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[総体]京都高校サッカーを牽引するチームに相応しい競争原理、京都橘が盤石V

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[6.5 総体京都府予選決勝 京都橘高 4-2 洛北高 西京極]

平成28年度全国高校総体「2016 情熱疾走 中国総体」サッカー競技(広島)の京都府予選決勝が5日に行われた。京都橘高洛北高が府大会のファイナルで顔を合わせるのは昨年11月の高校選手権予選と、今年2月の新人戦に続いて3度目となる。18時キックオフのナイトゲームとなった試合は、全国への切符を賭けるにふさわしい熱戦となった。

試合開始早々の2分に早くもスコアが動く。京都橘はDF清水駿(3年)のロングフィードに反応したU-19日本代表FW岩崎悠人(3年)が相手GKに競り勝って先制点を奪う。その後も主導権を握って攻撃を仕掛けると、24分にはFKからDF吉水太一(3年)がヘッドであわせて追加点。新人戦でも延長戦で決勝点を奪った男の一撃でリードを広げる。対する洛北はなかなかリズムをつかめない。守備に回る時間が長く、ボールを奪ってからもパスやクロスの精度を欠いた。それでも前半アディショナルタイム、セットプレーの流れから相手を押し込んだ状況でMF柴田匡晴(3年)がゴール前へパスを送ると、相手DFに当たったこぼれ球をFW今井駿(3年)が左足で流し込んでゴール。前半唯一のシュートがネットを揺らし、1点差で前半を終えた。

 後半、洛北の前田尚克監督が動く。得点を決めた今井らをベンチに下げてFW中村匡克(3年)、FW樋口岳(3年)、MF石橋亘(2年)を投入。準決勝・東山高戦で試合を決める活躍を見せた3選手に反撃を託した。後半3分に速攻からFW堤原翼(3年)にゴールを奪われて再び点差が開いたが、その3分後に交対策が実る。GKからのロングキックを中村が空中戦で競り勝って味方へつなげると、足を止めずに前方のスペースへダッシュ。FW中尾和樹(3年)からのスルーパスを受けてPA内に侵入したところでGKに倒されてPKを獲得すると「監督から『点を取って来い』と言われていた」という中村自身が成功させて、再び1点差に詰め寄った。その後も組み立てが機能し初めたことで攻撃の時間が増え、サイド攻撃などから相手ゴールに迫る。前半から一転して攻勢を強める洛北。だが、その流れでもう一点を奪うことができなかった。苦しい時間帯を耐えた京都橘は26分にFKから岩崎がダメ押しとなるゴールを決めて4-2。残り時間もゲームをコントロールして、全国への切符をつかんでみせた。

 試合後、洛北の前田監督は「これが今の実力やな。まだまだ京都橘のレベルにはない」と敗戦を受け入れた。シュート1本に抑えられた前半、攻勢に転じながら追いつけなかった後半。善戦はしたものの、そこから先に踏み込むためには更なるレベルアップが必要だと再認識した様子だった。中村も「PK以外にもチャンスがあったけど、そこで決めきることができなかった。それにファウルも減らさないといけない」とFKから2失点を奪われた守備も含めて課題を口にする。それでも、大会を通じて収穫があった。「(高いレベルの)ボールや人のスピードが体感できた。王者の力を肌で感じたはず。選手権に向けて自分たちで目標を持って、しんどいことも積極的にやるなかで、どれだけ伸びてくれるか」と前田監督は選手たちの変化に期待を寄せる。この日、交代枠を全て使って16人の選手がピッチに立った。準決勝は15人、準々決勝でも16人がプレーしている。もちろん目の前の試合に勝つことが第一だが、なるべく多くの選手が少しでも何かを感じて今後への足がかりにして欲しいという思いも存在する。ゴールを決めた中村は新人戦ではスタメンだったが、その後に調子を崩して、台頭してきた今井にポジションを奪われた。今大会、中村はベスト8以降の3試合で、交代出場から4得点を記録してアピール。今井も前線で身体を張るなど献身的なプレーを見せており、ポジション争いは熾烈だ。チーム内で日々競い合って、チーム力を高めることができるか。選手権予選でリベンジを果たせるかどうかは、それにかかっている。

 一方、勝った京都橘は磐石の優勝だった。準決勝までの4試合を失点ゼロで勝ち抜き、決勝戦でも相手をねじ伏せての勝利。大会優秀選手にも5人が名を連ねるなど、いい流れで18日から行われる近畿大会、そして7月末からの全国高校総体へ挑めそうだ。新人戦に続いて京都を制したわけだが、米澤一成監督は「二冠という気はしない」と話した。新人戦は主力以外のメンバー、いわゆる12番目以降のサブメンバー中心で挑んで優勝。今回は現状でのベストメンバーで臨んでの優勝という違いがあるからだ。

 選手たちの気持ちも、それぞれだ。例えば新人戦には出場していないDF清水は「いい緊張感を感じながらやれた」と今大会を振り返る。サブ組中心の新人戦で優勝しただけに、主力選手が出た総体予選で負けたとなれば様々な声が出るのは想像に難くない。そうしたプレッシャーと向き合い、結果を出したことは今後への糧となるだろう。一方、新人戦に出場しているDFの吉水は「この大会で手応えはつかめたけど、満足はしていない」と気を引き締める。新人戦を制して歓喜に沸いたサブ組の選手たちだったが、その後に待ち構えていたのは再びベンチからチャンスを伺うというシビアな現実だった。何度かスタメンの機会を与えられた選手もいたが、序列を覆して定位置を確保した選手は出てこなかった。それでも練習やBチームの公式戦でアピールを続けたことで、総体予選直前にチャンスが訪れている。吉水は最終ラインの一角をものにし、新人戦でMVP級の活躍を見せたGK西川駿一郎(3年)は大会直前から正GKを任されてゴールマウスを守り続けたのだ。2人の台頭はチームの総合力を高めたに違いない。だが、その地位が安泰でないことも確かだ。今大会はサブに甘んじた矢田貝は、西川の活躍を称賛しつつ「ここから(ポジションを)取り返しますよ」と目を光らせる。京都の高校サッカーを牽引するチームに相応しい競争原理を持って、京都橘は更なる成長を目指す。

(取材・文 雨堤俊祐)
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