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[総体]3連戦で“静学らしさ”欠くも走り切った静岡学園、4年ぶりに8強入り!

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[7.29 全国高校総体3回戦 静岡学園高 2-0 大阪学院大高 呉市総合スポーツセンタ-多目的G]

 広島県内で開催中の平成28年度全国高校総体「2016 情熱疾走 中国総体」サッカー競技(男子)は29日、3回戦8試合を行った。静岡の名門・静岡学園高と大阪王者・大阪学院大高との一戦は静岡学園が2-0で勝利。12年以来の8強入りを果たした静岡学園は準々決勝で昌平高(埼玉1)と戦う。

 2試合連続で5得点と好発進していた静岡学園だったが、3連戦となったこの日は“予想通り”に体力面で苦しんだ。川口修監督も「本当に体が動かなかった。信じられないくらい。(ボールを持ってからの)判断が遅いし、動く判断も遅い」と首を振ったように、内容は過去2試合と比べて雲泥の差。コントロールミス、そしてパスを相手の足に当ててしまうシーンも散見し、攻守の切り替えが遅いためにボールを思うように奪い返すこともできない。“静学らしい”サッカーにはほど遠いゲームだった。

 それでも川口監督は「守備面はみんなよく頑張った。ハードワークできたところが今年の強さ」。今年の静岡学園は思い通りに試合を進めることができなくても我慢強く戦い、最少失点で終えることのできる強みがある。そしてこの日は、3試合連続となるセットプレーからの得点がスコアを動かした。

 前半11分、静岡学園はMF若山修平主将(3年)が左サイド後方から入れたFKをDF天本翔太(3年)がゴールに背にしたままの跳躍でDFに競り勝ち、ヘディングシュート。これがゴールへ吸い込まれて静岡学園が先制した。先制した静岡学園はボールをキープしながらじわりじわりと前進していく。対する大阪学院は左SB中尾真(3年)が1対1で強さを見せたほか、秋本健作(3年)と藤本憲主将(3年)の両CBもゴール前にしっかりとカバーリングを欠かさず、追加点を許さない。そしてFW新町幸聖(3年)やMF西宇大輔(3年)の突破から反撃した。

 後半開始から前線に強靭なFW井上凌実(3年)を加えた大阪学院は5分、MF山崎翼(3年)が素晴らしい寄せからインターセプト。敵陣PAやや外側の位置でFKを獲得する。だが右SB吉江絃馬(3年)の右足FKはGK正面。一発で同点に追いつくチャンスもあるように感じられたが、静岡学園は指揮官絶賛のプレーをしていたMF金冨祐大(3年)やDF森主海斗(3年)、DF嶋一駿(3年)らが的確なカバーリングや体を張ったディフェンスで反撃を封じていく。GK田原智司は「(金冨をはじめ)セカンドボール、いざって言う時に拾ってくれたり、動けない中で動いてくれていた」と振り返っていたが、特に金冨はセカンドボールに誰より早く反応して奪い取り、16分には左サイドを40mダッシュして相手にプレッシャーをかけ、スローインを獲得する。静岡学園はそれを起点とした攻撃から2点目。金冨がクロスを入れると、FW福原涼太(3年)がDFを引きつけたまま飛び込み、最後はファーサイドへ抜けたボールを右MF坂西望(3年)が右足で押し込んで2-0とした。

 この後、静岡学園はU-17日本代表MF渡井理己(2年)のドリブル突破から追加点のチャンスもつくる。一方の大阪学院は33分に井上が右サイドを抜け出すが、右足シュートは「1本ありましたけれどストップできた。あそこで耐えるというのを全員で意志統一したのは大きかった」というGK田原がファインセーブ。静岡学園が無失点で8強入りを果たした。

 華麗の個人技、パスワークによって観衆を沸かせて勝ち取った勝利ではない。「静学スタイル出さないと、ここに来た意味がない」と川口監督は指摘するものの、この日の勝利については「苦しい中、走ったでしょ。勝ち切ったでしょ。これが自信になる。それがやりたかった、この夏は」。厳しい戦いを走りきって勝ち切ることがまた個々の成長に繋がる。金冨が「みんなひとつになって、ひとつのボールに対して奪おうという意識や点取ろうとしていていいと思う。全国なんで成長できる場面がたくさんあるはず。頑張る」。もちろん、静学らしい戦いに全力でチャレンジ。華麗な攻撃でゴールを目指していくと同時に、厳しい戦いでも走りきり、勝ちきるタフさを名門はこの夏に磨く

(取材・文 吉田太郎)
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