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[MOM1791]福島東FW渡辺賢太(3年)_雨降って地固まる? 福島東のエースが決勝点に込めたモノ

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[6.3 総体福島県予選準決勝 福島東高 1-0郡山商高 鳥見山多目的広場]

「こんなに悩んだ覚えはない」というエースの吹っ切れたような一振りが、チームを決勝へと導いた。立ち上がりから郡山商高に押し込まれ続けた総体福島県予選準決勝。福島東高のFW渡辺賢太に巡ってきたのは、まさにワンチャンスだった。

 前半27分、「受けるときからイメージがあった」というドリブルからのシュートがゴールネットを揺らし、これが決勝点となった。今大会は腰に負傷を抱えながらのプレーとなって決して万全ではないのだが、「あいつがいないとサッカーにならない」と斎藤克幸監督からも一目を置かれるエースにふさわしい一仕事だった

 とはいえ、ここに至までは平坦な道のりではなかった。県予選前の地区予選では福島南高に敗れて敗者復活トーナメントに回るという険しい道のりだった。福島南との試合後には「なんで負けたのにヘラヘラ笑ってんだ!」などと怒号も飛び交い、一時は険悪な雰囲気もあったという。ただ、斎藤監督は「ケンカをするくらいにぶつかり合えたのが良かった。ウチの選手たちは本当に仲がいい。それは悪いことではないのだけれど、なあなあになっていた部分もあった」と言うように、渡辺自身も「腹の内まで出して言い合えて、ぶつかれたのは良かった」と振り返る。

 メンタル的に吹っ切れた(ある意味、吹っ切るしかなかった)チームは驚きの快進撃を見せることになったが、渡辺は「運が良かっただけ」と笑う。その言葉も、まだチームが成長できるという思いがあるからだろう。

「個人個人の能力は高くない。一人でぶち抜いていけるやつはいないし、絶対に競り勝てる選手とかもいない。だから2、3人が絡んでつないで崩していくようなサッカーができるようにならないといけない」と言った古豪のエースは「頑張って応援してくれる人たちがいる。ピッチに立つ以上、情けないプレーは絶対にできない」という決意を噛みしめるように紡いで、前を向いた。

(取材・文 川端暁彦)
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