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原口元気、ドイツ3年目の決意…リオ五輪控える後輩・矢島、そして関根へのエール

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 ヘルタ・ベルリンでの3シーズン目を前に、決意も新たにオフシーズンのトレーニングに励んでいる日本代表FW原口元気。リーグ戦21試合の出場にとどまったヘルタでの1シーズン目から一転、昨シーズンは32試合と出場数を伸ばし、レギュラーに定着した。手応えをつかみ、表情も明るい原口に新シーズンの目標や日本代表、リオデジャネイロ五輪について話を聞いた。

新シーズンの目標は
7ゴール7アシスト


―昨シーズンの結果を踏まえつつ、今シーズンの目標を聞かせてもらえますか。
「昨シーズンやってきた仕事量を減らすことなく、そのうえで結果を残すことが一番の目標です。チームでの僕のポジションは2列目のサイドで、攻撃的な部分だけを求められているわけではありません。ですから、その仕事量を減らさず、ゴール数とアシスト数を増やしていきたいですね。一番難しいことですが、そこにトライしていきたいです」

―現代のアタッカーに与えられる仕事量は多いですね。
「2列目のサイドにはいろいろな役割があって、クロスを上げることも仕事です。仕事量という部分を減らして得点にこだわり出すと、上のクラブ(ビッグクラブ)に行くことは難しいのかなと思っています」

―昨シーズンの2ゴール3アシストという数字については?
「それは間違いなく増やさないといけないと思っています。僕としては両方とも倍くらいいきたい。できれば7ゴール7アシストくらいいきたいです」

―その数字に込められた意味は?
「ブンデスリーガで2シーズン、プレーしてきて、いろいろなクラブのウイングやサイドの選手を見てきた中で、それぐらいは最低限、必要かなと思っています。5ゴール5アシストを超えられれば、他のクラブの目にも止まるかなと思っていて、7ゴール7アシストなら、ある程度高い評価を得られるのではないかと思っています。ただし、仕事量が減ってその数字だとまた評価は違ってきます」

―ブンデスリーガ3シーズン目は、昨シーズン、惜しくも届かなかったUEFAチャンピオンズリーグ(CL)出場が大きな目標になりますか?
「昨シーズンはそれを一番の目標にしていたので、シーズン終盤に(CL圏内から)遠ざかっていったときは残念でした。でも、それによって自分たちの力のなさ、自分の力のなさを痛感したという面もありました。力のあるチームというのは最後にグググと来ましたからね」

―今シーズンはヨーロッパリーグ(EL)の予選から出場することになります。
「ELに出られたら、試合数が多くなります。そういうクラブはうまくいかないことが多いので、ELに進んだら、チームとしても個人としても相当な覚悟を持ってやっていかないといけないと思っています」

「サッカー界は
1週間後のことも分からない」


―ミヒャエル・プレーツSD(スポーツディレクター)は『原口選手はもっとできるはずだ』ということをインタビューで話していたようですが?
「プレーツさんとは個人的にもシーズンが終わったときに話をして、『いろいろな役割を果たし、出場試合数も多かった。それについては評価しているが、もっとゴール数などで貢献してほしい』と言われています。でも、それはプレーツSDじゃなくても、だれが見ても思うことです。世界中のだれが見ても、もっと点を取ってほしいと思うでしょう。ただ、単純ですけど、点を取るということは一番難しいことですから、いろいろな能力がないと難しいかなと思います」

―それでもブンデスリーガ1シーズン目と比べて着実に手応えをつかんだのでは?
「僕のサッカー人生は、だいたいちょっとずつ上っていっているんです。僕はそう思っています。今まであまり後退したイメージはなくて、少しずつですけど、自分の目標に近づいているかなと思っています。欲を言えば、もう少し成長スピードを速めたいのですが、こういう歩みでもいいかなと。最後に目標とするところへたどり着ければいいかなと思っています。今シーズンも大爆発はできないかもしれないですが、前に進めるシーズンにしたいし、するつもりです」

―最終目標というのは?
「今はまず2018年のロシアW杯までにこうなりたいという姿を考えています。そこが一つの区切りではありますね」

―9月からはロシアW杯のアジア最終予選が始まります。
「前回の最終予選で1試合だけベンチに入ったことはありますが、実質、初めてになります。試合に出ながら自分も伸びていければいいかなと思っています」

