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[MOM1650]鳴門GK河野匠哉(3年)_アツくもクレバーな鳴門サッカーの体現者!

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[12.31 全国高校選手権1回戦 秋田商高 0-1 鳴門高 等々力]

 1度や2度ではすまなかった。鳴門高(徳島)の最終ラインが秋田商高(秋田)に破られ、絶体絶命のピンチが目の前に現れんとする。その寸前でギリギリ、ボールをかき出していたのがGK河野匠哉(3年)だった。

「もともとはFWでしたから、攻撃的なプレーが好きなんです。それで中学からGKを初めて。ほかのGKにはないプレースタイルでいたんですけど、高校に入って指導者がさらに伸ばしてくれました」。本人曰く、小学校時の全国大会へはCBで出場したとか。

「GKは実力通り…いや、もっといける自信がある」と計盛健一コーチも全幅の信頼を寄せる守護神がいるからこそ、鳴門は最終ラインを高く保ち、コンパクトな陣形で勝負に挑むことができる。

 その実力はこの試合開始早々にも見て取れた。前半5分、右サイドからのセンタリングに秋田商のFW菅原晟也(3年)が合わせたシーンだ。確実にとらえたシュートではなかったものの、ボールはゴールの枠に。それをダイビングで止めた。選手権の初戦の立ち上がりで、これだけの反応を見せられる。

「ホテルから会場へ来る間は緊張があったんですが、いざ会場に着いてピッチ確認していた時には、逆に全く緊張していない自分がいました」。その心臓の強さと身体能力。加えて「躊躇はしない、駆け引きもしている」という抜群の判断による飛び出しで最終ライン裏のスペースをカバーする。ドイツ代表GKのノイアーよろしく、このカバーリングこそが河野の真骨頂だ。この「ラインの高さ」は、彼の長所を生かすための戦術でもある。新チームになってすぐにできた形だ。

「(カバーリングは)相手が強いと引いてしまうクセがあるのですが、そこは自信を持って。やはり飛び出すのに必要なのは気持ちです。学校での練習時から、土のグラウンドでがむしゃらに痛がらず前へ出続けてきました。それが今、芝のピッチで試合ができて、練習も人工芝でできる。痛くないからそれがすごく幸せで(笑)」

 ただし、なんでもかんでもやみくもに飛び出しているわけではない。一瞬判断を誤れば大ピンチになる。間違いは許されない。その精度を高めているのが「冷静な頭脳」だ。「今日の試合も、相手のコーチが“GKが飛び出してくるぞ”ということを(ピッチサイドから)言っているのが聞こえていました。なので、セットプレーなどの時もインプレー中も、ちょこちょこと場所を変えて上がったり引いたりしていました」。相手に的を絞らせないために、試合中は絶えず動き回り虚を突かせない。そのために必要な情報を耳で収集しておく。一見当たり前の話なようで、全国の舞台でこのような冷静な対処はなかなかできない。緊張もあれば重圧のかかる場面でもある。そんな時に全体の俯瞰&視野の確保ができてこそ、精度の高いギリギリの判断が可能となる。

 スタンドの応援の合間には「予選の時に聞いた声だったのでわかりましたが、四国放送の実況が聞こえましたよ」。等々力球技場最上段で実況しているアナウンサーの声がピッチ上のGKの耳がとらえたというのだから驚きだ。

 なにやら規格外の器な予感。勝ち続ければ話題になること間違いなしだ。ちなみに鳴門は地区予選から今日の試合まで、いまだ無失点である。

(写真提供『高校サッカー年鑑』)

(取材・文/伊藤亮)
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