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キリン杯日程発表、ハリルホジッチ監督会見要旨

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 日本サッカー協会は13日、今年6月に開催されるキリン杯のマッチスケジュールを発表し、6月3日に豊田スタジアムで行われる準決勝の組み合わせは日本対ブルガリア、ボスニア・ヘルツェゴビナ対デンマークに決まった。

以下、ハリルホジッチ監督の会見要旨

バヒド・ハリルホジッチ監督
「かなり重要な大会だ。日本代表にとっては、W杯アジア最終予選に向けて大きなテストになる。我々が招待した3チームはW杯本大会に行くかもしれない。もしかしたらロシアで当たる相手かもしれないということだ。私たちよりもこの3チームが強く、経験があるとしても、この2試合に勝つトライをする。大会をすべての勝利で終える。我々に喜びをもたらす。サポーターの皆さんに、スポンサーのキリンに喜びをもたらす。そうすることで最終予選の素晴らしい準備になると思う。多くの皆さんに足を運んでいただけるように期待しているし、FIFAランキングで我々より上位のチームに我々がどう対抗していけるかも期待している。

 この3チームはまったくスタイルが違う。パワーが強い、テクニック、タクティクスに秀でている、または混ざったチーム。このような特徴を持った相手なので、早く彼らと試合がしたいという思いでいっぱいだ。3チームについて私がどのような印象を持っているか話したい。

 ボスニア・ヘルツェゴビナは私の母国だ。FIFAランキングで20位に入っている。個人の能力はかなり高い。何人かの選手はかなりハイレベルだ。すでに向こうの監督とも話をしたが、トーナメントを勝つために(日本に)来たいと言っていた。

 デンマークはかなりパワーのあるチームだ。デンマークのサッカーの歴史上、初めて彼らはシステムを変えた。前回の試合で3-5-2を使っている。驚いたのは、7人か8人が190cm以上の選手だった。特に空中戦はかなり強い。何人かの選手は欧州のビッグクラブでプレーしている。

 ブルガリアはキリン杯によく招待されているチームだと思うが、過去5試合の日本との対戦で、彼らが4回勝って、1回引き分けている。つまり日本は勝っていない。約1週間ほど前にポルトガルと試合をして、1-0で勝っている。世界の5位か6位に入るチーム相手に素晴らしい試合をした。ブルガリアのフットボールも新しくなっている。難しい時期もあったが、今は若手が台頭して、野心を持ったチームに生まれ変わっている。これが今抱いている3チームに対する印象だ。これから時間をかけて3チームの知識を増やしていきたい」

―キリン杯はW杯アジア最終予選の対策になるか?
「オーストラリアが少しデンマーク、少しブルガリアという形だ。オーストラリア対バーレーンの試合を見たが、サイドからセンタリングを使ってというプレーをしていた。ケーヒルが常にそれに合わせてくる形だ。さらにブルガリアのようなアグレッシブさも持っている。特にアウェーではそうだ。オーストラリアは若手も台頭している。空中戦もかなり強い。そういったことも考えて招待した。いろんなスタイルを持ったチームを呼びたいと思った。テクニックに偏っているチーム、デンマークのような空中戦に強いチーム。そして、アグレッシブさを持っているブルガリア。そういったことがオーストラリアとやるときの準備になる。イラクもそうだ。

 UAE、サウジアラビアは少しテクニックに傾いているチームだと思う。タイもホームでやる試合はデュエルが大事になる。特にアウェーに行ったとき、そのアグレッシブさ、荒々しさに我々が対応できるか。日本代表の監督をやる前から印象があるが、デェエルに対して日本チームはあまり強くないという話も聞いていた。そうした分析をもとに選手を刺激している。イランとアウェーで試合をしたが、そういう試合が待っているという認識のためだ。彼らのアグレッシブさに我々のアグレッシブさがどう対抗していけるかを見たい。前回の合宿でも我々のアグレッシブさに関してもっともっとレベルを上げていかないといけないと選手には話した」

―欧州勢相手に新しく試したいことはあるか?
「私たちの認識では、ヨーロッパのほうがアジアよりもレベルが高い。まったく違うスタイルでやってくる。しかし、次の準備のためにこれを有効に使いたい。それを我々のホームで試せる。彼ら(キリン杯の相手)にはかなりの経験がある。ホームでやろうが、アウェーでやろうが、彼らには関係ない。彼らは自分たちのスタイルを貫き通すと思う。彼らは高いレベルのリーグ戦を常にやっている。スタジアムを満員にしようが、相手はプレッシャーに感じないと思う。それが我々にとって良いテストになる。ここで自信を付けないといけない。勝つ文化を身に付けないといけない。我々が仕掛けにいかないといけない。

 最終予選は2次予選とはまったく違って難しい。第2段階に入っている。W杯本大会はまったく違ういろいろなチームが来る。五輪も4年かけて準備するが、まったく同じことだ。我々にとってキリン杯は素晴らしいテストになる。相手をリスペクトしながらも自分たちに自信を持たないといけない。そして2試合、勝ちにいこうと話している。強豪国が勝つとは限らない。チャンピオンズリーグでも第1戦でレアルが負けた。パリSGはマンチェスター・シティより強いと言われていたが、負けてしまった。常に勝ちたいと思う気持ち。それが代表チームにとっては必要不可欠だ。全選手がどのチームにも勝てるという気持ちを持ってほしい。私の経験をもとに選手にも『すべてが可能だ』と話している」

