beacon

[JFAプレミアカップ2016]「大会を通じて成長」した清水ジュニアユースが18年ぶりV!

このエントリーをはてなブックマークに追加

[5.5 JFAプレミアカップ2016決勝 清水ジュニアユース 2-1 鹿島ジュニアユース J-GREEN堺]

 春のU-15年代日本一を争うJFAプレミアカップ2016は5日に決勝戦を行い、清水エスパルスジュニアユース(東海2/静岡)と鹿島アントラーズジュニアユース(関東/茨城)が対戦。1-1で迎えた延長後半9分にFW青島太一が決めた決勝点によって清水が2-1で勝利し、18年ぶり2回目の日本一に輝いた。

 清水と鹿島は昨年、12月に行われた高円宮杯全日本ユース(U-15)選手権の2回戦でも対戦。岩下潤監督が「思うようにPAまで持ち込めなかった」と振り返ったように、当時の清水は攻撃で見せ場を作れず、前後半を無得点で終えるとPK戦で涙を飲んだ。リベンジを狙ったこの日も決して立ち上がりは良好とは言えず、先に仕掛けたのは鹿島。前半4分に後方から縦にクサビを入れると、180cmのFW玉木麗音が競ったこぼれを2列目が拾って、左のDF塙啓太へ。中に入れ直した所をFW栗俣翔一が狙ったが、シュートは枠を捕えることができない。

 以降も、鹿島は自陣から玉木を目掛けて、ロングボールを展開したが、「いつも頭に当てるだけで、ロングボールに対する反応が良くない」(岩下監督)という清水DFがこの日は奮闘。東海林泰地西島隆斗のCBコンビが競り勝ちながら、こぼれ球も中盤がきっちり拾って、相手に攻撃する隙を与えない。鹿島の勢いに耐えると、2度目のチャンスは清水の下へ。9分に相手エリア中央でボールを受けたMF五十嵐海斗から右サイドに繋ぐと、オーバーラップしたDF林航輝がゴール前にクロスを展開。フリーで反応したFW山崎稜介が頭で合わせて、先制点を奪った。

 清水は以降も後方でのボール回しによって、リズムを掴んだが、「サイドに相手の守備陣が多いのに、何とか縦に行こうとしすぎていた」(岩下監督)と効果的な攻撃が出来ず。21分にはハーフウェーライン中央でボールを奪った東海林から左サイドに展開し、受けたMF丸山優太朗がカットインからゴールを狙ったが、シュートはわずかに枠の右。追加点が奪えないまま、前半を終えた。

 後半の立ち上がりも、主導権は鹿島。積極的に攻撃参加した右サイドのDF大山晟那を起点にサイドを崩して同点のチャンスを伺うと、後半1分にはさっそくPA右外でFKを獲得。ゴール前に上げたクロスから、玉木がヘディング弾を狙ったが、枠を捕えることができない。鹿島は14分にも右CKを獲得。大山のキックはDFに弾かれてしまったが、クリアボールをMF谷口翔太郎が高い位置でインターセプトし、すかさず傍のMF関口颯乃へ。ダイレクトで狙ったミドルシュートがゴールネットに吸い込まれ、試合は振り出しに戻った。

 ここまで無失点を保ってきた清水にとって初の失点。「僕たちはメンタルが弱い。1点決められたら、落ち込んでしまう」(FW川本梨誉)ことが多いチームだったが、以降も気持ちは切れない。後半終了間際にもCKを与え、玉木の強烈なヘディングシュートを受けたが、青島がヘディングで跳ね返し、失点を回避。「あれが無かったら、負けていた。太一に本当に感謝したい」とGK石井飛雄馬が口にしたように九死に一生を得たチームは延長戦に入って、再び勢いづく。

 歓喜の瞬間が訪れたのは延長後半9分。右サイドのMF佐野由尚から、「左サイドバックの足が止まってきたので、そこを狙っていた」という川本の下にボールが渡ると、さかさずゴール前にパスを展開。ニアで合わせた山崎のシュートは相手GKに阻まれてしまったが、こぼれ球を青島が押し込み、勝ち越すと、以降はきっちり守備を固めて逃げ切りに成功。2-1で勝利し、18年ぶり2度目のJFAプレミアカップ優勝を手にした。

 今大会は主将の川本が直前に内転筋を痛めたほか、10番の五十嵐も故障明けで準決勝までフル出場できないなど怪我人に悩まされた大会だった。怪我人は短い時間での起用を余儀なくされたほか、山崎がU-15日本代表のイタリア遠征に参加していたため、2日目からの合流になるなど、ベストメンバーで試合に挑めずにいたが、「大会を通じて成長してくれている」と岩下監督が称えたように、代わりに入った選手が溌剌としたプレーを披露。5試合を1失点で終えた守備はもちろん、攻撃も「スピードで相手をかわしたり、遠くからすごいシュートを打ったり身体能力が高い選手はいないけど、ボールをしっかり持ちながら選択肢を作ったり、周りの選手が関わっていくのは得意」(岩下監督)という良さを随所で見せた。

 結果としては、「チーム一丸となってつかんだ優勝」(石井)だったが、これまでは先発陣とそれ以外の温度差があったという。転機となったのは4月3日に行われたJFAプレミアカップの東海予選。「ちょっと緩い雰囲気があったけど、東海大会で名古屋に負けて、2位での全国行きが決まってから『このままではいけない』と意識が変わった。あそこで負けてなかったら意識が変わってなかったこともしれない」(石井)。大会直前にあった「先発もベンチ外も全員がポジションを狙っていこう」という声かけも最後の後押しになった。

 念願だった日本一を手にしたが、選手は満足していない。「ここから、夏と冬の大会で連覇できるように、もっとチーム一丸にならないといけない。練習からプレッシャーや技術をもっと上げていけるようにしていきたい」(DF鈴木瑞生)と、視線はすでに先を見据えている。

(取材・文 森田将義)

TOP