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[MOM1807]慶應義塾DF酒井綜一郎(2年)_際立っていた、マリノスJY出身CBの“熱い”守り

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[6.18 総体神奈川県予選準決勝 慶應義塾高 1-1(PK6-5)湘南工科大附高 等々力]

 初の全国総体出場を決めた慶應義塾高の大方貴裕監督は「(前半26分の失点後)だいたい彼がシャットアウトしてくれた。頼もしい存在だった。気持ちが強いので、だいたいガチャガチャとしたボールは酒井のところに転がる。持っているのかなと」と評し、勝利を決めるPKセーブをしたGK({三浦優介}}(3年)も「先輩に対してもすごく言ってくる。絶対に負けたくないという気持ちをみんなに言えるんで重要な人だと思います」と欠かせない人物であることを認める。この日、攻守にヒーローの多かった慶應義塾だが、CB酒井綜一郎(2年)の“熱い”プレーが特に際立っていた。

 ゴール前の混戦にパワーをかけられて先制点を献上したが、指揮官も名を挙げて評価していたようにその後、湘南工科大附のボールを奪うシーンには本当に良く絡んでいた。PAへのボールを読み切ってカットし、危険なシーンでは身体を投げ出してブロックする。また173cmながらもヘディングの上手さを見せ、球際の攻防では何度も味方にボールを傾けた。そして最も印象的だったシーンは両校ともに体力面でキツい時間帯だったはずの後半30分過ぎのプレー。インターセプトを狙った勢いで前に出た酒井は失ったボールを追ってスプリントを繰り返す。味方FWの選手を追い抜いて相手ボールを2度追い、3度追い、4度追いして相手DFにまでもプレッシャーをかけた鬼気迫る動き。「あの時間帯だとみんな疲れているし、会場も声が届かない。自分からかけることによってみんなにスイッチ入れようと。DFラインってみんなに比べたら体力残っているから」という1プレーで味方を奮い立たせた。

 延長戦では足を攣らせていたが、「最後は気持ちなんで。攣るからできないとか言ってられない。それは気合でした」と最後まで走り続け、後半6分にPAへ出されたスルーパスを身体で阻止するなど2点目を許さなかった。そしてPK戦では4人目に登場して成功。危ない場面がゼロだった訳ではないが、見事なパフォーマンスだった。

 横浜F・マリノスジュニアユース出身。ユースチームに昇格することはできなかったCBは高校サッカーに臨む上で、全国的に有名な強豪校ではなく、小学校から通っている慶應でサッカーすることを選択した。当初は難しいと考えていた全国制覇という目標も、徐々に行けるんじゃないかという思いに変わってきたという。全国発出場もまだ通過点。「俺らが慶應に新しい伝統を刻む、それをやっていかないといけない。今はまだ目標としては通過点だから。綺麗なプレーとかじゃなくて泥臭くてもいいから結果を出さなきゃいけない」。

 個人としての目標も高いところにある。それだけに全国はひとつの力試し。「上に行けば行くほどスカウトの人とかいると思うし、できるだけ自分のレベルを知りたいから経験するためには上にいかないといけない」。そのメンタリティー含めて注目の素材。全国でも「頼もしい存在」がチームに勝利をもたらす。

(取材・文 吉田太郎)
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