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[総体]全国屈指の名手へと大ブレイクした夏、昌平MF針谷岳晃は涙の3位

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[8.1 全国高校総体準決勝 昌平高 0-1 市立船橋高 広島広域公園第一球技場]

 我慢していた涙が溢れ出た。3位表彰を受ける昌平高のMF針谷岳晃(3年)は気丈に前を向いていたが、3位メダルを首にかけられると、その後我慢できずに手で顔を覆った。「3位で悔しかった。優勝したかった」。3連覇を狙った東福岡高戦で後半アディショナルタイムに決勝点となる直接CKを決め、敗れた市立船橋高との準決勝でもそのテクニックを駆使したプレーでピッチ上の誰よりも会場を沸かせていた。そしてチームは初出場で3位と堂々の成績を残したが、欲しかったのは日本一の称号。それだけに悔し涙が頬を流れた。

 対戦した市立船橋の朝岡隆蔵監督も「フリーなところを見つけるが上手い」と分析していたように、市立船橋の間を見つけ出してそこから攻撃をコントロールした。特に前半は針谷に対するプレスがハマらなかった市立船橋を尻目にファーストDFを鮮やかな身のこなしでかわした針谷はドリブルで前進しパスをさばいた。そしてミドルシュート。今大会やってきたプレーをこの日も表現していた。

 後方でボールを持たせることを苦にしない市立船橋がマンツーマンをかけて来ないこともあって、針谷自身は後半もボールを受ける回数を増やすことに成功。ミスなく攻撃をコントロールした。「失っちゃいけないと言われていたので。失わないことについては毎試合毎試合チャレンジしてきているので、自信もついてきている。そこは思い切ってやっているところなんで良さが出たかなと思います」。低い位置ではボールを全く失わずにプレーしていたが、ゴールに近づかせてもらうことはできなかった。それでも後半17分にはクリアボールに反応して右足一閃。強烈な一撃がゴールを捉えたが、シュートはGK井岡海都のファインセーブにあってしまう。エースFW本間椋へのラストパスもコースを消され、得点することができなかった。

「(市立船橋は)球際が全然違ったんでそこが勝負の分かれ目だった。ボールにボールに来るんで、みんなそこにプレッシャーを感じたと思う」と針谷。藤島崇之監督が「あそこ(針谷)だけはポイントとしてもっていたと思う。線は細いですけど、球際の上手さ、(相手ボールは)引っ掛けるところはできていた」と評したように、針谷のプレーはチームの支えとなっていた。完全には封じ込まれなかったために、チームは折れなかった。針谷も「始まる前でも全国でできると言われていた。信じてやっていたのでできた」と振り返り、昌平もそのショートパスを軸としたサッカーで市立船橋を苦しめたが、全国トップレベルとの差も感じる一戦となった。

 藤島監督は「現時点で優勝する力はないと実感しました。小さなところ(の差)がこういう結果につながってくる。点に関わる一個のプレーもそう。いつもどおりが体現できるかが大切。プレッシャー早くない局面でそう感じてしまうことも足りない。また、ゼロからつくりあげるところはモチベーションに繋げていかなければならない」。チームが掲げている日本一を果たすためにはこのレベルの戦いを勝ち抜かなければならない。

 針谷は「この先警戒されてくると思う。その時に突き詰めてやっていけば(いつも通りのプレーが)自然と出てくると思う。トレーニングからあれ以上の厳しさでやっていけば、市船とやっても違和感なくやれると思う」。この夏、全国トップレベルを体感。大ブレイクを遂げたと同時に悔しさも味わった針谷、そして大会を通してインパクトを残した昌平は、これまで以上に突き詰めて、意識高い日々を過ごして冬の選手権で日本一に再挑戦する。

(取材・文 吉田太郎)
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