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[選手権]東福岡・中村主将が果たしたもう一つの「約束」

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[1.11 全国高校選手権決勝 東福岡高5-0國學院久我山高 埼玉]

 右腕を突き上げ、真っ直ぐにバックスタンドの応援団の下へ駆け寄った。1-0で迎えた後半2分、鮮やかなトリックプレーで直接FKを決めた東福岡高(福岡)のMF中村健人(3年)は待望の今大会初ゴールに感情を爆発させ、スタンドの部員たちと一緒に喜びを分かち合った。

「苦しいときはいつも応援団を見るようにしている」。281人の部員を抱える東福岡。そのメンバーの多くがスタンドでメガホンを片手に声も枯れんばかりに叫び、ピッチ上の選手に声援を送っていた。

「つらいときも、良い試合も悪い試合も、いつも支えてくれた応援団のために今日の勝利が必要だった。以前はAチームに絡んでいて、今は絡めてないメンバーもいる。みんなでお互いに刺激し合って成長してきた」

 先制点の起点となり、ハーフウェーライン付近からのロングフィードでFW餅山大輝(3年)の3点目をアシストした中村は4-0の後半35分にも鮮やかな右足ミドルを叩き込み、自身2点目を決めた。2ゴール1アシスト。4得点に絡んだキャプテンは、それでも「281人全員で勝ち取った優勝」と、部員全員に日本一の勲章を捧げた。

 もう一つの「約束」もあった。前日10日に春高バレーで東福岡が2連覇を達成。セッターの井口直紀(3年)と中村は高校のクラスメイトでもあった。「俺たちは(日本一を)獲ったから次はお前たちの番だぞ」。この日、埼玉スタジアムに応援に駆け付けていた同級生のゲキに応えないわけにはいかなかった。「選手権に来る前から(お互いの優勝を)約束していた。実現できて良かった」と微笑んだ。

 卒業後は明治大に進学する。東福岡から明大という進路は現インテルの日本代表DF長友佑都と同じ。大学でサイドバックにコンバートされ、大学在学中にFC東京とプロ契約を結んだ偉大な先輩を意識して、「長友さんも明治で新しいポジション、新しい立ち位置を見つけて成長したと聞いている。自分にも“ここ”っていうところが足りていない。大学で個の部分を磨きたい」と力を込める。

「理想の選手」はハノーファーの日本代表MF清武弘嗣。「明治大で学んで理想に近づきたい。大学在学中にJリーグのクラブから特別指定をもらって、Jリーグに入って、数年後にはドイツに行きたい」。高校日本一も通過点。まだまだ続くサッカー人生の夢を語る中村の表情はだれよりも輝いていた。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 西山紘平)

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