beacon

憲剛の最新本を立ち読み!「史上最高の中村憲剛」(1/20)

このエントリーをはてなブックマークに追加

 川崎フロンターレのMF中村憲剛の南アフリカ・ワールドカップから現在までの5年半を描いた『残心』(飯尾篤史著、講談社刊)が明日16日に発売となる。発刊記念として、ゲキサカ読者だけに書籍の一部を公開! 今日から20日間、毎朝7時30分に掲載していく。

待望のストライカー、加入<上>

 2013シーズンを迎えるフロンターレが新体制発表会を行ったのは、ヨルダン戦から2ヵ月ほど前のことだった。

 1月20日、川崎市内にある洗足学園音楽大学のホールに約1000人のサポーターを集めたこのお披露目会で、6人の新加入選手が紹介された。その中で最も大きな歓声を浴びたのが、ヴィッセル神戸から加入した大久保嘉人だった。

 中村憲剛より2歳年下のストライカーは、国見高校を卒業した2001年にセレッソ大阪でプロとしてのキャリアをスタートさせ、2年目には早くもレギュラーポジションを獲得する。2005年から1年半はスペインのマジョルカで、2009年の半年間はドイツのボルフスブルクでもプレーしている。日本代表には2003年から選出され、ワールドカップメンバーに入った2010年の南アフリカ大会では、4試合すべてに先発出場した。

 経験、実績ともに申し分なく、2011年にジュニーニョが退団して以来、空席となっていたエースストライカーの座に収まることが期待された。「攻撃に専念して、15点は取りたいですね。フロンターレは攻撃的なチームだから、神戸のときよりも取れると思います」

 壇上で大勢の記者に囲まれた大久保は、自信をみなぎらせ、力強く言った。

「特に先のことは考えてないです。チームで結果を残せば、サッカーを長く続けられる。これまでも、そういう風にやってきたから、川崎でもそうやっていきたい」

 もっとも、大久保の獲得には懐疑の目もあった。

 2008シーズンにリーグ戦11ゴールを奪ったのを最後に、ふた桁得点から遠ざかっており、2012シーズンは26試合に出場しながら、わずか4ゴールしか奪えていない。ヴィッセルがJ1残留争いに巻き込まれ、大久保自身もフォワードではなく中盤で起用され、守備を求められたことが影響した数字ではあるが、最終的にチームをJ2降格の危機から救えず、自身の結果とあいまって、「終わった選手」とのレッテルが貼られつつあった。

 2012年のオフ、ヴィッセルの新シーズンの構想から外れた大久保は、フロンターレのオファーを受けるその瞬間まで、韓国・Kリーグへの移籍も視野に入れていたという。

 大久保の獲得を耳にしたとき、中村がまっ先に思ったのも「嘉人は、風間さんのスタイルに合うんだろうか」ということだった。

 だが一方で、日本代表としてともに戦った大久保の能力の高さは、誰よりもわかっているつもりだった。

「嘉人は本当にスーパーな選手で、なんでもできる。ヴィッセル時代はそれがアダになって守備も、チャンスメイクも、全部担っていたんじゃないかな。そういったことはすべてこっちがやって、ゴール前の仕事に専念させれば、必ずゴールを量産してくれるはず」

 待望のストライカーの獲得は果たして、吉と出るのか、それとも――。

(つづく)


<書籍概要>

■書名:残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日
■著者:飯尾篤史
■発行日:2016年4月16日(土)
■版型:四六判・324ページ
■価格:1500円(税別)
■発行元:講談社
■購入はこちら

TOP