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[MOM1657]星稜FW加藤貴也(3年)_大会直前にFWに転向した小兵、チームを助ける決勝弾

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[1.2 全国高校選手権2回戦 星稜 2-1 玉野光南 NACK]

 中学3年のとき、星稜高のセレクションを受けたが、合格の通知は届かなかった。それでも、星稜でプレーすることをあきらめきれなかった加藤貴也(3年)は、一般受験に合格して、憧れの黄色いユニフォームを身に着ける権利を得た。そして高校3年になった今年、選手権の登録メンバー発表の直前にサイドバックからFWにコンバートされると、2回戦の玉野光南高戦で決勝点を挙げて、チームを3回戦に導いた。

「僕は聖和学園の選手たちのようなことはできない」。そう話すように、加藤のプレースタイルは決して華麗なものではない。だが、その特徴が高い舞台で戦うチームに不可欠であることを河崎護監督は強調する。

「県大会でFWが、なかなかボールを収められませんでした。不器用な2トップで県大会を戦いました。全国モードになると、やはり前から追いかけないとロングボールも蹴られてしまいます。貪欲に追いかけられるプレーヤーは誰だと探していたところ、加藤が一番、働きが良かったので、12月に入ってから彼はレギュラーになりました」

 中学までに複数のポジションをやっていたとはいえ、それまで約3年は攻撃的なサイドバックやサイドハーフとしてプレーしていた。後方のサイドでプレーしていた166センチの小兵は、前線の中央にポジションを移した。選手権での出場を切望していた加藤は「チャンスだと思った」と話すが、同時に適応するのは簡単ではなかった。河崎監督は「12月は彼を相当しごきました。7試合くらいフル出場させて、最後は肉離れ寸前までいきました」と、急ピッチでの適応を求めた。

 加藤にとっても、驚きのコンバートだったという。「監督には、よく怒られていたので、監督に呼ばれたときは『また何かやってしまったかな』と思ったら、『ちょっとFWやってみろ』と言われました」と笑う。ヤンチャな一面も持つ加藤だが、「練習のときに監督がFWの選手に指示を出しているときも、指示の内容を聞いていたので、FWをやるように言われたときも、なんとなくこうやって動けばいいんだなというイメージはありました。コンバートを言われたときは、『チャンスだな』と思いました」と、試合に出場するために普段から集中して練習に取り組んでいたことをうかがわせた。

 このコンバートは奏功した。サイドの上下動で培ったスタミナを武器に、前線を幅広く動いた加藤は、後半33分の決勝点の場面でも、MF大橋滉平(3年)のサポートに入り、パスを受けて、マークを外した大橋にボールを戻す。加藤とのワンツーの後、大橋が右サイドにボールを展開したときにも、動きを止めずにゴール前へ走り込み、大橋からのパスを受けたFW根来悠太(3年)の折り返しにゴール前で合わせたのだった。

「シュートは少しダフったのですが、それも自分らしいかなと。たまたまGKのタイミング外せてラッキーでした。3年間を通してチームに迷惑をかけていたし、このチームで何も結果を出せていなかったので、やっとチームに貢献できてすごくうれしかったです」

 ボールを持っていないときの裏への走り出し、相手のDFに対するプレッシング。それらを怠らないことが、自分のストロングポイントと自覚する加藤は、逆転してからも手を抜くことはなかった。終了間際にパワープレーを仕掛けてくる相手に対して、最後まで体を寄せていき、簡単にボールを蹴らせなかった。

 80分、走り続けた末につかんだ勝利。当然、疲労は残っているが、明日には3回戦が行われる。「監督は周りに『コイツくらい走れ』と言ってくれていますが、運動量だけが評価されていると思うので、疲れを残せません。だから毎日早く寝ないといけないんです。少しでも走れなかったら『おまえ、サボってる』と言われてレギュラーを外されると思うので」。ヒーローになった直後も、強い危機感を口にする加藤は、ピッチ内同様に切り替えが早かった。

(取材・文 河合拓)
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