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[特別対談]世界に挑む者へ…梶山陽平×中島翔哉「ボールを持ったら“違い”を見せる」

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 新旧の10番だ。FC東京のチームメイトであるMF梶山陽平とMF中島翔哉。梶山は08年に北京で行われた世界大会で背番号10を託され、一方の中島は今夏リオデジャネイロで行われる世界大会でエースナンバーを背負うことになった。世界大会を経験した者から、この夏の世界大会に挑む者へ言葉を届ける――。

たまたま年上の代だった(梶山)
いろいろ報じてもらった(中島)


――中島選手がFC東京に加入した14年から2人はチームメイトになりました。

梶山「年が結構離れていることもあって(梶山が85年生まれ、中島が94年生まれ)、翔哉がFC東京に来るまではあまり知らなかったけれど、すごく良い選手が来たなとすぐに思った。サッカー観も似ている部分があって、一緒にプレーしたときにすごくやりやすさを感じたよ。僕はボールを出す側ですが、翔哉はボールを良い位置で受けようとポジションを取ってくれるし、技術があるので、出し手としてはボールを預けたい気持ちになります」

中島「移籍してきて最初の練習試合に一緒に出場しましたが、そのときにすごくやりやすいなと思いました。初めての試合だったのに、僕のほしいタイミングをすぐに分かってくれて、良いボールを通してくれるので楽しかったです」

梶山「翔哉は動き出しがはっきりしていて、どの位置でほしいかも分かりやすいから、一番ボールを出しやすいタイプ。ボールを受けた後もしっかり仕事をしてくれるので、パスを預ける方としても楽しさがあります」

中島「僕も梶山選手がボールを持ったとき、自分の動き出しが良ければ絶対にボールが出てくるという安心感があります。相手の逆を取るのもうまいし、味方がプレーしやすいパスを毎回くれますからね。感覚的なものはすごく大事なので、それが似ているというのは大きな武器だと思っています」

梶山「あと、翔哉はボールを蹴っていないときでも本当に楽しそう。フィジカルトレーニングのときも笑っているし(笑)、辛そうな顔をしているのを見たことがない。サッカーのためなら、すべてが楽しいという感覚なんだろうね」

中島「僕はサッカーが下手なので、思い通りのプレーができないと結構イライラしますよ(笑)。でも、本当にサッカーが好きだから、もっとうまくなって、もっとサッカーを楽しみたい気持ちを常に持っています」

――負傷離脱していた時期もあった中島選手ですが、U-23日本代表の国内ラストマッチとなるU-23南アフリカ戦で復帰すると、2ゴールを挙げる活躍を見せ、世界大会への切符を手に入れました。

梶山「あの試合は絶対にやってくれると思っていました。復帰してから一緒に練習をしていましたけれど、ケガで休んでいたとは思えないくらいキレのある動きを見せていた」

中島「ケガをしてピッチに立てなくても、体のコンディションをより良くするなど、できることもありました。南アフリカ戦では楽しもうと思っていましたが、2得点と結果を残せたし、やっぱり最終メンバーに選ばれてうれしかった。ただ、外れてしまったメンバーもいるので、そういう選手のためにも頑張らないといけないという責任を感じています」

――本大会では中島選手が背番号10を背負うことになりましたが、梶山選手も08年の北京で10番を背負っています。

梶山「北京のときは、今のA代表の中心選手がたくさんいて、誰が10番を着けても良いようなメンバーがそろっていましたが、たまたま僕の代が一番年上だったので、それで着けさせてもらえたと思っています(笑)。でも、攻撃的な選手なら誰でも憧れる番号だし、良い選手がいる中で着けることを考えると、やっぱり責任を感じながらプレーしていましたね」

中島「南アフリカ戦では10番でなく、13番だったことでいろいろ報じてもらいましたが(笑)、僕自身は別に気にしていなかったし、そんなに背番号にはこだわっていません。でも、期待して10番を着けさせてもらっているのなら、その期待に応えないといけないし、サッカー選手にとって特別な番号だと思うので、毎試合、日本の勝利に貢献できるようにしたい」

梶山「僕は年上ということもあって着けた番号だと思うけれど、一番上の年代じゃない翔哉が着けるということは、本当に期待されている証だよ。予選でしっかり貢献してきた結果だと思うので、本大会でもその期待にしっかり応えてほしい」

――本大会まで残された時間は決して多いとは言えませんが、どういう準備をしていきたいですか。

中島「限られた時間の中でも成長できるし、すべてをレベルアップさせたいですね。そのためにも、日々の練習は一つも無駄にはできません。試合では考えずに体が勝手に動くようになるのが理想だし、楽しみたいと思っていますが、そのためには練習しないといけない。試行錯誤しながら集中して練習に取り組んでもっとうまくなり、世界の舞台で思い通りのプレーができるように準備します」

梶山「北京の大会前に今野(泰幸)選手から、言われたことがあるんだけれど、『大会が始まったら、あっという間に終わってしまう。しっかりと準備して、後悔しないように楽しみながら全力を出せれば満足して帰って来れる』と言われて、その通りだなと思った。翔哉も後悔しないために、世界大会に向けてしっかりと準備をしてほしいですね」

ドンドン仕掛けてほしい(梶山)
常にゴールに迫るプレーを見せる(中島)


