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[総体]古豪・島原商が10年ぶりに夏の長崎ファイナル進出!3年生6人の“最弱世代”が堅守武器に躍進!

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[6.9 総体長崎県予選準決勝 大村工高 0-1 島原商高 長崎県立百花台公園サッカー場]

 9日、平成28年度全国高校総体「2016 情熱疾走 中国総体」サッカー競技(広島)への出場権を懸けた長崎県予選準決勝が行われ、大村工高と島原商高が対戦。CB本田圭哉(3年)の決勝ゴールによって島原商が1-0で勝ち、10年ぶりとなる決勝進出を決めた。島原商は10日の決勝で長崎総合科学大附高と対戦。勝てば、地元開催だった03年大会以来13年ぶり17回目の全国総体出場となる。

 77年に全国高校総体優勝、84年度の全国高校選手権では帝京高と同時優勝を果たしている古豪が10年ぶりに夏の長崎ファイナルへ駒を進めた。終盤、押し込まれる展開を耐えて勝ち取った決勝切符。島原商OBでもある岩橋宗弘監督は「力が無いんですよ。もう、目一杯でした」と苦笑したが、それでも伝統校は勝負強さを発揮して準決勝を突破した。準々決勝で優勝候補の一角である海星高を0-0からのPK戦で破るなど、これで4試合連続無失点の堅守。今年は3年生が6人で“最弱”と呼ばれていたという世代だが、MF湯川奏主将(3年)が「人数少なくて最弱と言われていたけれど見返してやろうとみんなで言っていた」という島原商が周囲を驚かす進撃を見せている。

 こちらも接戦をしぶとく勝ち上がってきた大村工との準決勝は前半18分に左FKから湯川がビッグチャンスを迎えるなど、島原商がやや押し気味に試合をすすめる。長身FW平坂雅斗(2年)と突破力優れたMF小田恭輔(3年)を軸に攻める島原商は25分、小田の右CKを本田が頭でゴール右へ突き刺して先制点。全校応援の後押しを受けて戦う古豪が、「嬉しさ飛び越えて、実感がなかったです」という本田の一撃で会場を沸かせる。その後も湯川、宮崎悠太(2年)の両翼がチャンスメーク。後半6分には左サイドで粘った小田を起点とした攻撃から逆サイドへ繋いで最後はMF中村裕真(2年)が1タッチのラストパスを通す。だが、これで抜け出した湯川の決定的な右足シュートはGK山田誠也(3年)のファインセーブに阻まれてしまう。

 湯川は「リードはしていたんですけど違和感を感じていた。自分たちは引いて相手の攻撃を跳ね返すカウンターサッカー。きょうは主導権もっていつもと違う戦いだった。でも、(大村工は)どこかで上げてくると思っていた」と振り返る。警戒していた通りに後半は徐々に大村工が攻勢に出てきた。前半からボールを運ぶ力を発揮していたMF光井敦士(3年)やCB緒方快斗(3年)、交代出場MF山口唯人(3年)を中心に自陣からショートパスを繋いで反撃。キープ力高いFW上本大輝主将(3年)や突破力を見せるMF池田夏輝(3年)、MF冨永雄哉(2年)がチャンスをつくり出してくる。18分には山口のダイレクトの右アーリークロスに反応した上本が決定的なヘディングシュート。中盤で中村やMF佐藤辰之丞(2年)がボールを拾ってカウンターへつなげる島原商は小田の緩急をつけた突破から決定機を2度つくり出したが、突き放すことができない。

 一方、根気強く最終ラインから繋いで攻める大村工は28分、前線までボールを運ぶと、最後は強引な仕掛けで抜け出した光井が決定的な右足シュート。だが至近距離からの一撃を島原商GK今積隆介(3年)が驚異的な反応ではじき出す。高い身体能力を見せる今積や本田に加え、CB松本龍也(2年)、徳永堅三(2年)、前田裕斗(2年)の両SBも含めたDF陣が最後まで集中していた島原商がこのまま逃げ切って1-0で勝利。決勝進出を果たした。

 試合後、全校応援の同級生たちと校歌を歌って決勝進出を喜んだ島原商イレブン。岩橋監督は「3年生は6人で最後ピッチに立っていたのは2人だけ。大丈夫かなと思っていましたけれど、できることをやって勝ってきている。学校も盛り上がって、島原が少し元気になってくれれば」と目を細めた。今年の県1部リーグでは開幕当初、大敗が続いたが、V・ファーレン長崎U-18を相手に0-0で守り切ったことで自分たちが勝つためにやるべき事がはっきりとした。その我慢強い守備と、3年生たちの意地。本田は「(自分は)1年生から試合に出させていたので、3年生が少ないのを理由にしたくない。一人ひとりよりもチームの力が強いので、そこを意識してチームプレーでやってきた」と語り、湯川は「自分たちは人数少なかったですけど、やりにくいことはなかった。人数少ない分、たくさん練習できたり、Aチーム、Bチームとかないのでたくさん試合出れたりした」。見返すという思いを抱きながら日々を送った3年生たちは少ない人数という環境を活かして成長に繋げ、先発の半数以上を占める下級生たちの力も借りて躍進を果たした。

 決勝では長崎総科大附と対戦。年代別日本代表も擁し、全国レベルの力を持つ強豪との戦いへ向けて今積は「周りは『何で島商が決勝』とか思っていると思うんですけど、そこで勝ちにいきたい。気持ちのキツい試合になると思いますけれども勝ちたい」と語り、湯川は「総科大は強くて上手いし、簡単に勝てる相手ではない。でも勝った方が強い。自分たちのサッカーを貫き通して、勝てるとしたらギリギリしかないので全力で戦いたいです。キャプテンとして、3年生のひとりとしてチームの為に走って、少しでもチームに貢献できるように一つひとつのプレーに責任もってあすの試合に臨みたい」と言い切った。決して簡単に倒せる相手ではないことは分かっている。だが、厳しい展開となっても古豪は応援してくれる人たちのためにも最後まで走り抜く。

(取材・文 吉田太郎)
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