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ターニングポイントになる1年を前に…セビージャMF清武「不安はない。本当にワクワクしている」

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 日本を離れて4年。ドイツで確固たる地位を築いたMF清武弘嗣は、来季から戦いの場をスペインに移す。移籍先はヨーロッパリーグ(EL)3連覇を果たした強豪セビージャ。日本代表の中でも存在感を高める26歳は、新天地で迎える新シーズンを、そして夢と語るW杯へとつながるアジア最終予選でのプレーを待ちわびている。

自己主張しなければ
生き残れない国


――スペインのセビージャへの移籍が決まりました。現在の率直な気持ちを教えて下さい。
「話がうまくまとまってくれればいいなという気持ちでしたね。セビージャは昨季のリーガでは7位に終わりましたが、ELを3連覇しているビッグクラブで、本当に強いチームだと思う。実際にスペインに行ってからいろいろと気付くこともあると思いますが、不安はないし、環境が変わるということに対してワクワク感があります」

――スペインのサッカー、そしてセビージャというチームのイメージは?
「スペインには僕みたいなプレースタイルの選手が多く、技術に優れた選手がたくさんいるというイメージがあります。セビージャにも技術のある選手が何人もいて、本当に良いサッカーをしていると思う。今は(取材日は6月13日)監督が交代するのではと騒がれていて、これからどうなるのかなとも感じますが、僕は今までも監督が代わる中でのプレー経験があるので、問題はないと思います」

――セビージャは来季のチャンピオンズリーグ(CL)の出場権を獲得しています。
「僕がドイツに行ったばかりの頃は、あまり海外のサッカーを見ていませんでした。CLもあまり意識していませんでしたが、ハノーファーで(DF酒井)宏樹や(MF山口)蛍と一緒にCLを見る機会が多くなって、すごく意識し始めた。だから、CLやELに出場できるチームに行きたかったし、移籍を決断する決め手の一つになりました。今は早くあのピッチに立ってみたいという思いしかありません」

――スペインでは、ドイツやイングランド、イタリアのように大きな成功を収めた日本人選手がいません。
「あまり、そこは気にしてないんですよね、僕は。いろいろな壁はあるだろうけど、そこを今から考えても仕方ないので、行ってみて壁を越えて行ければと思っています」

――セビージャは、ヘタフェからMFパブロ・サラビアを獲得するなど、ポジション争いはし烈を極めると思います。どういうプレーで自分の存在を示したいですか。
「今まで以上に強く自己主張しなければいけないし、自分を見せないといけない。そうしなければ、生き残れない国だと思っています。絶対にポジションを取れるという強い気持ちを持っていますが、僕は周りを生かすことで自分も生きる選手なので、その部分は最初から見せていきたいと思います」

ドイツに行った頃は
なめられていた


――昨季は個人的に負傷がある中でもピッチに立てば結果を残しましたが、チームとして結果が出ない時期が続きました。
「負傷しているときにチームが負けているのはすごくもどかしかったし、最終的に降格してしまったので本当に残念です。僕は個人の活躍はあまり気にしていないので、チームとして結果がほしかったし、自分の力でチームを助けられなかったのは本当に悔しかったですね」

――ドイツではニュルンベルクとハノーファーで、ともに中心選手として2年間ずつプレーしました。
「ブンデスで4年間プレーしましたが、ニュルンベルクとハノーファーで中心としてやらせてもらっていたので、それはすごく良い経験でした。監督が自分を中心にチームを作ってくれたのが一番大きかったので、それも有り難いことでしたね。でも、最初にニュルンベルクに行ったとき、僕はすごくなめられていたんですよ」

――なめられていたというと?
「チームメイトの外国人選手はフィジカルが強く、最初の頃、僕が当たり負けをして倒れると、『何こけているんだ』という感じで言われたりもしました。だから、その選手に対して練習中に思い切りタックルをして、『日本人もやれるんだ』というプレーを見せたんです。そうすると、周囲の対応が徐々に変わっていきました。サッカーってそういうものだと思うんです。練習から『こいつは違う』と思わせてしまえば良いというか。言葉の壁はもちろんありましたが、言葉以上にサッカー、プレーで示すのが一番でした。だから、自分のプレーしやすい環境を作るのにそんなに時間はかからなかったと思います」

