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[近畿大会]伝統の粘り強い守りを「超えていこうという気持ちでやっている」東海大仰星が4戦1失点の堅守で近畿制覇!

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[6.20 近畿高校選手権決勝 東海大仰星高 1-0 興國高 橿原陸上]

「第69回近畿高校サッカー選手権大会」の決勝が20日、奈良県内で行われ、東海大仰星高(大阪3)と興國高(大阪4)が対戦。MF谷野龍馬の得点を守り切った東海大仰星が1-0で勝利し、14年ぶりとなる頂点に立った。

 ともに全国屈指の激戦区・大阪府予選で4校による決勝リーグまで進みながらも、全国の舞台には届かず。涙を飲んだ両校の一戦は序盤から緊迫した展開が続いた。立ち上がりのキーポイントとなったのは仰星対策として、興國が採用したシステム。仰星のロングボールをしっかりはじき返すために、本来の4バックではなく中央に人数を割いた3バックでスタートを切ったが、「試合を通して見れば、狙い通りの戦いは出来と思う。でも、守備の整理がつくまでの時間にやられてしまった」と内野智章監督が試合後に振り返ったように、序盤の隙を仰星が確実に狙った。まずは前半6分に右サイドのMF松井修二がカットインからシュートをお見舞い。DFに阻まれたところを再度狙ったが、GKの正面に終わってしまう。前半9分にも再び松井が好機を演出。中央突破は相手DFに阻まれたものの、こぼれ球をPA左に走り込んだMF谷野龍馬がゴール右隅に流し込み、リードを奪った。

 先制点を許した興國だったが、以降はDF今掛航貴とDF山口達也の両サイドが高い位置に張ることでロングボールの出所を封印しつつ、持ち前のパスワークからサイドを攻め込んだ。11分には右サイドでスローインのリターンを受けた山口がゴール前にクロスを展開。FW大垣勇樹が頭で合わせたが、GKの正面に。13分にも山口がゴール前に入れたロングスローはDFに阻まれたが、こぼれ球に反応したMF加田淳哉がダイレクトで再びゴール前へ。ボールは絶妙なコースを突いたが、ゴールをわずかに捕えることができない。

 後半に入ってからも拮抗した展開が続く中、興國は後半12分のFW西村恭史投入を機に攻撃のギアを上げる。「近畿大会は早めに点が獲れたけど、2点目がなかなか奪えなかった。今日も前半は良かったけど、後半は引いてしまってゴールから遠ざかってしまった」(MF松井)という仰星の事情も相まって、相手陣内での時間が増え始めると、16分には自陣でパスを受けた大垣が中央突破から相手エリアまで持ち込んでシュートを狙ったが、GK宮本一郎の牙城を崩せない。反対に19分には自陣で仰星に囲い込まれてボールを奪われ、右サイドを崩される場面も見られた。終了間際の34分には中央をドリブルですり抜けた大垣がPA手前で倒され、FKを獲得。MF大塚智也がゴール左下を直接狙ったが、宮本の好セーブに阻まれ、タイムアップを迎えた。

 東海大仰星は総体予選で決勝リーグまで進み、初戦の大阪学院大高戦を1-0で制したものの、残り2試合で白星が奪えず、全国行きを逃した。当初は気落ちした姿も見られたが、「全国に出られなかった分、近畿大会は優勝しようと皆で声をかけていた。大会に入ると気持ちを切り替えて戦えていた」(MF大崎航詩)。特に目立ったのは大会4試合を1失点で終えた守備の奮闘。この日は準決勝で退場したDF金川楓が出場停止だったが、代役を任されたDF三角舞也が穴を感じさせないプレーを披露。相方を組むDF玄尚悟も興國のアタッカー陣に決定的な仕事をさせなかった。

 大崎が「総体は試合時間が短く、1点の重みが大きい。府総体に入ってから、DFラインが『絶対にゴールを奪わせない』という気持ちが強くなったし、今はゴールを守るという意識がどのチームよりも強いと思う」とDFへの信頼を口にし、「まだまだ足りない部分はあるけど、今持っている彼らの力を出し切って対応してくれたと思う」と中務雅之監督も選手たちの頑張りを称えたように、今大会の勝因として守備陣の踏ん張りは欠かせない。

 また、玄が「前がしっかり守ってくれないとDFとしてもしんどい。組織で守るのが仰星」と話すようにチーム全員で粘り強く守るスタイルは部で受け継がれてきた伝統でもある。特に今年の代は、「昨年、一昨年と先輩たちを見てきた。先輩たちと同じくらいではなく、超えていこうという気持ちでやっている」(大崎)と前からの追い込みや、中盤でのセカンドボール回収など、組織での守りを徹底的に意識してきた。そうした取り組みが今大会での栄冠に繋がったが、「近畿を獲れたのは良いことだけど、気を緩めず冬の選手権大阪と全国を獲りたい」(大崎)、「近畿大会は優勝できたけど、全国には届かなかった悔しさの方が強い。冬の選手権で優勝するために近畿大会での優勝を勘違いせずに、もっとレベルアップするために頑張りたい」(松井)と気の緩みは見られず、すでに視線は先に向いている。近畿制覇で満足するのではなく、足掛かりにして、次は最大のターゲットである選手権出場を狙う。

(取材・文 森田将義)
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