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挫折からの復権…ハーフナー・マイク独占インタビュー「あのクラブを見返したい」

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 今季加入したADOデンハーグで31試合に出場し、16ゴールを記録したFWハーフナー・マイク。エールディビジではフィテッセ時代を含めて3シーズン連続となる2ケタ得点をマークし、マインツ時代のFW岡崎慎司が13-14シーズンに記録した15得点を上回る欧州主要1部リーグでの日本人最多得点記録を樹立した。今年3月にはハリルジャパンにも初招集され、約1年5か月ぶりの代表復帰。人生最大の挫折から這い上がった長身ストライカーは今、2年後のロシアW杯を見据え、次なる一歩を踏み出そうとしている。

―移籍1年目で31試合に出場し、16ゴール。満足のいく数字でしたか?
「(14試合で8ゴールを記録した)前半戦は個人的にも勢いに乗れていたと思うのですが、(昨年12月4日のAZ戦で)肋骨を骨折してしまったのが痛かったですね。年内の残り2試合を欠場することになって、ちょっとそこで勢いが止まってしまったのかなと。シーズンで20点は取りたかったですね。本当は24点取って、リーグ通算50得点まで行くことを目標にしていたので」

―マインツ時代の岡崎選手を上回り、欧州主要1部リーグでの日本人最多得点記録を塗り替えたことについてはいかがですか?
「ブンデスリーガで15点取っているオカくんのほうが何倍もすごいと思います。僕の場合は、あくまでオランダリーグで16点取っただけです」

―オランダはどこか肌に合うというようなことがあるのでしょうか?
「特別、オランダだからとは思ってないですね。どこに行っても、ほとんどいつも結果は残してきたと思っています。もちろん、他のリーグに行ったらどうなるか分からないですし、スペインではうまくいきませんでしたが、その意味でも今シーズンは自信を取り戻すことが大事でした。日本代表にも久々に復帰できましたし、苦しい時期があったからこそ、今また、目指すところに戻ってくることができて良かったと思っています」

―そのスペイン時代ですが、フィテッセでは契約延長や他クラブからのオファーも受けながら、コルドバを選択しました。リーガ・エスパニョーラが夢だったのでしょうか?
「やっぱり格好いいじゃないですか、リーガ(笑)。日本人があまりうまくいってないリーグで挑戦してみたいという気持ちもありましたし、プロになってからずっとスペインリーグを見てきて、いつか行きたいなとも思っていました。でも、結局は間違った判断だったと思います。スペイン時代のことは話せないことが多いのですが、他のクラブに行ってから、スペインに行けば良かったのかなと今は思っています」

―コルドバとは14年12月末に契約解除。翌15年3月にフィンランドリーグのヘルシンキに加入しました。半年契約で20試合に出場し、4ゴールでした。
「正直、メンタル的には一番きつい時期でした。この年齢でこんな挫折の仕方があるのかと、本当に苦しかったですね。日本に帰ろうかとも本当に悩みました。でも、当時の代理人から『ここで日本に帰ったら、欧州に戻ってくるのは難しくなる』と言われ、ヘルシンキに行くことになりました。約半年間、試合に出ていなかったし、ほぼ3か月間は所属チームもない状態でした。コンディションを上げるのも大変でしたし、モチベーションを保つことも簡単ではなかったです。半年前はリーガデビューのレアル戦で、(レアル・マドリーの本拠地の)サンチャゴ・ベルナベウで8万人の前でプレーしていたのに、ヘルシンキでのデビュー戦は観客500人。『俺は何をやってるんだろう』と思いましたよ。でも、その試合で1点取ることができて、サッカーができる喜びをあらためて感じることができました。ヘルシンキの人たちには本当に感謝しています。いろんな人に手伝ってもらって、あらためて周りの人に恵まれているなと思いました。自分を支えてくれた人に感謝の気持ちでいっぱいです」

―今後のキャリアについてはどう考えていますか? ブンデスリーガではたくさんの日本人選手がプレーしていますね。
「オファーが来れば、もちろん行きたいです」

―いつかもう一度スペインに挑戦したいという気持ちは?
「もちろんあります。でも、他にも行ったことのないリーグがありますし、まずは別のリーグでプレーしてみたいですね」

―リーガが特別な場所になっているということでしょうか?
「やっぱりあのクラブを見返したいという気持ちもありますから」

―そのためにはまだ自分の実力が足りないと?
「正直、できる自信もあるんです。(レアルとの)デビュー戦では、思ったよりやれたなという手応えもありました。ペペには一回も競り負けなかったと思います。やれる気持ちはありますけど、あらためて言葉(スペイン語)を覚えたほうがいいなとも思いました。聞く分には早く慣れることができましたが、自分でスペイン語をしゃべるのは最後まで難しかったですね」

―3月には日本代表にも復帰しました。代表への思いはいかがですか?
「前回のブラジルW杯に行けず、次のロシアに向けての4年間という意味では、スペインで出遅れてしまいましたが、今シーズンはコンスタントに結果を出すことができました。クラブで試合に出ていなければ、日本代表の候補にも入れないですし、ようやくスタートラインに立つことができたのかなと思います。代表にはもう一度行きたいとずっと思っていましたし、オランダでリスタートできたことは良かったです」

―ハーフナー選手がピッチに入った場合は高さを生かすためにチームとして戦術を変更する必要もあります。
「自分はなるべく何でもできるようになりたいですし、確かに足元は下手ですけど、こなせるところはこなせるとも思っています。でも、自分の持ち味はおいしいところを持っていくところというか、今シーズンも16ゴール中、15点がエリア内からのシュートだったと思いますし、ゴール前こそが自分の生きる場所だと思っています」

―同じフォワードとして岡崎慎司選手の活躍をどう見ていましたか?
「本当にすごいですよね。まずブンデスリーガで15点取ったことがすごいですし、レスターの試合を見ていても、本当に運動量がすごい。毎試合、途中で交代しますけど、試合の1分目から交代するまで常に全力。こぼれ球に対してとか、ゴールへの嗅覚もすごいですし、気づいたらオーバーヘッドでも点を取って……。シーズン前はだれもレスターが優勝するとは思っていなかったと思いますし、オカくんが優勝したときは素直にうれしかったですね。代表で見ていても、自分とはタイプが全然違いますけど、学ぶことも多いですから。悔しいですけど、ちょっとあこがれますよね(笑)」

―3月の代表合宿で久々に岡崎選手を見て、何か変化は感じましたか? 体が大きくなったなという印象を受けたんですが。
「プレミアリーグではあれぐらいが普通なんでしょうね。海外の選手はみんな身長の下2ケタの数字より体重が上なんですよね。身長180cmなら体重は85kgとか、みんなそれぐらいある。みんな獣みたいですからね(笑)。(レスターのセンターバックの)ウェズ・モーガンの体とかやばいじゃないですか。それぐらい強くなきゃ戦えないということだと思います」

―自分のフィジカルもまだまだ足りないと思っているんですか?
「今はだいぶ体重も増えて、194cm、90kgぐらいですね。でも、あと5kgは欲しいなと思っています」

―最後にあらためてロシアW杯への思いを聞かせてください。
「子供のときからどこを目指してきたか、どこに行きたいかと言ったら、やっぱりW杯です。チャンピオンズリーグもそうかもしれないですけど、プロのサッカー選手であればだれでもW杯は経験したいと思っていると思います。今年で29歳。ロシアW杯のときは31歳です。次のカタールW杯のときは35歳ですからね。今回が最後のチャンスだと思っていますし、だからこそこの2年が本当に勝負だと思っています」

(取材・文 西山紘平)

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