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“滑り込み”で奇跡の復活…「託される側」に回った岩波の覚悟

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 何とか間に合った。5月に行われたトゥーロン国際大会初戦のU-21パラグアイ戦で負傷したDF岩波拓也(神戸)は、その後検査の結果、左ひざ内側側副靱帯損傷と診断され、全治6週間と発表された。

 残された時間は限られており、リオ五輪本大会までに戻って来れるかも微妙な時期だった。負傷離脱している間もチームは活動しており、動向を「かなり気にしていた」岩波は、「1日でも早く代表のピッチに戻りたいという思いを強く持っていた」。

 7月1日の五輪メンバー発表の段階で、岩波は実戦に復帰していなかった。さらに、国内ラストマッチとなったU-23南アフリカ戦でDF中谷進之介(柏)が好パフォーマンスを見せたこともあり、手倉森誠監督は「悩みに悩み抜いた」と明かしていた。「高いパフォーマンスをしてくれた中谷進之介、それから岩波の回復状況。ここは予測での計算でしかない。そこを決断するにあたって自分としては慎重だったし、大きな決断だった」。

 そして、メンバーに名を連ねたのは岩波の方だった。リハビリ中にも代表のチームスタッフが何度も岩波の下を訪れるなど、指揮官は岩波の回復状況を気にかけていた。チーム立ち上げから最終ラインの要としてきた奮闘してきた男への信頼の厚さを感じさせる選出となった。

 それは、岩波本人も自覚している。「こういう状況で選んでくれた監督にプレーで返したいし、進之介や他の選手のためにも頑張りたい」と指揮官の期待に応えるだけでなく、『託す側』に回った選手のためにもブラジルの地で完全復活した姿を見せようと意気込んでいる。

(取材・文 折戸岳彦)

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