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「日本は誰が出ても強いと証明できた」…U-23代表GK杉本、“腐りかけた自分”からの変化

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 正直、腐りかけた時期があるという。14年9月、アジア大会前に千葉県内で行ったトレーニング中に負傷したU-23日本代表GK杉本大地(徳島)。発足当初から手倉森ジャパンの常連として活動してきたが、その後、招集の機会はなかなか訪れなかった。

「ケガの影響もあってなかなか本来のプレーができずに、しんどかったです」と当時を振り返る。そして、コンディションが上がってきたと感じても年代別代表には招集されない時期が続くと、「よくないことですが」と前置きをしつつも、「腐っていましたね。『何で入れないんだろう』と思ったし…」と葛藤の日々を送っていたことを明かした。

 ただ、そのときに気付けたこともある。「悪い自分に気付けた」と。「僕は人の評価を気にし過ぎることがあるので、それを治そうと。周囲から何を言われようとも、とにかく自分に自信を持とうとしました」。周囲の評価に振り回されず、自分らしく自信を持ってプレーする。結果は後からついてくると信じて――。

 そして、アジア大会から1年1か月後の15年10月、再び手倉森ジャパンに名を連ねた杉本は、見事にリオ五輪アジア最終予選メンバーに選出される。「悪い時期を過ごすこともありましたが、手倉森監督が選んでくれましたし、評価してくれる人がいると感じられた。それは自分自身にとっても大きかったです」。

 自分を評価してくれた指揮官。だからこそ、杉本はこのチームのために全てを捧げようとしている。最終予選ではグループリーグ第1戦、第2戦とGK櫛引政敏(鹿島)がゴールマウスを守り、杉本に出場機会は訪れなかった。「昔だったら、試合に出ている選手がミスをすれば自分が出れるんだと思ったこともありました」と若かりし日を懐かしむように話すと、「ただ今は自分が出なくても腐らずにやれるし、チームの勝利のために何をすべきかを一番に考えています」とたとえ試合に出られなくとも、チームに貢献できると考えられるようになった。

 迎えたGL第3戦サウジアラビア戦、ついに杉本に出番が回ってくる。手倉森ジャパンの一員として公式戦のピッチに立つのは、14年1月16日のAFC U-22選手権オーストラリア戦以来、約2年ぶりとなった。

 前半15分にPA内から放たれたFWアブドゥラハマン・アルガムディのシュートを弾き出すと、「1本止められたのは自信になったし、その後の集中力につながった」とその後も安定したセービングを披露してゴールを守り続ける。さらに後半8分に生まれたMF井手口陽介(G大阪)のゴールの起点になるなど、フィードでも魅せた。不運なPKによる1失点こそ喫したが、90分間ピッチに立ち続けて2-1の勝利、チームのGL3連勝に貢献した。

 先発メンバー10人を入れ替えて臨んだ試合での勝利に、「日本は誰が出ても強いんだと証明できたと思う」と充実した表情を見せた。一時は腐りかけたのかもしれない。しかし、一回りも二回りも成長して手倉森ジャパンに戻ってきた守護神は、今後もチームの勝利のためだけに戦い続ける。

(取材・文 折戸岳彦)

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