―準決勝の相手がブルガリアに決まったのは、昨日のW杯アジア最終予選の組み合わせ抽選の結果を受けて監督が希望したのか?
田嶋幸三会長「日程については契約したタイミングもそれぞれの国で違う。それぞれの了解を得た中で、私たちのほうでドローをして決めさせていただいた」

―岡崎のレスターでの最近のパフォーマンスについてどう見ているか?
「岡崎はすべてを出し尽くす選手だ。このような人物がチームにいるのはうれしいこと。チームのために彼は犠牲を払う。クリスティアーノ・ロナウドやイブラヒモビッチのようなエゴイスティックな選手ではない。レスターはファンタスティックと呼べる状況だ。欧州ではレスターの話しか出ないほどだ。毎試合彼を見るたびに、チームで本当にすべてを出し尽くしていると思う。前回のA代表では少し疲れていて、最後のほうで彼を代えたが、A代表では違う役割を果たしてもらっている。冗談で『レスターではボランチ、センターバックをやっている』という話をしているが、A代表ではまったく違う役割をしてほしいと思っている。16mの中で仕留める役割をしてほしい。今シーズン、彼はすごく疲労していると思う。キリン杯で疲労を感じたらプレーさせない判断もする。若い選手にも機会を与えたいし、私の目的はこのチームを本大会に連れていくことだ。2年後に選手がどうなっているかも予想しながら戦っていかないといけない。2018年に本大会に行ったときにパフォーマンスが高いのか。もしかしたらキリン杯に23人でなく、25人、26人を呼ぶかもしれない。すでに頭の中でいろいろ準備している。今までにない選手にもチャンスがあるかもしれない。

 岡崎が疲れていれば、違う選手が出るかもしれないが、国際Aマッチ100試合出場のときはみんなの前で『全選手が岡崎のような全力を出し尽くす姿を見せてほしい』と話した。フットボールをやっている全選手に対しても良い模範だと思う。2、3人の選手には『岡崎を見てくれ』と、ただ一言だけ言った。他の説明はしなかった。岡崎のチームがタイトルを獲ってほしいと思っている。21世紀に残る大仕事とは言えないかもしれないが、それに近いものだと思う。団体スポーツとしてすべてが可能だという良い例をレスターが見せてくれている。私たちもW杯本大会に行きたいし、レスターのような野心を持ってやっていきたい。前回のW杯に出た選手は後悔していた。つまりこのチームでは後悔したくないというメッセージだ」

―新しい選手を呼ぶための選考基準は?
「資格があるかどうか、それだけだ。みなさんが想像できないほど私たちはディスカッションを重ねて、霜田にはいつも電話をしてくれと言っている。国内組に関して特にディスカッションしている。霜田がACLのG大阪戦を見に行って、そのレポートが手元に来たが、パフォーマンスが一定に達していない選手がいるという報告だった。それを見た瞬間に霜田に電話してくれと言った。このようにプレーするならA代表には呼べないと。若い選手にも、経験ある選手にも、すべての選手に大きな信頼を抱いている。しかしながらトライも続けている。資格がなければA代表には呼ばない。

 例えば、大久保にも資格があると思う。私は年齢を考慮もしているが、34歳でありながら得点王を取り続けている。彼はA代表にも貢献してくれているし、リーグ戦にも貢献している。そして、大久保以外の若い選手にもトライしたいと私は思っている。私がチャンスを与えて、全員がそれを有効に活用したかは別の話だ。何人かの選手にはチャンスを与えたが、資格のなかった選手もいた。常に全選手を追跡して、いかなるときもチャンスを与えたいと思っている。今は日本サッカーに対して知識が増え、より深く、より正確な情報を伝えている。日本のフットボールに何が必要か完璧に把握している。

 海外組もそうだ。経験ある選手、リーダーの選手とダイレクトに具体的に話している。本田、香川、岡崎、長友であろうが、資格がなければA代表には呼ばないとハッキリ言った。彼らが中心となって見せないといけない。前回の代表戦で香川が何を見せたか。彼ともたくさんの話をした。そうすることによって我々の関係は強くなる。全選手がこうした信頼関係を築く協力をしてほしい。

 日本人のキャラクターを変えたいとも思っている。何人かの選手はもっとキャラクターを発展させてほしい。柴崎岳とも話をした。彼ともコンタクトを常に取っているし、いろいろな話をした。こないだは柴崎岳を見るためだけにカシマに行った。新しい(柴崎)岳を発見できた。しかも頭で得点した。前回、いつ彼が頭で得点したか分からないが、ヘディングで決めたのは驚きだった。そうすることで岳は私にとってあらためて興味深い選手になった。

 全選手に言えるが、(日本人選手は)いい人ばかりだ。しかし、グラウンドではサムライブルーが見たい。サムライは戦う人間だ。個人心理、集団心理を使って、時にはわざとこうやって刺激しないといけない。何人かはそういったことがまだ習慣化されていない。選手が大好きなので、あえてそういうことをする。私の愛情には厳しいことも含まれている。個人も組織も高めるために、あえて厳しく接している。

 何人か例を挙げたが、他の選手もそうだ。柏木陽介だが、日本代表が始まって以来、初めて選手から直接電話が来て、代表監督のオフィスにあえて彼から来ることになった。これもエボリューション(進化)だ。私は常に代表監督室にいるし、選手にも『ドアはいつもオープンにしてある』と言っている。そういったことも(代表チームが)発展していっている証拠だ。試合でなくても、これも仕事だ。私は何をすればいいか把握している。それが成功するかは分からない。フットボールの真実を言えば、それは結果だけだ。結果を得るには準備をしないといけない。スタッフ全員が止まらず、仕事をしている」

(取材・文 西山紘平)

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