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憲剛の最新本を立ち読み!「史上最高の中村憲剛」(14/20)

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 川崎フロンターレのMF中村憲剛の南アフリカW杯から現在までの5年半を描いた『残心』(飯尾篤史著、講談社刊)が4月16日に発売となった。発刊を記念しゲキサカ読者だけに書籍の一部を公開! 発売日から20日間、毎朝7時30分に掲載していく。

「トップ下に自信がなかった」<下>

 この日はちょうど、8月14日に行われるウルグアイとの親善試合に向けた日本代表メンバーが発表される日だった。インタビューが終わり、クラブハウスのロビーでタクシーを待っている間に、僕は携帯電話を取り出し、発表されたばかりの代表メンバーをチェックした。

 アルベルト・ザッケローニがメンバーのテコ入れを示唆したのは、6月のコンフェデレーションズカップが開幕する前のことだった。

「コンフェデまではこれまでのグループでメンバーを構成するが、コンフェデが終わったら全員がスタート地点に戻り、そこからまた競争が始まる」

 その手始めとして、中国、オーストラリア、韓国と覇権を争う7月の東アジアカップには、Jリーグでの成長が著しい若手を中心としたメンバーで参加し、優勝を飾った。

 果たして、東アジアカップでアピールした新戦力は、選出されるのか。

 あるいは、J1の得点王争いを続けている大久保嘉人の代表復帰はあるのか。

 ウルグアイ戦のメンバー発表の焦点は、そこにあった。

 発表されたメンバーリストには、フォワードの柿谷曜一朗豊田陽平工藤壮人、ボランチの山口蛍青山敏弘、センターバックの森重真人といった新戦力の名前があった。

 だが、大久保嘉人の名前を見つけることは、できなかった。

 それだけではない。中村の名前までなかったのだ。

 しばらくして、帰り支度をすませた中村がロビーに現れた。

 何と声をかけようか迷うこちらの気持ちを見透かしたように、彼のほうから口を開いた。

「入ってませんでしたね。まあ、すでに力はわかっているから、親善試合には呼ぶ必要がないってことじゃないですか。ザックさんも俺の力はわかってくれていると思うし」

 トップ下のファーストチョイスは本田圭佑となる。ベンチに座らせることになるから、親善試合では若い選手を呼びたい――。指揮官がそう考えているのだとしたら、たしかに理解はできる。

 中村がこのまま好調をキープしていれば、若手のテストが終わった頃――もしかすると本番の直前になるかもしれないが――再び代表チームに呼び戻されるに違いない。

(つづく)


<書籍概要>

■書名:残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日
■著者:飯尾篤史
■発行日:2016年4月16日(土)
■版型:四六判・324ページ
■価格:1500円(税別)
■発行元:講談社
■購入はこちら

▼これまでの作品は、コチラ!!
○第13回 「トップ下に自信がなかった」<上>

○第12回 トップ下としての覚醒<下>

○第11回 トップ下としての覚醒<上>

○第10回 めぐってきたチャンス<下>

○第9回 めぐってきたチャンス<上>

○第8回 コンフェデレーションズカップ、開戦<下>

○第7回 コンフェデレーションズカップ、開戦<上>

○第6回 妻からの鋭い指摘<下>

○第5回 妻からの鋭い指摘<上>

○第4回 浴びせられた厳しい質問<下>

○第3回 浴びせられた厳しい質問<上>

○第2回 待望のストライカー、加入<下>

○第1回 待望のストライカー、加入<上>

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