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亡くなった少年の“55番”を背負った東京VのGK柴崎「自分も子を持つ親なので…」

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[2.28 J2第1節 東京V1-0札幌 味スタ]

 たとえここにいなくても、間違いなく共に戦っていた。「僕がすべてのシュートをとめるので、安心してください」。若くして亡くなった10歳の少年の思いは届いた。緑のユニフォームを身にまとい、きっとどこかで4年ぶりの開幕戦白星を喜んでいるはずだ。

 東京ヴェルディは札幌に1-0で勝利し、2012年以来となる4年ぶりの開幕戦白星を飾った。試合前のウォーミングアップ、そして試合後のサポーターへの挨拶で東京VのGK柴崎貴広らGK陣は自身の背番号ではなく、55番のユニフォームを着用していた。

 東京Vは今季から「VERS」というサポーターが選手の疑似体験できる企画を行っている。この企画で“新加入選手”となった55番が脳腫瘍により10歳の若さで亡くなった岩田和磨さんだ。今年1月17日には「VERS」の選手による“新体制会見”も行われ、実父の浩明さんが代理で出席していた。

 これらのことを受け、今季開幕前に選手会長を務める柴崎はクラブ側に「せっかくなので(和磨さんと)一緒に戦っているという思いを何か示せれば」と提案。選手たちからの発案にクラブも賛同する形で、試合前後にGK陣が55番のユニフォームを着用することが決まった。

 自身の思いについて口を開いた守護神は「自分も子を持つ親なので、子供さんが若くして亡くなった辛さというのは、まだわからないですけど、想像すると本当に苦しいことだなと思います」と言う。

「それでも、もし僕たちが55番のユニフォームを着ることで、試合に出ているGKと一緒に戦っているんだと思うことで、そういう悲しさだったり苦しさが少しでも和らいでくれればと思いました」

 そして迎えた開幕戦・札幌戦。ウォーミングアップで55番を着用した柴崎は、終盤には押し込まれる場面もあったなか、しっかりと完封。1-0での勝利に貢献したGKは試合後、再び55番に袖を通し、スタジアムを一周していた。

 クラブ公式サイトには「VERS」の選手名鑑も掲載されているが、そのなかで和磨さんは「僕が全てのシュートをとめるので、安心してください」と綴っている。この日の試合もきっと和磨さんは見守っていてくれたはず。試合を終えた東京Vの守護神は「僕たちも彼と一緒に戦っているつもりでやりました。今日もきっと力を貸してくれたんじゃないかな」と優しく微笑んだ。

(取材・文 片岡涼)

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