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[総体]頭角を現してきた京産大附がベスト4進出!福知山成美は信頼回復して再出発を図る:京都

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[5.22 総体京都府予選準々決勝 福知山成美高 0-1 京都産業大附高 ]

平成28年度全国高校総体「2016 情熱疾走 中国総体」サッカー競技(広島)の京都府予選準々決勝、福知山成美高対京都産業大附高の試合が22日に行われた。

太陽が照りつける中での一戦は11分にスコアが動く。京産大附のMF岡田健がボールを運びながら相手DFをひきつけると、それによって生まれたスペースへボールを送り込む。前線でパスを受けたFW田中皓貴はPA内へ持ち込み、GKとの1対1を制するシュートでゴールネットを揺らした。「守備の選手を置いてシュート練習をやったり、実戦を意識して取り組んできた。トラップも上手くいってGKの動きも見えた」(田中)という納得のゴールで先制点を奪う。その後も京産大附は攻撃を組み立てながら、優勢に試合を進める。

 対する福知山成美は思うようにボールを運べない。「いつもスタートは様子を見ながら試合に入るが、今日は少し慎重になりすぎた」と足立昌義監督代行も反省の表情を浮かべたが、18分の給水タイムを経て、少しずつ攻撃の形が生まれ始める。28分にFW田畑篤人が放ったシュートがゴールポストをかすめるなど反撃の姿勢を見せて前半を折り返すと、後半はボランチで起点となったMF上野皓大が「(中盤に)ボールが入り始めてリズムがつかめた」と話すように攻勢を仕掛ける。ボールを奪うとサイドへ展開し、そこからの仕掛けやクロスから相手ゴール前に迫った。「あとは最後のところを決めるだけだった」(DF岡田皓介)が、肝心のパスやクロスの精度を欠いてしまう。終盤に訪れたチャンスもGK福永淳貴の好セーブに防がれて、1点差を返すことができなかった。

 勝った京産大附は仲井和哉監督は「準備してきたことを出せなかったけれど、得点シーンは僕たちの形が出せた。それに選手たちがピッチの中で感じて、試合に抑揚をつけようとしている。そこに成長を感じます」と手応えを口にした。真面目な選手が多く、試合に向けて取り組んできたことを忠実かつ献身的にこなそうとするのはこのチームの長所といえるが、試合状況に応じたプレーや戦い方という部分では課題があった。そのため、新人戦ではベンチワークなどを通じたコーチングスタッフ主導でピッチ内の調整を行っていた。ただ、今大会は少し変化が見られる。この試合、序盤はペースを握って先制点を奪ったが、その後は苦しい時間帯が続いた。ビルドアップを安定させては敵陣へボールを運んで仕掛けるという自分たちの持ち味は、特に後半に入るとほとんど発揮できなくなっていった。自陣でボールを奪ってからのロングボールも相手CBに跳ね返される劣勢の展開だったが、中盤の形を変えて攻撃に比重を置いてきた相手に対応し、声を掛け合って集中力を切らさずに自陣ゴール前で耐えしのいで、前半のゴールを守りきってみせた。田中も「練習試合では無失点に抑えられることが少なかった。この大会に入って3試合、ゼロが続いているのは自信になっている」とチームの勢いを代弁する。新人戦のベスト4がフロックではないことを証明した勝利だった。

 一方、敗れた福知山成美の足立監督代行は試合後、「こういう状況で試合をやらせてもらえただけで、ありがたかった」と感謝の言葉で口を開いた。福知山成美は15日に行われた4回戦で、昨年の新人戦と総体予選を制している久御山高を撃破。勢いに乗って準々決勝に挑むはずだったが、18日に2年生の部員3人が万引きによる窃盗容疑で逮捕されるという衝撃的な事件が起こった。新人戦や今大会のメンバーに入っていない部員たちではあったが、事態の重さを考慮して出場辞退という可能性もあった。

 最終的には学校側の判断を協会が尊重する形で試合に臨めることになったが、いつもどおりの準備はできなかったという。事件直後は練習が中止となり、再開してからもスタッフが対応に追われてほとんど指導が行えずに試合当日を迎えた。今川宜久監督は自宅謹慎となり、この日は足立コーチが監督代行として指揮。また、2年生は試合に絡んでいた選手を含む全員をメンバーから外し、3年生だけで挑んだ準々決勝だった。選手たちにも同じ部の仲間が逮捕されたというショック、サッカー部としての責任、今後への不安など、様々な思いが心の中に渦巻いていた。ただ、試合に挑むと決まってからは前を向いた。

 キャプテンの岡田は「いろんな状況があって、周りの目もあるけれど、サッカーを全力でやるだけだと決めました。今日は悔いの無いゲームができた」と振り返った。足立監督代行も「今日は普段の力の半分も出せたかどうか…。もっとできると思うけれど、選手には『この状況の中でやれることをやろう』と伝えて試合に挑みました」と話している。今後は秋の選手権予選に向けて再スタートとなるが、有形無形の困難が待ち構えているだろう。信頼回復には時間がかかるかもしれないが、そうした問題から目をそらさずに向き合い、一丸となって乗り越えた姿が見れることを期待したい。

(取材・文 雨堤俊祐)
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