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“古巣”川崎Fへの思い、無念のインカレ欠場も復活みせる阪南大MF脇坂泰斗

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[7.16 大学選抜合同選考会 中央大G]

 故障から戻ってきたMFがピッチで躍動している。阪南大のMF脇坂泰斗(3年=川崎F U-18)は16日に行われた全日本大学選抜選考会に参加。ボランチとトップ下でプレーして、アシストするなど結果を残した。

 1本目のU-19全日本大学選抜戦ではボランチで先発。機を見ては自ら前へ仕掛けたほか、絶妙なパスで裏へ抜けたMF松田天馬(鹿屋体育大3年=東福岡高)のゴールをアシスト。2本目の関東大学選抜戦ではトップ下で出場し、積極的にゴールの近くでプレーするなど存在感をみせた。

「こういう場は慣れてないので最初は緊張していた」と振り返ったMFだが、「1試合目はいい形で入れてスムーズにいけたかな」と手応えを語る。

 昨年12月の全日本大学選手権(インカレ)で阪南大は準優勝したが、そこに脇坂の姿はなかった。インカレ直前に左足第五中足骨を疲労骨折。長期離脱を強いられたのだ。ピッチに立てない中でチームがみせた快進撃。

 当初は「悔しい気持ちのほうが多かった」と言うが、「自分が出ていたらとか色々考えながら見ているなかで、徐々に割り切れた部分もあったので。最後の方は来年は優勝したいなと思って見ていました」と振り返る。

 その後もリハビリは続いた。年明け3月のデンソーカップチャレンジにも間に合わず、選抜の活動には参加せずに関西学生リーグの開幕へ照準を合わせた。

 離脱する間に阪南大の同級生であるFW山口一真(3年=山梨学院大付高)やMF重廣卓也(3年=広島皆実高)が全日本大学選抜で活躍。“仲間”の活躍は焦りにつながったのかと思いきや、脇坂は「悔しい部分はありましたけど、いつも練習や試合をしていたんだから、“自分もできる”と自信にもなりましたし、素直に二人の活躍は嬉しかった」と前向きに捉えた。

 そして関西学生リーグ開幕を約1か月後に控えるなかで、ようやく復帰。順調に開幕戦で先発し、前期リーグでは1試合を除いて先発。2得点2アシストで前期を首位で折り返したチームに貢献。試合毎に起用されるポジションは違えど、都度要求に応えている。

「開幕2、3試合は試合勘に慣れていなくて、良くなかったんですが、だいぶ試合を重ねて戻ってきていたので、このまま大臣杯に向けて、もう少し細かいところを詰めていければと思います。やっぱり試合をしないと感覚とかは戻ってこないので、そういう面では今は試合に出ているのでコンディションはいい感じでいけています」

 神奈川県出身の脇坂は、川崎フロンターレU-18から阪南大へ進学した。改めて、その理由については「ずっと実家暮らしだったので自立したいという気持ちもあって、関西を選びました」と言う。

 実際に大学へ進学すると、高校時代よりも自由な時間が増える分、自分自身を律することの大切さを目の当たりにすることもあったようだ。「個性的なメンバーが多いので、人に流されて潰れていく選手もいると思う。そういうところで自分の“芯”がないと、新しい場所ではキツいのかなと思ったし、想定していた範囲ですけど、そういう部分は感じましたね」と入学当初を振り返った。

 早くも大学3年目を迎える中で 関西の環境には順応したようだが「言葉は結構大変です」と冗談交じりに明かす。「家に帰ると、喋り方とか変わってるねと。少し関西弁まじりになったりしているんですけど。向こう(関西)で関西弁を使うと『お前、関東だろ』とか言われたりするので。どっちにいてもいじられるので、そこは大変です」と笑う。

 今後は阪南大の中心選手としてプレーしながらも、より上の舞台でプレーすることを目指している。「プロになるのは前提で目標のひとつ。そういうなかで今日選考があった全日本大学選抜とかに入って、もっと上のレベルのサッカーをしたいなというのがあるので。とにかく上のレベルでサッカーがしたいなと思います」と言い切った。

 そんななかでも古巣への思いは強い。この日も川崎Fのサポーターが脇坂のプレーを見るために選考会へ足を運んでおり、励ますような言葉をかけてくれたのだという。クラブも巣立っていったMFの動向をしっかりと追っており、コミュニケーションは取っている。関係者によると、今月中にも脇坂が川崎Fの練習に参加する予定があるのだという。

 古巣への思いについて、口を開いたMFは「1年生の開幕戦からクラブの方は連絡をくれていたりして。そういう部分でもしっかり感謝の気持ちもあります。それとサポーターの方も試合や今日の選考会にも来て下さって、声をかけてもらうだけでも、すごく嬉しいです。元々ユースでお世話になって、一番好きなクラブなんですけど。できれば川崎でプレーしたいという気持ちは一番あります」と胸中を明かした。

 今後はまず8月に夏の大学日本一決定戦・総理大臣杯が控えている。復帰後初の全国大会へ挑む脇坂は、「個人的に全国で優勝した経験もないので、優勝したいですし。去年(インカレで)2位で終わっているので、チームとしても今年は絶対に日本一を取るぞというのがある。リーグも首位で折り返していますし、この流れで大臣杯で優勝して。リーグとインカレでも優勝したい」と力を込めた。

 負傷で涙を呑んだ昨季から一回り逞しくなったMFが阪南大を日本一へ導いていく。関西の地で結果をつかんだその先に、全日本大学選抜入りや“古巣復帰”という夢は待っているはずだ。

(取材・文 片岡涼)

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