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[選手権]「今、自分たちを動かしている」“史上最弱”の評価覆すという思い、東福岡が17年ぶりの4強進出!!

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[1.5 全国高校選手権準々決勝 駒澤大高 0-1 東福岡高 駒沢]

 第94回全国高校サッカー選手権は5日、準々決勝を行い、初めて準々決勝へ進出してきた駒澤大高(東京B)と17年ぶりのベスト4進出を狙う東福岡高(福岡)との一戦は、MF橋本和征(3年)の決勝点によって東福岡が1-0で勝利。東福岡は全国制覇した98年度以来となる準決勝(9日、埼玉)で前回優勝校の星稜高(石川)と戦う。

 入学当初から“最弱の世代”と言われ続けてきた東福岡の3年生たち。その世代が苦しみながらも駒澤大高を振り切り、頂点へ一歩前進した。全国高校総体決勝の再戦となった市立船橋高(千葉)との激闘から中一日。市立船橋戦について三宅は「市船戦でもみんな身体張ってみんな良く守った。負けたくないという気持ちが伝わってきた」という。だがこの日は動きが重かった。またMF中村健人主将(3年)も「(市船戦から)切り替えはできていたと思っていたんですけど、気の緩みだったりあった試合だったかなと思います。判断のところだったり、市船戦で集中してできていたところが今回できていなかったところがあった」と首を振る内容だった。

 立ち上がりは自力に勝る東福岡が両サイドへボールを運び、左MF高江麗央(2年)、右MF三宅海斗(3年)の両翼が1対1で突破を図った。2分に左サイドを突破した高江が右足シュートを放ち、また大型FW餅山大輝(3年)が相手DFラインを押し下げようとする。だが、駒澤大高は負傷欠場したCB佐藤瑶大(2年)に代わって本来のFWではなくCBで緊急出場した深見侑生(3年)と1年生CB西田直也が落ち着いて対応をして危険なシーンを作らせない。

 攻撃面でも積極的に前線にボールを入れる駒澤大高の攻撃の前に東福岡のDFラインは押し下げられ、セカンドボールを拾うためにインサイドハーフの中村と橋本のポジションも下がってしまった。これによって前線の餅山と中盤との距離が開いてしまった東福岡はボールを思うように繋げなくなってしまった。26分には右サイドから仕掛けた三宅の左足シュートが相手を脅かしたが、攻撃は単発。前半終盤は大野祥司監督が「ゼロで抑えて、後半隙があったら勝負するみたいな戦略を立てていた」と説明する駒澤大高が果敢なプレッシングからペースを握る。奪ったボールを素早く縦へ運ぶ駒澤大高は31分にMF春川龍哉(3年)の左足シュートがゴールを襲い、35分には左サイドへの展開からFW服部正也(2年)が折り返したボールをニアのMF竹上有祥(3年)が1タッチで押し込もうとした。

 MF野本克啓(3年)らがセカンドボールを良く拾って再び押しこもうとする駒澤大高の前に東福岡は前半、攻撃がどこかチグハグで持ち味のサイド攻撃からクロスを上げるシーンもわずかだった。それでも後半は橋本が「(森重)監督から『このままじゃいけない。後半、自分たちから仕掛けていかないと、1点取られてからでは遅いぞ』と言われて。そこからアグレッシブに縦に仕掛けて行けたので相手にとっては嫌だったと思う」という東福岡が徐々にペースを握り返す。

 サイドの高い位置を取る東福岡は中村の仕掛けからCB児玉慎太郎(2年)が決定的なヘディングシュート。そして15分にはDFの背後を取った餅山が絶妙のコントロールからGKをかわす。あとはGK不在のゴールへシュートを流し込むだけだったが、駒澤大高CB西田がゴールまで戻ってカバー。一瞬躊躇した餅山に深見がスライディングしてクリアする。

 駒澤大高の大野監督が「絶対に最後まで諦めれるな、絶対に最後まで諦めるなと言っていたので。取るか、取られるかっていうところで、選手の足が動かない中で気持ちだけでやってくれていた」と感謝するプレーの連続。夏の全国高校総体王者に対して良く食い下がった駒澤大高だったが後半22分、東福岡がついにスコアを動かす。右中間で動き直して楔に入った中村がダイレクトで右サイドの三宅へさばく。これで前を向いた三宅がアーリークロスを入れると飛び出したGKがパンチ。だが大きくクリアしきれず、これを橋本が頭で打ち込む。ゴールをカバーしようとしたDFの頭上を狙った一撃がゴールネットへ吸い込まれて先制点になった。

 ようやく先制した東福岡は28分にもMF鍬先祐弥(2年)が決定的な右足シュート。だが駒澤大高GK鈴木怜(2年)の正面を突いてしまう。終盤決定機を活かせなかった東福岡だが、駒澤大高必死の反撃を身体を張って阻止。非常に苦しい試合ではあったが、勝ち切った選手たちについて森重潤也監督も「最後選手たちがよく頑張ってくれた」と讃えていた。

 これで東福岡は17年ぶりとなる4強入り。それを入学当初から“史上最弱”と言われてきた世代が果たした。中村は「“史上最弱”と言われていたのが自分たち悔しくて、それを見返すじゃないですけど、それをひとつのモチベーションとして、今自分たちを動かしているところがあるので、森重監督を日本一にすることプラス、1年生のときからの思いというのを晴らすためにも選手権優勝したいです」と言い切った。

 彼らは、MF中島賢星(現横浜FM)やMF増山朝陽(現神戸)ら非常に個々の能力が高かった1学年上の世代と常に比較されてきた。三宅は「最弱と言われたからこそ去年を越えてやろうと思っていました」。中村も「レベルが違っていました」と先輩たちの凄さを口にするが、同時に彼らが全国選手権3回戦で敗れるシーンも目の当たりにしてきた。強いチームでも勝ち続けることは簡単ではない。だがらこそ全国高校総体連覇を果たして先輩たちに並んでも、謙虚さを失わず貪欲に成長を目指してきた。指揮官も「去年の連中と今の連中はかなり比較されながらも全てに置いて背中を追いながらもプレミアリーグでも2位(昨年は7位)という成績を残していますし、選手権でも昨年の16からベスト4、昨年の彼らを完全に追い越していると思います」。比較されてきた昨年のチームの成績は越えたが本当の目標はまだ先。日本一を狙う“史上最弱”の世代がまずは準決勝突破に全力を注ぐ。

(取材・文 吉田太郎)
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