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[MOM1671]富山一MF賀田凌(3年)_腰痛を抱えながらも好機を逃さなかった小柄な“ヒットマン”

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[1.3 全国高校選手権3回戦 矢板中央高1-2富山一高 ニッパツ]

 ピッチに立っていることが信じられなかった。富山一高の大塚一朗監督は「座ることも立つこともできないぐらい腰を痛めていた」と明かす。「それなのにだれよりも多く走って、点まで決めてくれて、本当に頭が下がります。彼がマン・オブ・ザ・マッチです」。最大級の賛辞を送られたのが、164cmのMF賀田凌(3年)だった。

 痛みは突然、やってきた。前日2日の2回戦・日章学園戦(1-0)。フル出場した賀田だが、試合中、腰に違和感を覚えると、宿舎に戻って夕飯を食べようとしたところで激痛に襲われた。「座れないぐらい痛くなって、立って食べた。すぐトレーナーの方に診てもらって、処置をしてもらった」。疲労性の腰痛と診断され、この日は痛み止めを服用して試合に臨んでいた。

 それでも「ほぼ100%の状態。ほぼ問題なかった」と、痛みを忘れてプレー。中盤の左サイドで先発すると、前半途中に4-3-3にシステムを変更してからは中盤のインサイドハーフに入り、中央から果敢に前線へ飛び出した。「自分が飛び出すことでギャップやスペースが生まれる。自分が動くことで仲間を生かせると思った」と、献身的に走り回った。

 すると0-1で迎えた後半10分、左サイドからFW坂本裕樹(3年)が右足で入れたクロスにMF久保佳哉(2年)と相手DFが競り合い、ボールが賀田の目の前にこぼれた。「相手の頭に当たってこぼれて来た。『来た!』と思って、思い切り打った」。右足ボレーで蹴り込み、1-1の同点。勢いに乗った富山一は後半アディショナルタイムに勝ち越しゴールを奪い、2-1の逆転勝利をおさめた。

 2年前の王者である富山一だが、昨年度の総体、選手権、そして今年度の総体と、いずれも県予選の準決勝で涙をのんだ。「本当に悔しかったし、もう一回、一から見直そうと、自分たちのやらなきゃいけないことを話し合った」。富山一では毎年春に選手たちで日本一になるために必要な9つの要素をダイヤモンド形に並べた「ダイヤモンドナイン」を決定する。そこで一番上に置いたのは「勝利」。それをつかみ取るため、まずは一番下に置いた「規律」の面から見直した。

 トイレ掃除やゴミ拾いなど、選手一人ひとりがピッチ外で“仕事”を持った。サッカーとは直接関係のないことだが、「ピッチ外のことがピッチの中のことにつながる」(DF早川雄貴主将)として、総体後にチーム全員で取り組んできた。賀田の“仕事”は部室の掃除。それを毎日やっているという。「今日の試合もみんなが最後まで自分の責任を果たしたから逆転できたのだと思う」。早川はそう言って胸を張った。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 西山紘平)

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