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[選手権]きっかけは1-6敗戦。謙虚な姿勢、粘り強い守備目指してきた東福岡が17年ぶりV王手

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[1.9 全国高校選手権準決勝 星稜高 0-2 東福岡高 埼玉]

 17年ぶりの優勝に王手をかけた東福岡高(福岡)には変わるきっかけになった敗戦がある。4月の高円宮杯プレミアリーグWEST開幕戦。東福岡は前年日本一のC大阪U-18にシュート数0-13の前半に4点を奪われると、後半にも2点を奪われて1-6で敗れた。相手の最終的なシュート数は27。Jクラブユースチームの方が仕上がりが早いという理由はあったにせよ、個々の力に加えてチームとしてのハードワーク、切り替えのスピードで圧倒された東福岡はGK脇野敦至(3年)がビッグセーブを連発しなければ2ケタ失点をしていてもおかしくないような惨敗を喫した。

「一年の一番の変わり目」とMF中村健人主将(3年)は振り返る。この大敗の直後にチームはミーティングを開き、自分たちがどうやったら勝てるのか話し合ったという。中村は「個人としての実力が劣っている分、どうやったら強い相手に勝てるのか話し合ってその結果、謙虚な姿勢や粘り強い守備っていうことに至って、次の節、ガンバに1-0で最後まで粘り強く守って(立て直す)きっかけになった」。

 現3年生の1学年上の世代にはMF中島賢星(現横浜FM)やMF増山朝陽(現神戸)、MF赤木翼(現九州産業大)、MF近藤大貴(現国士舘大)ら強烈な個が揃っていた。その先輩たちは全国高校総体6試合で26得点を叩きだして圧巻V。全国舞台でもその強さを見せつけていた。入学時から彼らと比較されて“弱い”“史上最弱”というレッテルを貼られてきた現3年生たちにも意地があったが、C大阪U-18戦との敗戦によって自分たちに何が必要か気付かされた。この敗戦後のミーティングによって自分たちは謙虚に粘り強く戦うということを全員で共通理解し、過信している選手がいれば指摘して「謙虚な姿勢で全員サッカーすることを目指してきました」(中村)。

 C大阪U-18戦の敗戦によって特に守備面が変化した。脇野は「大きく変わったのが守備であの6失点からみんな守備の意識を高く持って、それで守備が良くなってきたから攻撃もどんどんアイディア増やして良くなってきたと思う」という。3月のサニックス杯ではシーズン開幕前のフェスティバルとはいえ、予選リーグ3試合で9失点。失点を重ねてしまっていたが、C大阪U-18戦で6失点して守備意識を高めたあとは、G大阪ユースや名古屋U18、京都U-18など強豪との対戦が続いたプレミアリーグ5試合でわずか1失点。開幕戦ではプレミアリーグ降格の危機感を痛感していたチームはここから立て直し、その後全国高校総体優勝、プレミアリーグでも上位争いに食い込んで最終的には過去最高タイとなる2位でシーズンを終えた。

 中村が「謙虚な気持ちでやるというのが自分たちの特長。謙虚な姿勢が土台となってできている。(去年と比べて)今年の方が粘り強さがあると思う。一人ひとり負けない意識とか今年の方が強い。チームのために走る、戦うことが去年よりも少しできている」と評するチームはこの一年間で全国高校総体優勝、プレミアリーグ2位、そして新人戦県大会と総体の県、九州大会優勝という素晴らしい結果を残してきた。そして選手権で17年ぶりとなる決勝進出。森重潤也監督が「常に昨年のチームと比較されながら昨年のチームを越えた彼らは素晴らしいチームだと思う」と語るように、“弱い”チームではないことを十分に証明しているが、それでも中村は「選手権で負けたら……。自分たちからしたら“最弱”、“弱い”で終わらせたくない、なんとしても優勝したい。優勝してこそ満足いく結果になる。準優勝だったらまだまだ自分たちが目指しているところではないので、優勝目指したい」。決勝で負けたら“弱い”まま。だからこそ、変わらぬ謙虚な姿勢で決勝への準備をして、勝利して“強い”世代として1年を終える。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 吉田太郎)
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