力発揮して主役へ

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第94回全国高校サッカー選手権

 今年の青森山田高は湘南ベルマーレ入団内定のMF神谷優太、ベガルタ仙台入団内定のCB常田克人の2人に注目が集まるが、プロのスカウトの眼には2年生MFの姿がしっかりと映っている。

 高橋壱晟。10番とともに青森山田のもうひとつのエースナンバーである7番を背負う彼は、青森山田中時代から高度な技術と戦術眼を持つ期待の存在であった。今年、彼に託されたポジションはトップ下。神谷とツーシャドー気味に並ぶが、攻撃センス溢れる神谷に対し、高橋はそのサポート役を務めるとともに、時には同じく2年生のアンカー・住永翔とダブルボランチになりながら、攻守のバランスを司る役割も求められた。

 もともと高い戦術眼を持つ彼だけに、その役割に対する適応力は高かった。しかし、注目が集まる重要な試合になると、その存在感が一気に影を潜めてしまう課題があった。その課題が露骨に出たのが、今年の全国高校総体だった。久御山高との初戦、立ち上がりから彼のプレーはどこかおかしかった。出足が悪く、相手のパスワークに翻弄された。「翔とバランスを考えてやろうと思ったのですが、相手の攻撃に対し、ズルズルと後ろに下がってしまった。前に出なきゃと思ったのですが、最後まで修正出来ないまま終ってしまった」。

 大舞台で自分が持つ力の半分も出すことが出来ず、敗因の一つを作り出してしまった。だが、この経験は彼を一段階、大人にした。「あの試合から、自分のプレーを本当に良く考えるようになりました。自分の持ち味を出すにはどうしたらいいのか。相手の攻撃に飲まれること無く、翔とどう連係をとるべきか。そう考えたときに、どんどん積極的に前に出て、フィニッシュもこなす選手にならないといけないし、前ばかりに行くのではなく、状況によっては翔を前に出して、自分が後ろをカバーするなど、運動量と判断を増やしていかないといけないと痛感しました」。

 プレミアリーグ前期と後期の彼のプレーの印象は、大きく変化した。前期までは自分のリズムが悪いと、姿を消してしまう時間が長かったが、後期に入るとその波が徐々に無くなっていった。試合の流れを読み取り、自分がやるべきことを見極める。この判断の質が上がったことで、彼の攻撃力は格段に向上した。プレミアリーグEAST優勝争いの中、迎えた鹿島ユースとの首位決戦も0-1と敗れはしたが、アタッキングエリアに入り込んで来る質とプレーの選択の早さ、そして下がったときに見せる局面を変えるパスの質は、成長の跡を記していた。最終節となったFC東京U-18戦ではラストパスの精度が冴えまくった。2得点をアシストし、優勝こそ逃したが、有終の美を飾る勝利の立役者となった。

 屈辱の経験から、スケールアップを果たした期待の2年生MF高橋壱晟。選手権では彼の多角的な判断に基づいた質の高いプレーを披露してくれるはずだ。同時に、この大舞台で自らの持っている力を思うように発揮出来たときこそが、彼の成長が本物であることを実証することになる。

「彼は能力的には非常に良いものは持っている。悪い意味で完璧主義者。ミスを恐れている。それに物凄く歯がゆさを感じるんです。もっと失敗を恐れないで、大胆にやれば、あれだけハイレベルな技術と得点を取る能力を持っているのに、それを活かしていない。どんな試合でも最後まで強気のプレーをして欲しい。それをしない限り、上のステージには行けない」。

 黒田監督は彼に厳しい注文を出し続けている。それは裏を返せば、大きな期待の表れであり、彼が殻を破れば、より上のステージまで駆け上がっていくことを示す。

『自分の殻を破れ』。

 指揮官が発し続けるこのメッセージ。「自分次第だと言うことは理解しています」と語るように、彼もしっかりと受け止めている。彼にはこの先、より多くの大舞台が用意されている。いや、そういう舞台に立たなければいけない人材だ。今大会がその第一歩になるように。固い決意を持って、臨んでくるはずだ。

(取材・文 安藤隆人)

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