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失意のインカレを経て…覚醒した阪南大FW山口が全日本の中心選手に

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[3.6 デンソーカップチャレンジ宮崎大会5・6位決定戦 全日本3-2関東B]

 どこか脆さを併せ持つストライカーだったが、覚醒のときがやってきた。全日本大学選抜のFW山口一真(阪南大3年=山梨学院大附高)は、頼れるFWとしてチームを牽引。3戦2得点と結果を残しただけでなく、多くの好機を演出するなど、抜群の存在感をみせた。

 2年生ながら阪南大で10番を背負う山口だが、昨年12月には全日本大学選手権(インカレ)開幕直前の練習に遅刻。その責任を取り、同大会ではメンバー入りすることなく、チームが決勝進出を果たす中で裏方に徹していた。

 そして“禊”を終え、12月末に全日本大学選抜選考会に臨んだFWは、自らの強みをしっかりアピール。選抜入りを勝ち取ると、自身久々の全国舞台となったデンソーカップチャレンジ宮崎大会の3試合で、ひと回り以上も成長した姿を披露。その実力が認められ、大会ベストイレブンにも選出された。

 今大会では初戦で北海道・東北選抜にPK戦の末に敗れ、順位決定戦に回ると5位で終わった全日本。しかし、3試合の内訳をみれば、3戦10得点での2勝1敗。チームとしての攻撃力は十二分にあると示したが、それを牽引したのが他ならぬ山口だった。

 大会を振り返るFWは「自分がチームに貢献するためには、何ができるかを意識していますし、そういう意味ではゴールという形で貢献できてよかった」と言う。「今回の大会は手応えがありました。試合を重ねるなかでチームとしての一体感とか、課題はどこかを話し合って修整できたし、チーム一丸となってやれたと思う」。自身のプレーについてではなく、チームへ対する思いばかりが溢れた。

 素行不良に加え、メンタル面が安定しないことで、プレーの浮き沈みが多く、脆さを併せ持っていたが、今は“チームのために”という一本柱を自らの中に立てることで安定感を身につけた。

 実際に、これまではチームメイトの前で多くを語るタイプではなかったが、今大会の初戦敗戦後にはミーティングで「この一戦に負けたことによって、俺らの人生は終わるわけじゃない。この負けも無駄にしないで積み重ねて、ユニバの金メダルにつなげよう」と進んで発言。チームの一員としての自覚が行動へつながり、結果も生み出している。

 今大会をスタンドから見守っていた阪南大の須佐徹太郎監督は「一真は完全に全日本選抜の中心。見方によっては、今回は彼の大会だった。周りの選手が決めていれば、10アシストはしている勢いだった。改めてすごいと思った」と驚愕。

「まずはチームがあって、自分があると理解して、周りに指示を出すようにもなった。自分の特長を出すことがチームのためになると、当たり前のフットボーラー&アスリートになっている。喜ばしいし、ここからが楽しみ」と教え子の成長に目を細めた。

 全日本大学選抜の宮崎純一監督(青山学院大)は「ものすごいです。びっくりしました。極限まで集中したり、意識を高めると、あそこまで出来る選手なんだなと。そういう意味では可能性を感じました」と高く評価する。

 反省の日々を経て、現在は私生活からしっかりと過ごしていると話した山口。「あれ以来、遅刻はない」と須佐監督が明かせば、山口も「もうハタチになったんで、遅刻は一切していません」と言う。二度と寝坊することがないように、携帯電話のアラームを3分おきに30回もセットするなど、万全を喫しているようだ。

 とはいえ、宮崎監督は山口を称えるだけでなく「可能性は感じましたが、ただオフのときに椅子に座っている姿勢があまりに横柄だったので、スター選手になるまでには僕も声をかけて、ああいうのは直してあげたい」と指摘し、手綱を締める。そんな言葉が出てくるのも、山口がスター選手となるポテンシャルを持っていると強く感じているからだろう。

 今大会で活躍をみせた山口だが、ここで満足はしていない。活躍を続けてこそ、真の中心選手といえるからだ。今季は阪南大の10番として、そして全日本の中心選手として、期待のかかるシーズンとなる。

 “阪南大に山口一真あり”。そして“大学サッカーに山口一真あり”と、その足で示すときは来た。「自分が全日本のエースかはわからないですけど、点に絡めるように続けていきたい。阪南にはいいスタッフ、いい選手、いい仲間がいっぱいいる。その中で日本一を目指したいと思う」。普段は素っ気無く語る山口だったが、このときばかりは言葉に強い熱がこもっていた。

(取材・文 片岡涼)
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