[5.29 総体静岡県予選準決勝 浜松開誠館高 0-0(PK6-5)静岡城北高 アイスタ]

　平成28年度全国高校総体「2016 情熱疾走 中国総体」サッカー競技(広島)静岡県予選準決勝が29日に行われ、ともに初優勝を狙う浜松開誠館高と静岡城北高が激突。0-0で突入したPK戦を6-5で制した浜松開誠館が初の全国大会出場へ王手をかけた。

「上手さと強さあるサッカーで全国常連に。そして静岡を席巻する存在に」。元清水FWの浜松開誠館・青嶋文明監督は「破天荒」と記された大フラッグに込められた思いについて説明した。昨年、05年の創部から11年目で初の決勝進出(準優勝)。そして今年は2年連続でファイナリストとなった。プリンスリーグ東海でも優勝争いを演じるなど、静岡の勢力図を変える存在となった新鋭が全国の扉を開くまであと1勝。「(抜きん出たタレントはいないが)今年の子どもたちは主体的な子が多い。自分たちからどんどんやっていこうという子が多いです。私はそういうチームが勝つと思う」と語る指揮官は、「子どもたちあっての大会。やってきたことをしっかり出せるように準備していきたい」と、決勝で選手たちが普段の力を発揮できるように準備していく考えを強調した。

　前年王者の清水桜が丘高や選手権出場の藤枝東高といった強豪が準々決勝までに姿を消す混戦のトーナメント。2回戦で清水桜が丘を破って勝ち上がってきた静岡城北とプリンスリーグ勢の浜松開誠館との一戦は、MF今泉富(3年)の配球やFW鈴木理久(3年)のキープ力を活かして攻める浜松開誠館が主導権を握る展開となった。8分には今泉のラストパスからMF神田修愛(3年)が左足シュート。13分にはMF坂東篤(3年)のスルーパスに反応したFW藤田晴海主将(3年)が決定機を迎える。

　だが、中部地区9位から躍進を遂げて初の4強入りを果たした静岡城北も負けていない。CB鈴木雄大(3年)やCB川口渉平(3年)を中心に相手のパワフルな攻撃を跳ね返し、俊足FW青山恭輔(3年)への縦パスやアーリークロスを入れてくる。それでも前半半ばを過ぎると、ミスでボールを失ったり、消極的なクリアを拾われる回数が増えてしまう。浜松開誠館は高い位置でインターセプトする左SB須貝英大(3年)がミドルシュートを連発するなど連続攻撃で相手を押し込んでそのゴールを脅かした。

　静岡城北は33分にコンビネーションから10番FW久保田蓮(3年)がファーストシュートを放つと、39分には鈴木の絶妙なフィードを起点に左SB藪井翔(3年)がクロス。これをファーサイドのMF牧野弘(3年)が叩いた。そして後半7分、味方のミスからショートカウンターを食らうもゴール前で鈴木が執念のクリアを見せると、20分には浜松開誠館FW鈴木のヘディングシュートをCB川口がゴールライン上でクリア。ガッツポーズで喜ぶ背番号3に呼応してスタンドも沸いた。また、頭部をカットしながらヘディングでクリアする右SB横山峻(3年)や好セーブを連発するGK桑山知己(3年)に支えられた静岡城北は久保田の果敢な仕掛けから反撃。だが、今大会無失点の浜松開誠館はCB野中大貴(3年)やCB中尾健嗣(3年)を中心に最後までゴールを許さず。0-0で後半を終えた試合は延長戦を行わずに即PK戦へ突入した。

　浜松開誠館の今泉は「なかなか取れなくて厳しい試合だった」と振り返る。PK戦では3人目の須貝のシュートが左ポストを叩いて追い込まれた。だが、5人目、決めれば勝利の決まる静岡城北は好守を見せていたCB鈴木の左足シュートがゴール右外へ外れてしまう。そして7人目、浜松開誠館の坂東が決めたのに対し、静岡城北は交代出場で流れを引き寄せていたMF吉田匠臣(3年)のシュートが枠を外れて決着がついた。諦めずに勝利した浜松開誠館の今泉は「(先に外しても)負ける気がしなかった。勝ち切るのは自分たちの強み。勝ててよかった」と胸を張った。

　浜松開誠館はこの日、会場を訪れた清水DF松原后が2年時の新人戦で県初制覇。その松原も「今年行くしか無いんじゃないですか」と期待するチームが歴史を塗り替えるか。悲願の全国へ。須貝は「練習でやってきたことをやるだけ。まずは全国出て開誠館のサッカーを見せたい。そして全国で勝ちたいです」と意気込み、今泉は「謙虚に、雑草魂で行きたい」と力を込めた。浜松開誠館中が04年の全国中学校大会で優勝するなど結果を残して注目を集め、05年に高校のサッカー部が創部してから12年目。高い志を持つ新鋭が決勝で名門・静岡学園高の壁を乗り越えて全国の舞台に立つ。

(取材・文　吉田太郎)

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