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「NIKE MOST WANTED」は残り1日!存在感増したMF高梨、MF波田野の日本人コンビ

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 世界で戦える若きフットボールプレイヤーを発掘するスカウトプロジェクト「NIKE MOST WANTED」の「グローバルファイナル」(フランス・クレールフォンテーヌ)は現地時間30日、セレクション3日目を開催した。

 アピールのチャンスは残りわずか。その中で“日本代表”として参加しているMF高梨起生(尚志高流通経済大)とMF波田野海(聖和学園高卒)の存在感が増してきている。昨年を知る関係者が“驚くほどレベルが違った”と振り返り、実際に勝者となったMF渡邊凌磨(現インゴルシュタットU23)やMF渡辺柊斗(現東海学園大)までのインパクトはまだ残すことができていないかもしれない。それでも、ともに狭い局面でもボールをコントロールし、打開し、また周囲を良く見てパスを繋ぐことのできる2人はスモールフィールドでの6対3などでボールを受ける回数を増やし、傍から見ても他の外国人選手からの信頼度を高めている印象だ。

 この2日間は世界各国から集まった40選手が3グループに分かれてトレーニング形式のセレクションを実施(高梨、波田野はAグループ)。最終日の選考試合では各グループが1つのチームとなって他グループや“欧州プロ予備軍”の「NIKE ACADEMY」と戦うだけに、個だけではなく、グループ、チームとしての動きもアピールポイントとなる。フィールドメニュー初日の29日は「コミュニケーション」に重きが置かれていたが、1対1や2対2、5対3が行われたこの日午前は「信頼と自信を持つこと」、そして午後は「関わり」というテーマの中で6対6のオフェンス・ディフェンスのメニューなどに取り組んだ。

 それまで、仕掛けにこだわることなく、ボールを失わない部分や、判断良く広いスペースへパスを通すことで他との違いを示していた高梨と波田野。一方でポストの位置に入ってもパスが全く出てこないなど外国人選手たちと狙いが違うシーンが散見し、ボールに触る回数を増やせず、アグレッシブに仕掛けたり、リーダーシップを発揮するフランス人やイギリス人選手の方が自然と目立つ結果になっていた。それでも、この日の午後は高梨、波田野がやりたいプレーが十分に伝わってくる内容だった。

 前日のフィジカルテストでアピールに成功している波田野はギャップを見事に通すパスでコーチ陣から褒められるシーンがあったほか、6対6では一瞬のキレでDFを振りきってGKとの1対1からゴール。特に終盤は左サイドから前を向いて中へ入っていくドリブルで一気にシュートにまで持ち込もうとしていた。「パスはできるっていうのはコーチや見てる側も分かってくれたと思ったので、ドリブルもあるというところを見せたかった」と波田野。強引にシュートまで行く前にボールを失ってしまうシーンもあったが、対面するDFとの1対1はほぼ制していた。

 対して高梨は6対6では攻撃側をコントロール。ボールに誰より多く絡み、崩しの中心となっていた。右サイドをワンツーで崩してゴールをお膳立てしたほか、自らもファーストタッチでDFをかわしてGKとの1対1を制してゴール。スキルと判断力の高さを示すMFについては他国の関係者からも賞賛する声があったほどだ。「いるところにいればボールは入ってくる。完璧ではないですけれども、楽しかった。上手く行けば楽しいというのがあるので。コミュニケーションもだいぶできるようになってきて悪くはなかった」。完璧ではないものの、充実した内容に笑みがこぼれた。

 昨年は6人が勝者として「NIKE ACADEMY」入りする権利を勝ち取った。昨年の渡邊凌に続いて今年も日本人選手が世界に認められて勝者となるか。ともに“日本代表”として「グローバルファイナル」を戦い、協力しあってきた高梨と波田野だが、最も頼りになる仲間はライバルでもある。互いの評価について高梨は「Aグループでは海が結構上の方にいると思う。突っかかっている部分もあるけれどチャレンジする部分がいいところ」と波田野を認め、波田野は「(自分は)日本人でも合わないことがあるけれども、(個人の印象として)アイツ(高梨)は外国人、日本人関係なく合うので凄い上手い印象」とより高梨の方が力を発揮していると分析する。彼らは身近な存在含めたライバルたちを上回るという思いを持って、最終日の選考試合に臨む。

「(Aグループのシステムは)4-4-2で行くという話でボランチだったらさばくだけじゃなくて、ドリブルやスルーパスを入れてチームが勝てるようにすれば上がっていくかなと思います」(高梨)、「仕掛けるところは自分の得意なところでもあるので、高い位置で受けたらどんどん仕掛けていって、ボールが落ち着かない時間帯では技術を活かして受けられる回数を増やして起点となったらいいと思います。今のチーム(Aグループ)しか見ていないですけど、今のチームを見ていたら行けるなと思います」(波田野)とそれぞれが意気込む最終日。ゲームの出来が未来を大きく左右することになるが、彼らが勝ち抜くチャンスは十分にある。チームから課されているテーマの中で個々の特長を出して、最後のアピールをして「NIKE ACADEMY」を果たし、目標である海外プロへの道を切り開く。

(取材・文 吉田太郎)

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