――サッカー選手として4年に一度の世界大会をどういう位置付けとして考えていましたか。

梶山「僕は05年のワールドユースに出場したとき、世界との差を感じていました。そのワールドユースから数年が経ち、また世界を相手に戦える舞台に立てるということで、自分たちがどれだけ成長したのかを試したいと思って大会に臨みました」

中島「サッカー人生の中でも大きな大会の一つになるので、すごく楽しみです。責任も感じているし、覚悟もありますが、自分の力がどこまで世界に通用するのかを試すのも楽しみにしています」

梶山「世界を経験して通用する部分と通用しない部分があると感じたけれど、そういうものを発見できる大会でもあると思う。昔は結構ドリブルで仕掛けていたのに、世界相手では身体能力の差もあって通用しなかった。だから大会後にはパスや判断など通用したと思う部分に磨きをかけたし、そこで今の自分のプレースタイルが確立された気がします」

――中島選手はどういう部分を世界にアピールしたいですか。

中島「僕は攻撃の選手なので、ドリブル、パス、シュートすべてで目立つような選手になりたいと思っています。守備は今から一気にうまくならないと思うけれど、自分に与えられた役割を必死にこなし、攻撃でボールを持ったら必ず違いを見せられるようになりたい。ゴールやアシストなど得点に絡むプレーを期待されているので、常にゴールに迫るプレーを見せたいですね」

梶山「もちろん守備も頑張ってほしいけれど、翔哉には攻撃の部分で結果を残してくれることを誰もが期待していると思う。だから、思い切り自分らしさを出してきてほしい」

――大会を勝ち上がるためにも、初戦のナイジェリア戦が重要になると思います。

梶山「北京のときは初戦のアメリカ戦(●0-1)で敗れてしまい、勢いに乗れなかった部分があったし、2戦目のナイジェリア戦(●1-2)で絶対に勝たなければいけないというプレッシャーを感じてしまった。ロンドンのときにオーバーエイジで出場した徳永(悠平)選手(FC東京)は、初戦のスペイン戦の勝利(○1-0)でチームの雰囲気がすごく良くなり、一気に勢いに乗れたと話していたました」

中島「逆にロンドンでは初戦で日本に敗れたスペインが、グループリーグで敗退したように、初戦は本当に大事だと思います。最終予選では初戦の北朝鮮に苦しみながらも勝てた(○1-0)ことで、チームの雰囲気も良くなったし、自信を持って大会を進められました。本大会では実力が上のチームが多いので、初戦でナイジェリアに勝って、まずは勢いに乗りたい」

梶山「僕たちも本大会でナイジェリアと対戦したけれど、身体能力の高さをすごく感じた。でも守備に回ったときに結構飛び込んでくるので隙はあると思うし、翔哉は相手の逆を突くのがうまいからドンドン仕掛けてもらいたい。逆に攻め込まれる時間帯が続いても日本は組織で守れるから、最後まで粘り強く戦っていればチャンスは必ずあると思っています」

中島「皆で協力して守り、協力して攻めるのは絶対に必要なことですが、全員守備、全員攻撃というのはテグさん(手倉森誠監督)がチーム立ち上げ当初からずっと言っていることなので、それはチームに浸透しています。最終予選を経験して一体感もより強まったし、チーム力も上がったので、最終予選のような戦い方ができれば上まで行けると思っています」

――世界と戦うにあたってスパイクに求めることは何でしょうか。

梶山「一番良いものを履き、良い仕事ができるのが一番です。僕が重要視しているのはフィット感ですが、『X』はものすごく履き心地が良いし、足が包まれているような感覚です。ボールタッチなど繊細な部分もプレーしやすいので、僕のプレーを助けてくれています」

中島「スパイクによって、プレーが左右されると思っています。僕もフィット感にはこだわっていますが、軽さも大事なポイントで、素足感覚で履けるスパイクの方が好きですね。僕のプレースタイルではターンや切り返しが重要になりますが、『X』のスタッドはターンしやすいようになっているから、スピードを落とさずにプレーできます」

梶山「あと、最近のスパイクは蛍光色が使用されていて派手だよね。ただ、目立っている分『しっかりプレーしないといけない』と、僕の場合は引き締まる。プレッシャーを自分に与えるという意味でも、目立つ色は良いのかなと思います」

中島「僕は派手な色のスパイクが好きですよ。目立った方が嬉しいし、スタジアムによっては、ピッチと観客席が遠いこともありますが、目立つスパイクだと絶対に僕に気付いてくれますからね」

――最後に本大会に向けての意気込みをお願いします。

中島「自分の力が世界大会でどこまで通用するか試すという楽しみもありますが、やっぱりメダルを取るために皆が本気になっているので、勝利する姿を日本に届けたい。そうすれば、負傷していたときに助けてくれた方々、支えてくれた方々にも恩返しができると思うので、良いプレーをして、しっかりとメダルを取って帰ってきたいと思います」

梶山「世界を相手に思い切りドンドン仕掛ける翔哉を見たいですね。いつもクラブで一緒に練習をしていて、キレキレで止められない翔哉が、世界の舞台でどれくらい通用するのか楽しみにしているし、結果を残してくれると信じています」

(取材・文 折戸岳彦)

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