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[選手権]「選手に感謝し切れない」前々回王者・富山一、後半AT弾で逆転8強入り

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[1.3 全国高校選手権3回戦 矢板中央高1-2富山一高 ニッパツ]

 第94回全国高校サッカー選手権は3日、3回戦を行い、ニッパツ三ツ沢球技場の第1試合では富山一高(富山)が矢板中央高(栃木)に2-1で逆転勝ちし、優勝した前々回大会以来の8強入りを決めた。5日の準々決勝では青森山田高(青森)と対戦する。

 矢板中央は2日の2回戦・鳴門戦(3-0)に途中出場して2得点を挙げたFW人見拓哉(3年)が今大会初先発。前半5分、MF坪川潤之(3年)のロングパスをMF伊藤心(2年)が落とし、人見が左足ボレーで狙ったが、ゴール上へ外れた。

 立ち上がりから守勢を強いられる富山一。この日は2日の2回戦・日章学園戦(1-0)で頭部を負傷したDF澤泉大地(3年)が欠場し、代わってDF能松大河(3年)がセンターバックでDF早川雄貴主将(3年)とコンビを組んだが、高さを前面に押し出す矢板中央の攻撃に耐え切れなかった。

 ともに184cmのDF星キョーワァン主将(3年)、DF川上優樹(3年)という長身センターバックコンビを擁する矢板中央。CK、FKにDF真下瑞都(2年)のロングスローも加えたセットプレーで富山一に脅威を与えると、前半15分、坪川の右CKに真下が頭で合わせ、狙いどおりの先制点を奪った。

 中盤がダイヤモンド型の4-4-2でスタートした富山一だが、その後は中盤を逆三角形にした4-3-3にシステムを変更する。大塚一朗監督は「相手のDFからのロングボールに苦しんだ。相手のDFにプレッシャーをかけて、出どころを抑えるために3トップに変えた」と、その狙いを説明。高い位置からプレスをかけ、セカンドボールを拾う。ゴールには結びつかなかったが、徐々に富山一が押し返し、前半を折り返した。

 1点リードの矢板中央は星と同じくコンゴ民主共和国出身の父を持つハーフ選手のFW森本ヒマン(3年)を3試合連続で後半開始から投入。後半2分、右サイドをオーバーラップしたDF古家秀太(3年)のクロスにファーサイドの森本が下がりながらヘディングシュート。187cmの長身ストライカーがいきなりチャンスを迎えたが、惜しくも外側のサイドネットだった。

 すると後半10分、富山一は左サイドからFW坂本裕樹(3年)が右足でゴール前にクロス。MF久保佳哉(2年)と真下が競ったこぼれ球をMF賀田凌(3年)が右足ボレーで蹴り込み、1-1の同点に追いついた。

 勢い付く富山一は後半16分、PA左でFKを獲得。MF河崎輝太(3年)が短く出して賀田が右足でミドルシュートを放つと、GK渡辺優三(2年)が前に弾いたこぼれ球をMF田畠太一(3年)が至近距離からヘディングで狙った。個の決定機はクロスバーの上へ外れたが、その後も中盤を支配。後半27分には久保に代えてMF前田拓哉(1年)を投入し、最初のカードを切った。

 1-1のまま終盤に入ると、富山一は後半38分、GK相山竜輝(3年)に代えてGK久我芳樹(3年)を投入。県予選準決勝・水橋戦(0-0、PK4-3)でやはりPK戦直前に投入され、PKを2本ストップした“PK職人”が登場したが、試合はPK戦前に決着した。

 後半アディショナルタイム2分、富山一は坂本の右クロスをファーサイドのFW柴田丈一朗(3年)が左足ボレー。GKの体を弾いてゴールネットを揺らし、土壇場で2-1と勝ち越した。「自分でも鳥肌が立った」という柴田の劇的な決勝点。大塚監督は「うちは先に点を取って逃げ切るチーム。先制点を取られて苦しかったけど、最後によく逆転してくれた」と、選手たちをねぎらった。

 全国制覇を成し遂げた2年前のチームと比較し、「今回のチームは攻撃力はそれほどない。堅い守備で勝ち上がってきたのが違うところ」と大塚監督は言う。普段から大学生やカターレ富山といった格上のチーム相手に練習試合を行い、今大会の直前合宿でも神奈川大や流通経済大に胸を借りた。

「格上のチームとやらせてもらうことで、小さな穴やミスがどういうものか分かる」。連覇を目指した昨年度は県予選で敗退。「全国優勝してから長いトンネルがあった。悔しい思いをしてきたし、そういうのを振り払ってくれる勝利。選手には感謝し切れない」。大塚監督は選手の粘り強さを手放しで称えた。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 西山紘平)

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