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[関東]3年連続1部9位のダークホース、“攻撃のチーム”から脱皮した桐横大が単独首位!

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[4.23 関東大学リーグ1部第4節 慶應義塾大1-2桐蔭横浜大 青木町]

 第90回関東大学リーグ1部の第4節が23日に各地で行われた。勝ち点7で首位に立つ桐蔭横浜大慶應義塾大に2-1で勝利。同日に行われた試合で同率首位の早稲田大日本体育大に1-0での勝利だったため、勝ち点10で並んだものの、総得点「1」上回った桐蔭横浜大が単独首位に立った。

 何よりも“攻撃力が売り”だったチームが脱皮した。2013年に1部昇格するも、ここまで3年連続で1部9位と低迷。毎シーズン残留争いを戦ってきた。しかし今季は初めて開幕白星を手にすると、そこから3勝1分とスタートダッシュに成功している。昨季のエースMF山根視来(現・湘南)が抜けた穴は、主将のFW今関耕平(4年=千葉U-18)を中心としたFW陣が切磋琢磨するなかでしっかりと埋め、課題だった守備は全員がひたむきかつ謙虚に取り組むことで改善した。

 この日の慶應義塾大戦は、先発した2トップが揃い踏み。前半28分にMF佐藤碧(4年=関東一高)の左クロスから飛び込んだFW石川大地(3年=水戸啓明高)がヘディングシュート。背番号10の一撃で先制し、11分後の前半39分には石川の突破から最後はPA右のFW鈴木国友(3年=相洋高)が冷静にゴール左へシュートを突き刺した。2-0で前半を折り返す。

 リードで迎えたハーフタイムも気を緩めることは無かった。昨季の第13節・慶應義塾大戦で前半2点を先取しながらも、後半に4失点を喫して2-4で敗れていたことから、選手たちは「まだ終わってないぞ!」「ここからが勝負だ」と声を掛け合っていたという。
 
 後半には4-1-4-1から4-4-2へシステムを変えた相手を前に押し込まれるシーンが続き、後半11分にはついに失点。1点差に詰め寄られる。昨年までの戦いぶりでは、この後に失点を重ねていたであろう桐蔭横浜大だったが、今季はそんなピンチの場面でこそ違いをみせた。

 DF八戸雄太(3年=青森山田高)とルーキーDF眞鍋旭輝(1年=大津高)のCBコンビは動じることなく淡々と仕事をこなし、キャプテンマークを巻いた左SB劔聖矢(4年=横浜FCユース)は持ち前のフィジカルで相手の突破を弾き返した。1点を守り切るという意識を共有し、自陣でコンパクトな守備を敷き、あと一歩を許さなかった。

 後半のシュート数は9本と自チームの2本を大きく上回る数を打たれた桐蔭横浜大だったが、最後まで耐え切り2-1で勝利。開幕3勝1分と無敗をキープし、単独首位に立った。

 昨季はリーグワースト2位の総失点数だったが、今季はここまで4戦3失点。「うちは攻撃的なチームと見られがちですけど、実はディフェンスの練習も結構やっているんです」と笑った八城修監督は、今季の守備陣について「ハードワークする力や勤勉さなど、DF陣はすごく真面目な子が多く、よくやってくれている。今、試合に出ている子達は粘り強くて人間性がいい子たちばかり。チームのために戦って、本当にハードワークしてくれている」と労う。

 守備の要であるDF尾崎快斗(4年=実践学園高)を負傷で欠く中、ルーキーの眞鍋や八戸、DF佐々木俊輝(4年=厚木北高)、劔ら守備陣は堂々の戦いぶり。90分を通じて運動量を落とさずに最後までセカンドボールを追い、全員がチームのために戦い抜く姿勢をみせている。

 また昨季のエース・山根が抜けるなか、FW陣の競争意識の高さが相乗効果を生んでいる。開幕戦では鈴木と今関が先発していたが、第3節と今節では鈴木と石川が先発。4-4-2システムの最前線2枠を3人で争っている状況だ。この日は、開幕戦で先発落ちした石川が意地の1得点1アシストの活躍。指揮官は「石川と鈴木と今関は3人とも特長があっていい選手。誰が出てもそん色ない」と評価を語る。

 直近2戦連続ベンチスタートとなった今関主将が「3人それぞれがやることや役割、途中から入ったときも何ができるか、何をやるべきかを理解しています。それにお互いをリスペクトしているので」と言えば、石川も「自分が変なプレーをしたら試合に出られないので、練習中から本当に100%でやってる。いい存在だとつくづく思います」とライバル関係を受け入れている。好調の裏にはチーム内のし烈な先発争いあるようだ。

 DF陣やFW陣のみならず、MF名畑典樹(4年=富山一高)とMF浅沼大和(3年=清水ユース)のダブルボランチは、DFラインに吸収されるシーンもあるなかで機を見て飛び出すなど、リズム生むプレーでチームを支え、2列目の佐藤やMF岡本一輝(3年=川崎F U-18)はFW陣へ正確なボールを供給するだけでなく、鋭い突破でチャンスメイク。GK田中雄大(3年=青森山田高)は果敢なセービングと声を張ったコーチングでチームへ貢献。まさに全員が手を抜くことなく、各々の役割を全うしている。

 単独首位浮上にも選手たちに慢心はない。「上手いチームじゃないので、謙虚にやれているのかなと思います」と話した今関主将は「相手のミスに助けられている部分もあるので、今は運がいいのもあるのかなと。勝っているときはいいですけど、調子が悪いときに何が出来るか。そこを意識してやっています」と気を引き締めた。

 攻撃を売りにしてきたチームにおいて、育て続けてきた守備力がようやく芽を出した。1部昇格4年目のシーズンで開幕ダッシュに成功した桐蔭横浜大。ダークホースの躍進は止まらない。

(取材・文 片岡涼)
●第90回関東大学1部L特集

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