beacon

「悔しいだけで終わるのはもったいない」、清水ユースを牽引したキャプテンDF立田悠悟

このエントリーをはてなブックマークに追加

[8.4 クラブユース選手権(U-18)決勝 FC東京U-18 2-0 清水ユース 味フィ西]

 泣き腫らした赤い目で淡々と語った。「ここまで来たからには、この雰囲気を楽しもう。勝って静岡に帰ろうと言っていて。なのに負けてしまって、非常に悔しいんですけど、悔しいだけで終わるのはもったいない。この敗戦を無駄にしないように、必ずリベンジしたい」。涙の準優勝となった清水エスパルスユースのDF立田悠悟(3年)は静かに誓っていた。

 グループリーグ(GL)は1勝1分1敗の2位。最終節では鳥栖と5-5という壮絶な打ち合いをみせて、決勝トーナメントへ進んだ。その後は大宮ユースを1-0で下し、準々決勝ではGLで屈していた三菱養和SCユースに1-0でリベンジ成功。準決勝では延長戦の末、神戸U-18を下して、14年ぶりの決勝へやってきた。

 平岡宏章監督が「GLでこれじゃいけないという風になったのがターニングポイントになった」と振り返ったとおり、キャプテンの立田も「自分たちは他のチームに比べて、決勝トーナメントへいくなかで、敗戦も接戦も経験しました。こういうところに来るまでの色々な経験を決勝トーナメントで活かせたのは良かったなと思います」と言う。

 良い守備から良い攻撃へ。決勝進出した清水は、徹底した戦いぶりで14年ぶりの頂点を目指した。しかし、0-2の零封負けで準優勝。指揮官が「なんせ田舎者ですから、雰囲気に呑まれたのが(敗因の)ひとつ」と話したように、堅さの目立つ入りとなり、思うようなプレーはできず。なんとか耐え忍んでいたが前半32分に失点。前半終了間際の45分には2失点目を喫した。

 攻めるしかなくなった後半は、果敢なプレスでボールを奪い、サイド攻撃で見せ場をつくったが、ゴールにはつながらず。2日前の準決勝で延長戦までの110分間を戦っていたこともあり、徐々に疲労が色濃く見え始めると、あと一歩のところでの精度が低下していった。一矢報えずに0-2の敗戦。試合終了と同時に多くの選手がしゃがみこみ、涙した。

 CB立田は「攻められる時間帯が多い中で、自分たち後ろがどれだけ守れるかが大事になると思っていた。前半のうちに2点を決められてしまい、もっと我慢できていれば良かったんじゃないかなと思います」と悔やむ。

 開始5分には相手の右クロスがGK水谷駿介の後方に落ちるという、あわやのシーンもあったが、詰めていた立田が必死にクリア。全員でカバーし合ってのプレーもみせた。しかし耐え切ることはできなかった。

「前からのプレスではめて、前へ蹴らせてというか。今日の後半みたいなサッカーが最初から出来ていれば、もっと結果は変わっていくのかなと思います」。後悔ばかりが主将の口をついた。

 立田は昨季の主将だったDF村松航太(現・順天堂大1年)に憧れ、その背中を追い続けてきた。去年まではSB村松の横でプレーし、多くを学んだ。「キャプテンとして熱いハートを持っていて、それでいてプレーは冷静でカバーリングに長けていて……」。先行く先輩を追うのに必死だった。

「去年は航太くんに頼りきりで、自分は得意なことだけをやっていればいいという環境のなかでサッカーをやってきました。今年は、あの人がいないと何もできない自分がいた。それでは上にはいけないので、カバーリングだったり、ゲームキャプテンとしてチームをまとめることだったり、声で鼓舞したりすることは意識してやっています」

 主将となった立田は、まばゆいほどの先輩像に飲み込まれそうになりながらも、必死に自分らしいリーダー像を模索。身体を、声を張って、泥臭くチームを引っ張った。そして村松も成し遂げることはできなかった決勝行きをつかんだ。

 そんなCBを平岡監督は「1年生のときには大きいだけの選手でしたが、ここ一年でぐっと伸びた選手。もっとできるポテンシャルを感じる選手」と称え、チームメイトの10番MF望月陸(3年)も「今年はあいつがチームの軸になって、頑張っている。後ろにあいつがいてくれると安心しますし、後ろからの声というので、前にいる僕たちは助かっている。存在はやっぱり大きいです」と信頼を寄せる。

 それでも清水のキャプテンは、まだまだ物足りない様子。「まだまだ(航太くんには)辿り着けないので。だからこそ目標にした選手なので。でも近づいていって、結果的にいつか追い越すことができれば……自分もこれから大きくなれると思うので」と口にした。

 清水ユースの夏は涙で終わった。とはいえ夏の連戦を戦い抜いての準優勝は誇れる結果に違いない。「準優勝は悔しいですけど、ここまで来れたことで自信はついたと思うので。これをプレミアやJユースにつなげて、少しでもいい順位で終わらせたいと思います」と話した立田は「練習から自分たちがどれだけ成長できるか、自分としてもこれからが楽しみ。これからまた成長していければ」と涙で濡れた目を前へ向けた。

 この悔しさを、どうつなげるかは自分たち次第。うっすら見えたが届かなかった日本一。この夏の戦いはそれぞれの胸に熱く刻まれたことだろう。チームとして急成長を遂げた清水ユースの選手たち。これからも自分たちの足で一戦一戦、未来を切り拓いていく。

(取材・文 片岡涼)
▼関連リンク
【特設ページ】第40回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会

TOP