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[選手権]中盤、SBにもゲームメーカー並ぶ陣容、「ボールを大切に」戦い、勝負強さ身につけた國學院久我山が初の決勝進出

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[1.9 全国高校選手権準決勝 青森山田高 1-2 國學院久我山高 埼玉]

 現在東京都1部リーグに所属している國學院久我山高(東京)が高校年代最高峰のリーグ戦、プレミアリーグEASTで2位の青森山田高に逆転勝ち。初の決勝進出を果たした。堅守・青森山田に対して166cmのMF名倉巧が「自分たちは蹴っても身長も高くないので、蹴ったら相手に流れを持っていかれると思う。自分たちがやってきたボールを大切に、パスで繋ぐサッカーを怖れないでやるべきだと。みんな同じ考えなので、それがこのピッチでできたことは良かった。自分たちがやってきたことはこれしかない。このサッカーを信じてやれたと思う」と胸を張ったように、実績ある名門校に対して全国準優勝という舞台で臆することなく自分たちのサッカーを貫いた結果が、後半アディショナルタイムの決勝点、劇的勝利に繋がった。

 左サイドを突破して同点ゴールをアシストした名倉は技術、判断力を駆使して後半にも相手CBを鮮やかな突破で抜き去り、スルーパスで決定機を演出。彼やFW内桶峻、FW澁谷雅也がドリブルで穴を開けるシーンも目立った。一昨年のチームからDFラインが残った昨年は守備の堅さが際立つチームだったが、MF鈴木遥太郎が「今年は昨年ほど守備は良くないけれど攻撃できている。(目指してきたのは)点を取られてもそれ以上に点取れる攻撃力」というように今年は点を取ることのできるチームに仕上がっている。当初は個人プレーに偏る選手もいて、チームメートがどう動きたいのか共有できていなかったという。だがシーズンを深めるにつれて理解し合えるようになり、名倉が「みんな凄い技術高くて(過去に)司令塔とか中盤でゲーム組み立てていた選手」が並ぶ陣容がボールを大切に、パスを繋ぐサッカーを高いレベルで実現させている。

 中盤中央に位置する名倉と鈴木、MF知久航介の3人に加えて、名倉が「今年はSBの選手が宮原くんと研くんというボランチ的な選手で技術がチームでも一番くらいの選手なので、SBに入っても落ち着いてサッカーできている。SBがひとつの起点になれている」と評する右SB宮原直央主将と左SB山本研もゲームメーク能力に長けた選手で、そしてFWの澁谷も以前トップ下を務めていた選手だ。司令塔、ゲームメーカーたちが中盤、最終ラインにも並ぶ。清水恭孝監督は以前、「真ん中潰されればサイドがゲームをつくる。ウチのSBはそれができないと。頑張るだけじゃダメ」と語っていたが、SBに司令塔役の選手が配置されたことによって配球役が増えて、例年以上に多彩な形から得点を取るチームになることができている。

 青森山田の黒田剛監督も「個人個人のスキルが非常に高く、パスワークも凄く上手。凄く距離感が一人ひとり良くて局面を打開する凄く良いチームだと思います」と評した國學院久我山。このスキルの高さに加えてチームは夏から逞しさ、勝負強さを増した。全国高校総体1回戦(対明徳義塾高)では先制しながらも直後に追いつかれると、試合終了7分前に勝ち越されて逆転負け。特に勝ち越されたあと、チームは完全に失速して李済華総監督から「見ている側からしたら、これは追いつけないかもしれない、負けていても、これは追いつけるという力が全然感じられなかった」と指摘された。逆転された後に追いつくというエネルギーを発揮できずに敗れてしまった夏。だが、その敗戦を糧に走り切ることのできるようにトレーニングを積んで「勝ち切るっていうか試合をものにする力がついた」(鈴木)チームは準決勝でその成長を証明した。

 久我山らしい技術と判断力、そして磨いてきた勝負強さを持って決勝に臨む。全国総体王者でプレミアリーグWEST2位の東福岡高との決勝戦。名倉は「世間の人は久我山が勝てないと思っている人がほとんどだと思うけれど覆したい」と力を込め、宮原は「1年前、絶対にこの舞台に立ちたいと思ってやってきて実現できて嬉しい。立つことだけだったら自分はダメだと思う。自分たちが初戦から戦ってきた選手たちの思いが千羽鶴の数となっている。多くのチームの思いを背負って戦っていると思っている。自分たちの良さを出して全力で楽しみたい」。國學院久我山は自分たちらしく臆せずボールを大事に、パスを繋いで戦って日本一を勝ち取る。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 吉田太郎)
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