――ハノーファーの2年目には背番号10を背負いました。
「良い意味でのプレッシャーはありましたが、それを楽しめている自分がいたのは昔とは違った。12年にセレッソで(エースナンバーの)8番をつけさせてもらったのですが、当時はまだまだメンタルも強くなかったし、プレッシャー負けみたいなことも正直ありました。海外のクラブで10番をつけることで、そういう部分での成長は感じましたが、僕はメンタル的にはまだまだ甘いし、波も大きいと思う。これからスペインに行って新しい環境の中で今までにない競争もあると思うので、そういう中でメンタルをより鍛えていけたらと感じています」

――ドイツの4年間でプレー面での変化はありましたか。
「ドイツのサッカーに慣れたし、外国人選手との1対1の当たり方は身に付いたと思うけど、海外に行ってサッカーがうまくなったとは思わない。言葉が通じない環境の中で『自分はやっていけるのか』『海外に馴染めるのか』と思っていましたが、意外と馴染めたのでそこは大きかったとは思うし、メンタル面での変化や、環境の変化に対応できるようになったとは感じますが、日本にいるときから技術面に大きな変化はないと思っています」

あっという間に終わったW杯
決勝トーナメントに行くのが夢


――キリン杯ブルガリア戦(○7-2)後、日本代表で「自分が引っ張っていかないといけない立ち位置」と話していました。
「ブラジルW杯前から代表にはいますし、やっぱり下の世代が押し上げていかないといけない気持ちがあります。生き残るためにはアピールも必要ですが、いつまでもアピールというより、自分はやらなければいけない立ち位置だと思っています。ただ、ボスニア戦(●1-2)に関しては、主力2人(FW本田圭佑、MF香川真司)がいない中で結果を残せなかった。試合に勝っていれば少しは自分自身の成長を感じられただろうし、良いイメージを与えられたと思いますが、負けてしまえば圭佑くんと真司くんがいないから日本は良くなかったと言われるのは当然で、僕はまだまだ力不足だと感じました」

――ただトップ下に入り、攻撃をけん引していました。
「結果がすべてだと思うし、2点目を取れなかったのは力不足です。ただ、トップ下はゴールにも近いし、点を取れるポジションなので、すごくやりがいを感じています。常に相手選手から見られていてプレッシャーが早い中、判断を早く下さなければいけない。そういう意味でもすごくやりがいのあるポジションだし、ずっとトップ下でプレーしてきたので、そこでやりたい気持ちもあります。ただ、ブルガリア戦では左サイドでもプレーしたし、どこでもできるという自信はあるので、どのポジションでも良いパフォーマンスを出せるようにしないといけません」

――9月からはロシアW杯アジア最終予選が始まります。W杯はどういう位置付けとして考えていますか。
「僕にとっての夢ですね。前回は5分しか出ていないので(グループリーグ第3節コロンビア戦の後半40分から出場)、悔しさや寂しさ、辛さよりも、悲しさが強かった。4年間必死に追い求めてきたものが、3試合であっという間に終わってしまいました。だからこそ、僕の中ではまだまだ目指す場所であり、次は絶対に決勝トーナメントに行くというのが夢だし、目標です」

――クラブも代わり、日本代表としては最終予選があるなど、清武選手にとって重要な1年になりそうですね。
「すごく大切な1年、ターニングポイントになる1年だと思います。CLもあるし、最終予選も始まって試合数は多くなりますが、そういう日程でサッカーをしたかったと思っていたので、すごい楽しみで本当にワクワクしています。今まで以上にコンディションやメンタル面を整えていきたいし、1年の中で悪い時期もあると思いますが、そういう時期でも一定のレベルを保てるようにしたい。本当に良い準備をして良いコンディションで試合に臨み、充実した1年にできればいいと思っています」

(取材・文 折戸岳彦)

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