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[選手権]聞こえた黄色い声援! 男女別学・久我山、初の全校応援に選手も奮起

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[1.9 全国高校選手権準決勝 青森山田1-2國學院久我山 埼玉]

 初の決勝進出を後押しした。國學院久我山高は9日に行われた準決勝で青森山田高に2-1で勝利し、同校史上初の決勝行きを決めた。試合会場の埼玉スタジアムには、全校応援として久我山関係者の約1600人が駆けつけて声援を送ったという。

 國學院久我山高は男女別学。選手たちによれば女子生徒との関わりはなく、「接触はほぼない。食堂くらいです」と言う。校則の厳しさゆえに駅から校舎までの通学路も男女で分かれており、外部コーチである清水恭孝監督は「練習へ行くと、女子と男子で本当に通る道が違うんですよ」と驚きをもって説明する。

 しかし、準決勝のこの日は同校初の全校応援を実施。國學院久我山という名の下、男女隔てなく皆がサッカー部へ声援を送った。「サッカー部が頑張っているから応援しようと、学校側の理解が得られた」と時崎一男部長は言う。スタンドの一角には久我山の制服に身を包み、オレンジ色の応援バルーンを手に見守る生徒たちの姿があった。

 本来は4時間目までの授業を2時間目で切り上げ、応援に駆けつける予定だった。しかし、一斉下校になった場合の近隣への迷惑やスタジアムでの応援席の扱いなどを考慮し、学校側が「この際、授業は打ち切って、現地集合に切り替えよう」と判断。強制ではなかったものの、時崎部長は「ほとんどの生徒が来てくれた」と微笑む。現地集合ながら、約1600人がサッカー部を応援しようと集まってくれたのだ。

 全校応援が行われることを試合前日に知った選手たちは「久我山で全校応援は聞いたことがない」と驚き、「ここまでしてくれて、本当に優勝しかないと思った」と口を揃える。またDF野村京平(3年)は「この期待に応えないといけない、負けられないという気持ちがより強くなりました」と振り返った。

 そして、後押しを受けた久我山は、準決勝・青森山田戦で先制されながらも2-1の逆転勝ち。1-1の同点弾を決めた野村は「キャー!っていう黄色い声援が飛んでいたので、力になりました。(点を決めて)嬉しかったです。もうサイコー!って」とガッツポーズを繰り出しながら、冗談めかして話した。『文武両道』や『偏差値70以上』と“堅い”イメージが先攻している久我山の選手たちだが、このときばかりは高校生らしい無邪気な一面ものぞかせた。

 また野村は同校初の全校応援に「いよいよ久我山が本気になったのかなと」とも話したが、これを聞いた清水監督は「久我山が本気を出したら、逆に勉強だ!授業をするぞ!となっていたかも」と冗談を交えて苦笑い。それでも「ピッチレベルから応援席を見たら、本当に壮大で力をもらっているなと感じました」と感謝も口にする。時崎部長も「応援席を近くで見ると本当に数が多くて、幸せだなと感じました」と語った。

「応援してくれる人への恩返しのため、自分は情けないプレーはしないと心がけていて、感動させられるようなプレーを3年間の集大成としてしたいと思う」とは野村の言葉。國學院久我山という名の下で共に学ぶ仲間たちに背中を押され、最後の瞬間までオレンジ旋風を巻き起こす。

(取材・文 片岡涼)
(写真協力『高校サッカー年鑑』)
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