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[U-16インターナショナルドリームカップ]スコア以上に見えた差…U-16日本代表はマリに逆転負け

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[6.24 U-16インターナショナルドリームカップ第2節 U-16日本代表 1-2 U-16マリ代表 鳥取市営]

 日本とハンガリー、マリ、メキシコの4か国のU-16代表チームが優勝を争う「U-16インターナショナルドリームカップ2016 JAPAN Presented by JFA」は24日、鳥取市営サッカー場バードスタジアムで第2節を行った。U-16日本代表はU-16マリ代表と対戦。前半38分にMF平川怜(FC東京U-18)が決めたゴールによって先制したが、後半に2点を失って逆転負けした。

 森山佳郎監督が「経験したことの無いレベル。間違いなく世界トップクラス」と口にしていた15年U-17W杯準優勝のマリとの一戦は、1点差というスコア以上の完敗だった。「風と相手の圧力に屈した感じですね。アフリカの選手と対戦するのはじめてでスピード、足が伸びてくるとか、対応できないまま終わった感じがある」と森山監督。9月のAFC U-16 選手権インド2016(17年U-17W杯アジア最終予選)優勝、世界での躍進を狙う日本にとっては、目標とするレベルがはっきりする試合となった。

 4-4-2システムの日本はGKが谷晃生(G大阪ユース)。4バックは右から桂陸人(広島ユース)、菅原由勢(名古屋U18)、監物拓歩(清水ユース)、桑原海人(福岡U-18)が並んだ。中盤は主将の福岡慎平(京都U-18)と喜田陽(C大阪U-18)のダブルボランチ、右MF久保建英(FC東京U-18)、左MF平川、2トップは宮代大聖(川崎F U-18)と中村敬斗(三菱養和SCユース)が務めた。

 コイントスで風上を取った日本は立ち上がりから押し込もうとするが、マリは簡単に攻めさせてくれない。縦パスを引っ掛けられて失うと、一本のパスで押し返されてしまう。それでもいい形で中盤、前線が前を向いた際はチャンスに。10分、宮代からのパスを受けた平川が縦に仕掛けて左足を振りぬく。さらに14分には喜田を起点とした攻撃から中村と上手くスイッチして左中間から中へ切れ込んだ福岡が右足シュートを放った。

 その後も連続で得たCKなどから攻める日本に対し、マリは中央から相手ボランチを打開し、また最終ラインの背後を取ってチャンスをつくり出してくる。日本は久保が自ら獲得したFKから左足で狙うシーンがあったほか、この日は本来のボランチではなく左サイドで先発した平川が相手DFを引きつけて巧みにかわすなど持ち味発揮。「前半最後の方は慣れてきて、球際とかできていました」と振り返った喜田や福岡らが人数をかけた守備でホールを奪い取ったほか、菅原、監物を中心とした最終ラインも我慢強い対応を見せていた。

 そして迎えた38分、日本は縦パスを受けた宮代が右スペースへ走る久保へパスを通す。これを受けた久保が2度の切り返しからさらに縦へ持ち出して中央へアイディアあるラストパス。これを「久保選手から良いボールが来たので、フカさないことを意識していました」という平川が右足ダイレクトボレーで合わせてゴール右隅へ沈めた。強敵からの先制点。控え選手の下に走り寄った平川に自陣からGK谷も駆けつけて祝福した。それほど大きな1点を奪った日本は42分にも平川のインターセプトから巧みにDFを外した中村が決定的な左足シュートを打ち込んだ。

 個々の差は見えたものの、1点リードで前半を折り返した日本はハーフタイムに左SB桑原を菊地健太(JFAアカデミー福島U18)へスイッチ。その日本は後半6分にも久保の斜めのパスがPAの中村に通り、決定機を迎える。だが、決めきれず、逆に連続失点を喫してしまった。直後の7分にGKからのキックを中盤で拾われるとMFママドゥ・サマケに中央で立て続けに3人がかわされてPAまで運ばれ、同点に追いつかれてしまう。さらに11分には中央をワンツーで打開されると、最後はシュートのこぼれ球をクリアできず、MFシビリ・ケイタに左足で決められてしまった。

 森山監督が「(あのようなやられ方は)見たこと無い」というほどの2つの失点シーン。中央から2人、3人を打開してゴールをもぎ取ったマリに対し、日本は強い向かい風の中で思うような攻撃ができない。アフリカ系選手特有の球際で足が伸びてくる感覚のプレッシャーに悩まされ、また後半は相手の守りを意識しすぎたか、イージーミスが増えてしまう。加えて後半はいい形でボールを奪うシーンが減少。身体能力に加え、局面で簡単にボール失わない技術も見せる相手に日本はPAまでボールを運べなくなってしまった。

 16分に中村に代えてFW棚橋尭士(横浜FMユース)を投入し、21分には平川を中央、棚橋を左サイドへ動かす4-5-1の形へ。さらに29分には桂に代えて成瀬竣平(名古屋U18)を左MFに入れ、棚橋を右MF、久保を中央、喜田を右SBへ移動させた。中盤の守りを厚くしてからの攻撃など何とかしようとする姿勢は見えたが、プレススピードの落ちない相手に再三ボールサイドの攻防で敗れ、またミスパスを引っ掛けられるなど一気に自陣まで押し戻されてしまう。終了間際の47分にはミスから迎えた決定的なピンチでGK谷が相手FWとの1対1をビッグセーブしたが、それでも日本が後半に放ったシュートは7分に中村が放ったわずか1本。試合終了の笛が鳴ると、日本の選手たちががっくりと腰や膝に手をつく中、マリのベンチから選手、スタッフが飛び出して優勝したかのように喜んでいた。
 
 U-16日本代表はこれが16年の国際試合初黒星。森山監督は「こういう相手と戦わないと。ワールドカップ準優勝の国なんで、五角以上に戦えないと(世界で)上にはいけない」。この日の日本は良く戦っていた。それでも力の差はあった。マリと同じことができることではないが、日常からこの日のマリが見せたような迫力ある守備など意識して行い、差を埋めていかなければ世界では勝てない。このレベルの相手を止め、ゴールを奪えるようにならなければならない。平川は「チーム帰ってもこの基準でやらないといけない」と語り、喜田も「最終予選は3か月後なんで日々の練習からやっていきたい」と引き締めた。日本は26日の今大会最終戦でメキシコと対戦。この日体感したレベルを忘れずに試合、トレーニングに臨む。

(取材・文 吉田太郎)

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