―ザックジャパン時代とは違う感覚ですか?
「試合にも使ってもらっているし、スタメンで出ることもあるので、前よりいっそう負けちゃいけないかなと感じています。日本代表は常に勝ち続けなければいけないというプレッシャーもあるので、そういうのは新鮮ですね。1試合ごとにつかめるモノが出てくると思っているので、そういうモノを試合ごとに感じながら、最終的にW杯にたどり着ければと思っています」

―やはり2次予選の相手とは違うという覚悟がありますか?
「違うと思いますね。相手の国にも『これに勝てばW杯』というモチベーションがありますから。W杯はだれもが夢を見るところであり、代表選手は国を背負ってやっている。でもそれは2次予選でも感じていました。国を背負っている部分というのは、クラブチームとは違うんだなと、試合に出始めたことで感じていました」

―自分自身とロシアW杯の距離はどのように感じていますか?
「W杯というより、まずは自分が成長するかどうかを考えています。それで通用するかどうか。行けるか行けないかはやってみないと分からない。だから、距離は分からないです。サッカー界は1週間後のことも分からない世界ですから。単純なことですが、1日1日、自分がどうやって成長していくかを考えていきたいです」

―1週間後のことも分からない。厳しい世界ですね。
「本当に1週間後の試合に出られるかどうかも分からない世界です。その1試合で活躍すれば、チームでもド真ん中に行けるし、逆にダメだったらベンチという状況の中でこれまでもずっとやってきました」

2年半かけたベース作り
スピードを追求した進化形へ


―8月にはリオデジャネイロ五輪があります。ご自身もかつて目指していた大会です。
「まずは、リオ五輪より今日のトレーニングをどうするかのほうが重要だというのが本音です。でも、もちろん試合は見ると思いますよ。浦和レッズの下部組織からの後輩である(矢島)慎也(岡山)は五輪代表で中心にいると思うし、すごく伸びているなというイメージがあります。リオ五輪が終わったあとは浦和に戻ってもらいたいという気持ちがありますね。浦和に戻って、浦和でポジション争いにチャレンジしてもらいたいです。そして、同じく浦和の下部組織の後輩であるタカ(関根貴大)にも、五輪代表に入るクオリティーは十分にあったと思います。でも、サッカー人生では五輪がすべてではありません。僕も五輪には出ていないですし、タカにも悔しさをバネに伸びる姿を期待したいです」

―原口選手が愛用しているナイキのスパイク『マーキュリアル』がバージョンアップしました。印象を聞かせてください。
「軽いですし、クリスティアーノ・ロナウドが履いているのでイメージもいいです」

―どこが以前と変わったのですか?
「プレートが変わりました。ポイントが少し高くなって、急停止や切り返しがよりやりやすくなったと感じています。切り返しは僕にとって非常に大事な部分なので、それがうまくできるようになるのは大きいことです。母指球のところが波打っていて、より踏ん張りが利くようになっているのも良いですね」

―ドイツでは個人的に走りのトレーニングをしていると聞きました。
「専門のコーチについて、2年半くらいずっとスプリントのトレーニングをしてきました。今、ようやくベースができたところで、ここからスピードを出すトレーニングを始めていきます」

―ベース作りに2年半もかけたのですか?
「地味なトレーニングでしたし、長かったですね。僕としては最初から『速くなりたい』という気持ちが強かったのですが、コーチがとても長期的に見てくれて、良いトレーニングができたと思います。コーチによると、速くするのは簡単だったらしいのですが、それではスピードが出たときに止まれなくなってケガをする。そこで、ケガをしないような体を作るのに2年半かかりました。とはいっても、ケガをしない体を作り上げていくうちにいろいろな部分のバランスが良くなったので、ベース作りの間もプレーの幅が広がり、成長を実感しながらやってきました。逆に、その実感がなかったら、2年半耐えられなかったと思います(笑)」

―これからいよいよスピードを出すトレーニングが始まる。
「バランスが良くなっていますし、後ろに下がるとか、止まるとかという動作ができるようになりました。そして、このオフから、縦のスピード、純粋に前に出て行くスピードを出すトレーニングが始まっているので、これからどんどんスピードが出ていくと思います。前への推進力というのが自分の良さだと思うので、その良さをここからどんどん出していきたいです」

―バージョンアップする原口選手にとって最適なスパイクになりそうですね。
「僕はずっとこのスパイクを履いていて、今回さらに進化していますから、それに合わせて自分も進化していけるようにしたいです。楽しみなシーズンの相棒としてこのスパイクがあることも楽しみ。今シーズンを楽しみにしてもらいたいですね」

(取材・文 矢内由美子)

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