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昨年「NIKE MOST WANTED」で世界と戦ったMF渡辺柊斗、1年生で全日本大学選抜入り果たし、さらに上へ

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[3.9 練習試合 U-19日本代表候補1-2全日本大学選抜 味フィ西]

 もう、チャンスは逃さない。全日本大学選抜のMF渡辺柊斗(東海学園大1年=東海学園高)はこの日の練習試合で2本目途中からボランチとして出場。97年の早生まれである渡辺は同世代であるU-19日本代表候補、そして全日本大学選抜の先輩たちの中で全く引けをとらない動きをして逆転勝利に貢献した。
 
 さすがにU-19代表は意識したという。「ここに入るためにはどうしたらいいのかとか、どうしたら入れるんだろうとか向こうの選手を見ながらやっていました。(出場時間が限られていたので)とりあえずハードワークして少しでも目立てるように意識しました」。通用したと感じた部分があった一方、代表に食い込むためには改善しなければいけない部分も見えた。「パスの部分では良いボールとかきょうも出せていたと思うんですけど、ちょっとしたミスがこっちよりもあっちの方が少なかった。技術的なちょっとしたミス。それをなくさないと入れないかなと思います」。もう一段階上のステージに立つためにまたレベルアップする。

 渡辺は昨年、東海学園大で一年間レギュラーだった訳ではない。リーグ戦は交代出場が続き、先発を掴んだのは終盤の残り5、6試合になってからだという。それでもデンソーカップチャレンジの東海・北信越選抜メンバー入りを懸けた選考会でアピール。「選考会が凄く良くて、入る余地なかったんですけど最後の最後が凄く良かったので滑り込みで入れたと思います」とまさにギリギリでメンバー入りを勝ち取ると、デンソーカップチャレンジでは2試合目から先発出場を果たし、そこでまた関係者からの評価を勝ち取った。。

 全日本大学選抜に関しては当初マレーシア遠征のバックアップメンバーとなる予定だったが、けが人が出た関係で遠征メンバーに抜擢された。全日本大学選抜の宮崎純一監督(青山学院大)は選出理由について「ボランチの候補はいっぱいいたんですけど、(流経大の)塚川などが怪我をしての招集になりました。将来性という意味では、全日本大学選抜と東海選抜が(デンチャレで)対戦したときのGPSのデータが彼が対戦チームのなかでは一番走っていたり、テクニックやサッカー観やスタイルというのが非常に興味深いところがあったので。1年生ですけど、こういうところでの刺激が次につながればと選びました」と説明。大きな期待を受け、1年生が地方リーグから全日本入りを果たした。

 渡辺は昨年、世界で戦える若き才能を発掘する世界的なスカウトプロジェクト、「NIKE MOST WANTED」で国内選考会を突破。年代別日本代表や全国高校選手権のファイナリスト、4強進出チーム、その他名門校の主力選手たちとの競争を制して“日本代表”に選出された渡辺は、5月に世界各国の選考会を勝ち抜いてきた才能たちと「グローバルファイナル」を戦った。そこで鋭いドリブルや精度高い左足パスなどで存在感を示した渡辺は合格レベルに近いパフォーマンスを示したが、エリートトレーニングや欧州プロのスカウトを受ける機会を得ることのできる「ナイキアカデミー」入りを果たすことができなかった。一方で、もう一人の“日本代表”、MF渡邊凌磨は勝者6人のうちの一人に。悔しさをにじませた渡辺だったが、切り替えて、新たな目標を掲げて大学サッカー生活をスタートさせた。

「NIKE MOST WANTED」での活躍は周囲からのプレッシャーに変わった。だが「ナイキ、ナイキってみんなに言われてプレッシャーだったり、このまま何にもなくて終わったら……っていうのもあった。どうしても頑張らないといけないという気持ちがあった」と成長させるための材料とした渡辺は、自身も驚くようなスピードで全日本大学選抜入り。また、海外遠征を経験して一回り大きくなって帰ってくる。

 “ライバル”でもあった渡邊凌磨は「ナイキアカデミー」加入を辞退し、ドイツ・ブンデスリーガ1部のインゴルシュタットのU23チームへ加入。現在、ドイツで挑戦を続けている。彼が上のステージへ上がっていくことを渡辺は歓迎する。「一緒にやっていたんで頑張って欲しいという気持ちもありますし、向こうが上に行けば行くほどそれを抜かすためにはどうしたらいいのとか、高みを目指すようにとか基準になってくると思う。頑張って欲しい。上に行ってほしいですね」。当時、イギリスで敗れた“ライバル”は今後絶対に上回らなければならない存在だ。いつか、上回って、差をつける。そしてもっともっと上のステージへ。急激な速さでステップアップを続けている渡辺は、大学サッカー界を代表するタレントたちが揃う全日本大学選抜の活動を高みへ駆け上がるための力にする。

(取材・文 吉田太郎)

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