beacon

[総体]14年ぶり全国へ、「状況判断を楽しむ」愛工大名電が名経大高蔵に競り勝つ:愛知決勝L

このエントリーをはてなブックマークに追加

[5.28 総体愛知県予選決勝リーグ第1節 名経大高蔵高 0-1 愛工大名電高 グリーングラウンド刈谷]

 平成28年度全国高校総体「2016 情熱疾走 中国総体」サッカー競技(広島)愛知県予選は28日、4校による決勝リーグの第1節を行い、名経大高蔵高愛工大名電高との一戦は1-0で愛工大名電が勝った。

「回すところ、また裏を取るところ、その判断を大事にしてほしい。状況判断を楽しんでほしいと言っている」。宮口典久監督が語るように愛工大名電は判断良く攻めた前半に先制点を奪う。6分、左サイドのスペースへ抜けだしたMF磯部真(3年)の折り返しをMF小林誉大(3年)が右足ダイレクトでシュート。これがゴールへ突き刺さり、幸先良くリードを奪った。愛工大名電はボランチの小林にかかるプレスが弱いと見るや、積極的に司令塔を活用。小林と10番MF服部隼大(3年)のコンビネーションなどボールを握って攻めると、28分にはMF渡辺瑠伍(3年)のスルーパスから磯部が決定的な左足シュートを放った。

 これは相手DFのカバーにあい、また精度の部分には課題も残ったが、前半は愛工大名電の良さが出る展開となった。中盤でボールを落ち着かせる技巧派MF小宮輝流(3年)や小林らが流動的に動きながら、ワンツーなどアイディアある攻撃を見せる愛工大名電は高いポジションを取った左SB山口貴大(3年)も加えてポゼッションしたり、DF裏のスペースを突く磯部、渡辺を活用するなど主導権を握って攻め続ける。

 一方、名経大高蔵は早い時間帯での失点で後ろが重くなったか、前半は思うような攻撃ができなかった。存在感放つ2年生MF牛尾颯太やMF暮石佑星(3年)がスペースを活用したパスを見せ、最終ラインからの大きな展開がSHへ通るシーンもあったが、相手の守りにサイドへと追いやられてしまうなどなかなか攻撃のポイントをつくることができず、PAまでボールを運ぶことができない。前半32分には早くも牛尾颯の双子の弟でテクニカルなMF牛尾竣太(2年)を投入するが、シュートシーンをつくることができないまま前半を終えてしまう。

 後半立ち上がりは愛工大名電が積極的にシュートを打ち込むが決定打を放つことができない。逆に後半10分に「チームメートからの信頼が厚い」(島井雅也監督)というパワフルな10番FW石原大輝(3年)を投入した名経大高蔵はボールを持つ時間を増やすと、局面では牛尾兄弟らがアイディアあるボールタッチ、コンビネーションによって切り崩そうとする。それでも愛工大名電は、附属の愛工大名電中から本格的にサッカーを始めたというCB溝渕洋平(3年)やCB二上純(3年)、MF松永陸玖(3年)が最後の局面で突破を許さない。名経大高蔵は右MF吉田悠人主将(3年)のドリブルなどから終了間際にようやくセットプレーの数を増やしたが、島井監督は「もうちょっと落ち着いてやれれば。(攻撃タレントを投入する)後半勝負と考えていた。0-1なら行けると思いましたけれど、相手に粘られてしまった」。今大会無失点の愛工大名電は前線で「調子は悪い方。本来もっと失わずにプレーできる」と言いながらも磯部がエネルギッシュに走り続けて攻守に奮戦し、また最終ラインも集中力を切らさずに守りぬいた。

 特に前半、ボールを支配して攻めた愛工大名電だが、それに固執している訳ではない。「相手チームにどれだけ対応して、どれだけサッカーを変えれるかと言われている」と小林が説明したように、後半押し込まれた時間帯はしっかり守ることに注力するなど、相手を見たサッカーで上回り、80分間勝利による勝ち点4を勝ち取った。自分たちは選手権予選で4強入りした昨年ほど個々の力はないと感じている。だからこそ、自由を与えられている攻撃の中で相手を上回る判断の速さ、精度で差をつけて強豪たちに勝っていく意気込みだ。また、ピッチサイドでは控え部員たちが試合開始前から大応援を展開。宮口監督は「(彼らは)自分たちの練習よりも応援の練習がしたいと言ってくるくらい」と説明していたが、チームの仲は非常に良く、これがピッチの選手たちのモチベーションをまた高めている。磯部は「僕達に懸けてくれている。だから頑張ろうと思います。全国に出たら人生変わると思うので、頑張りたいです」。学年の隔て無く、勝利を心から喜んでくれた仲間の声を力に、愛工大名電は残り2試合で14年ぶりとなる全国切符を勝ち取る。

(取材・文 吉田太郎)
▼関連リンク
【特設ページ】高校総体2016

TOP