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メディア、ファン、そしてクラブの見方は? 本田が"誤解"を受ける理由

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 ミランMF本田圭佑の発言が、再びイタリアで注目を集めている。日本のメディアに対する発言が、地元メディアに「再度のクラブ批判」と報じられたからだ。報道を受け、イタリアでは本田に対するネガティブな反応も生まれている。本田の今回の発言は、本当に叩かれるべきものだったのだろうか。

 発端は、共同通信によるインタビューだった。『ジャパン・タイムズ』が1月4日、ウェブ上で英訳したものを掲載している。日本語に訳すると、以下のような発言があった。

「(現状が)自分が思い描いていた画とかなり違っていることは認める」

「でも、それに驚いてはいない。想定外のことに出くわすのは、人生で初めてではないからだ。将来を見据えるうえで、こういう経験は自分にとって良いことだろう。だから、できる限りポジティブにすべてを吸収している」

「自分がサインしたとき、ミランは厳しい位置にあった。だから、どうなるかは分かっていた。自分の獲得を望んでくれたのは(当時ミラン監督だったマッシミリアーノ・)アッレグリだったが、それから状況は本当にひどくなっていった。自分が状況を変える助けになれることを願ってここに来たが、監督たちは解任され、結果、ミランはこの2年半から3年、難しい道の上にいる」

「でも、このクラブにおける勝者の血統はいまだ力強いものであり、そういった血を持つクラブは世界でも限られている。僕らにはポテンシャルがあるが、自分がいる間に再建できるかどうかはまた別の話だ。すでに僕らは、誰かを獲得し、その選手が一人で修正できることを願う立場にはない」

「この3年で僕ら(ミラン)は誰を獲得した? カカロビーニョマリオ・バロテッリ、そしてフェルナンド・トーレスがいた。彼は今、アトレティコ・マドリーで見事にプレーしている。人々はそういうことに気づいていないようだ。じゃあ、ほかには誰がいた? サリー・ムンタリ、マイケル・エシエンだ。本当に優れた選手たちがいたんだ」

 イタリアメディアがこの英訳されたコメントに「クラブ批判だ」として飛びついたのだとしたら、誤訳、あるいは悪意を伴った曲解だと言わねばならない。本田は自らも含めて、ミランがこの数年苦しい立場にいることを認めている。これまで優れた選手を擁してきたが、状況は誰か一人の力で一気に好転させられるものではない、と語っている。つまり、 “構造改革”が必要だと訴えた昨年10月の日本メディアに対する発言に通じるものがあり、その考えは一貫している。

 しかし、本田の意図が現地で正しく伝わっているかというと、クエスチョンマークをつけざるを得ない。昨秋の発言も「マンチェスター・シティやパリ・サンジェルマンのような多額の補強が必要」と、大金を使った補強を求めているかのように報じられた。今回も、「ミランは監督を代えすぎだ」といったニュアンスで伝えられている。

 なぜ、イタリアメディアで本田の意図が正しく伝わっていないかは分からない。1月にライバルが加入して、本田の立場がさらに苦しくなると予想されるからか。強気の日本人が気に入らないのか。いずれにせよ確かなのは、ミランの背番号10の発言をメディアは放っておかないということだ。10月の発言をめぐる報道も、反響は大きかった。それに味をしめ、本田がミランについて発言したら飛びつこうという商売意識も、イタリアメディアの中にあるのかもしれない。

 理由はどうあれ、イタリアメディアから情報を仕入れる形のクラブとシニシャ・ミハイロビッチ監督は、快く受け止めてはいないだろう。指揮官は5日の会見で、次のように述べている。

「(本田は)ここでは話さないが、日本では話すこともあるようだ。翻訳上の問題があったりもするし、直接話してみなければ分からないね。直接説明してもらった方が良いだろう」

 本人の意図を確認するのが第一というのは当然だが、ミハイロビッチ監督はこうも付け加えた。「彼は自分が望んでいることを認識している。ナポリ人のようにやっている」。イタリアでは、ナポリと当地の人々に対しての侮蔑的な意識がある。深読みしようとすれば、本田に良くないイメージを持っているという見方をすることもできなくはない。

「(本田は)ここでは話さないが、日本では話をする」という発言も、日ごろのコミュニケーション不足に対する不満から出た可能性がある。指揮官との信頼関係のために、密な話し合いが必要なのかもしれない。

 イタリアメディアの報道を受けて、サポーターも反応している。『ガゼッタ・デッロ・スポルト』の該当記事のコメント欄には、60のコメントが寄せられている(ミハイロビッチ監督がナポリを引き合いに出したことを批判するものも少なくない)。

 本田に関するコメントには、ステレオタイプな「マーケティングのための選手」といった声も少なくはない。ただ、それらのコメントを支持する「いいね」ボタンが押された数は、必ずしも多いとは言えない。逆に、多くの「いいね」を集めたコメントの中には、本田の意見を肯定するものもある。

「『ミランは偉大なクラブであり、高みへと戻る』という決まり文句と本田のコメントなら、後者の方がいい」

「めちゃくちゃな意見だとは思わない。かなり謙虚だと思うし、問題になることは何も言っていない」

「本田が言ったことはまったく間違ってなんかいない。オレたち皆が理解していることだ」

「本田の発言は多くの人が思っていることだ」

 こういったコメントをしたファンの間にも、「本田が言うべきことではない」という声があるのは事実だ。選手という立場を考えてというより、結果を出していないからというのがその理由のようだ。

 本田はシーズン序盤戦でトップ下としてインパクトを残せず、ここまで先発出場5試合でまだゴールはなし。ミランの10番にサポーターが求める数字に達しているとは言い難い。「一人では解決できない」という本田の主張が正しくても、ファンが伝統の背番号をまとう選手に期待をするのも当然のことだ。

 10月に議論を巻き起こす発言をした際、本田は結果ばかりを求めるイタリアサッカー界全体に苦言を呈した。だが、カルチョの世界で結果が最重要視されるのは、今に始まったことではない。

 2006年のスキャンダル発覚から2011年まで低迷していたユベントスは、アントニオ・コンテ監督の下でスクデットを獲得して復活を遂げた。ロベルト・マンチーニ監督も、インテル再建のための堅実な戦い方で現在首位に立っている。決してスペクタクルなサッカーではないが、不満を抱くインテルサポーターは少ないだろう。イタリアでは、結果を出しながらの再建が求められるのだ。

 本田は「自分がいる間に再建できるかどうかは別」と発言している。だが、このメンタリティーは、イタリアではそうそう受け入れられるものではない。建設的な提言であろうとも、目に見えやすい結果を伴わなければ、メディアやサポーターにとっては発現の主を叩く材料以上の価値を見いだしにくい。

 結局のところ、今の本田に必要なのは、結果なのだ。今季2度目のフル出場に対して、同点弾のアシストで応えた2015年最終戦のフロジノーネ戦のように、結果を出さなければいけない。そのためにもまずは6日、先発出場が予想されているボローニャ戦を失地回復の第一歩としなければならない。次に口を開く前に…。

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