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[MOM1797]熊本国府MF渡辺智貴(3年)_自身のため、地域のために走り続けた努力家。初起用の大会でブレイク

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[6.7 総体熊本県予選決勝 熊本国府高 1-0 熊本商高 エコパーク水俣陸上競技場]

 熊本国府高の佐藤光治監督はチームの成長株として、また決勝のマン・オブ・ザ・マッチとしてMF渡辺智貴(3年)の名を挙げた。指揮官は「これまで公式戦は未経験。新人戦は1試合も出ていません。我慢もして起用して。でも守備とか良くやれたと思います」。この日はダブルボランチの一角として奮闘。準決勝では熊本学園大附高の10番MF日置舞哉を封じ、熊本商高と対戦したこの日は大津高撃破の立て役者だった10番MF大津勇人に仕事をさせなかった。

 渡辺は「気持ちしか無いと思った。とりあえず相手のキーマンを潰すことしか考えていなかった」。176cmの高さを活かして空中戦を制し、長い足を活かして相手ボールを絡め取る。CBと連動して相手の要注意人物を消し、縦パスを引っ掛けてそのまま前進するシーンも幾度かあったMFは「(大津へのパスを)何本か入れられたんですけど8割くらいは自分で取れたんで良かった」と納得の表情。堅守・熊本国府をレベルアップさせた守備的ボランチが優勝の立て役者となった。

 これまでは本当にケガに悩まされてきた。中学時に左足首を複雑骨折。昨秋には膝を怪我して長期離脱を強いられた。新人戦のメンバーには入ることができず、その後腰も負傷。だが「(8強入りした)新人戦九州大会で仲間が頑張っているのも刺激を受けて、総体は命懸けてやろうと」トレーニングしてきたMFにチャンスが訪れる。総体予選開幕2週間前から中盤で起用されるようになると、初戦では先発に抜擢。「ケガして何回も迷惑かけて、そろそろ親に格好いい姿を見せたいと思っていた」というMFは“懸けて”きた思いをピッチで表現し、球際の厳しい守りとロングキックで白星をもたらしてきた。

 コーチングスタッフたちが認める努力家。佐藤秀樹部長は「人間的に凄い。生活面は国府一です」と絶賛する。熊本地震後はサッカー部のチームメートと連係して各地の避難所に足を運び、何が足りないのか把握。今、本当に必要なものを取りまとめ、熊本国府高に集まった支援物資を振り分け、自転車の荷台やカゴに入れ、リュックに背負い、各地に届けた。佐藤部長らに連絡を取り、一緒に熊本市外に支援物資を運ぶことも。家族も「誇りに思う」と語ったというほどボランティア活動でも手を抜かず、またサッカーでも諦めずに努力してきたMFは今大会、ひとつ花を開かせた。

 レアル・マドリーのMFカゼミーロが憧れ。「あのディフェンス力と展開力を尊敬して自分もやっています」という守備的ボランチはまずポジションを死守する。そして自身初の全国では「ひそかに狙っています」というゴールと、「(県予選では)失点ゼロだったので失点なくして、一個ずつ勝ち上がっていけたらいい」という目標を果たす。

(取材・文 吉田太郎)
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