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[MOM388]東海学園大FW畑潤基(4年)_インパクト重視、“トウガク”の10番が見せた『えげつない』衝撃

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[大学サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[8.7 総理大臣杯1回戦延期分 東海学園大3-0阪南大]

 今流行りの“バイキング・クラップ”も披露するなど、スタンドを盛り上げていた阪南大の応援団もその瞬間、静まり返る。続けて彼らから聞こえてきたのは「えげつないな……」と呟く声。「蹴る瞬間に『入るな』と思って、みんな走ってきたので超嬉しかったです(笑)」と笑ったのが、『えげつない』ゴールを叩き込んだ10番。FW畑潤基(4年=東海学園高)が挙げた“インパクト”抜群の先制ゴールが、東海学園大に4年ぶりとなる総理大臣杯での勝利を呼び込んだ。

 「守るモチベーションはないので、攻撃で解決するチーム」と安原成泰監督が表現する東海学園大は、優勝候補の一角を担う阪南大に立ち上がりから攻め込まれる時間が続いたが、その瞬間は前半21分に訪れる。左サイドでFW榎本大輝(2年=中央学院高)のパスを受けた畑が、ほとんど角度もなく、誰もがクロスを想像したタイミングで躊躇なく左足を振り抜くと、強烈な弾道はファーサイドのゴールネットへ突き刺さる。

 「ああいうのが彼の持ち味ですからね」と安原監督が言及すれば、「ああいう所から決めることが多くて、『入るんじゃないかな』という感覚で打ちました」と畑も涼しい顔。2人の言葉から察するに、こういうゴールは決して珍しくないのだろう。

 「勝ち負けというよりも自分たちの攻撃的なサッカーをして、まず“インパクト”を残そうということで」(畑)ゲームに挑みながら、前述した阪南大応援団の表現を借りれば、スタンドの大半が感じたであろう『えげつない』一撃に勢いを得た東海学園大は、32分にも畑のアシストでDF仲啓輔(3年=藤枝明誠高)が追加点を奪う。

 後半開始からMF重廣卓也(3年=広島皆実高)とFW外山凌(4年=前橋育英高)を一気に投入した阪南大が押し込む展開の中で、後半33分にはFW武田拓真(3年=中央学院高)が綺麗なゴールを沈めて勝負あり。「自分でもビックリしてます」と畑も口にしたファイナルスコアは3-0。個人技にこだわるあまり、「ドリブルで全部抜いて行っても最後にシュートを外すというチーム」(安原監督)が3ゴールを奪い切り、見事に関西の強豪を撃破した。

 東海学生リーグの前期9試合で畑が積み重ねたゴールは実に19。開幕戦の中部大戦ではハットトリックもダブルハットトリックも超えて、あわやトリプルハットトリックという8ゴールをマークしている。

「打ったら入るというのが結構多いですね。シュート力には自信があるので、インパクトさえすれば行けるかなとは思っています」と好調を維持している現状を語った4年生ストライカーはプロ志望。この日もJクラブのスカウト陣が、こぞってピッチヘ鋭い視線を送っていた。

 畑は「監督からも今日の試合前に『J1やJ2に行こうと思ったら、ここは勝たなきゃダメだし、オマエが点を取らないとダメだ』と言われたので、『その通りだな』と思いながらも、『凄いプレッシャーを掛けてくるな』と思いました」と笑顔で明かしたが、きっちりゴールも挙げた上に勝利までモノにした“トウガク”の10番の名前は、間違いなくスカウト陣の脳裏に刻まれたはずだ。

 昨シーズンのリーグ戦は8ゴールという数字に終わっており、そのことを安原監督に伺うと「アイツは夏過ぎにケガしたんですよ。普通にやっていれば今年ぐらいのゴールは取れていたはずですし、インカレももっとやれたと思うんですけどね」とのこと。

 「去年の夏のリーグ戦で肉離れをしてしまって、そのままリーグ戦もインカレも出られませんでした。それはムチャクチャ悔しかったですね。リーグ戦も全部見に行ったんですけど、自分が出られない責任というのも感じましたし、4年生ともっとやりたかったというのもあります」と本人の中にも苦い思い出として刻まれている。

 ただ、何もせずに困難な時期をやり過ごすような男ではない。「ケガしてしまったので『来年こそは』ということで筋トレもしっかりしましたし、動画でプロの選手の動き出しとかをしっかり見ることのできる状況だったので、その中で自分のプレースタイルもちょっとずつ変わってきていて、今までは落ちて受けることが多かったんですけど、まずは裏を狙おうという意識が付いたかなと思いますね」とその時期を振り返った畑。

 今シーズンはチームが4-2-3-1から4-3-3気味の布陣にシフトチェンジしたことも追い風に、よりゴールを最優先に意識できているからこそ、1試合平均2.1ゴールという驚異的な数字をリーグ戦で残せていると言えそうだ。

 次の相手はここ3年の総理大臣杯で2度もファイナルの舞台に立っている明治大。しかもDFラインには、甲府内定のDF小出悠太(4年=市立船橋高)に大宮内定のDF河面旺成(4年=作陽高)とJ1クラブへの加入が決まっている2人が聳え立つ。もちろん高く大きな壁には違いないが、逆に畑にとってはさらなる“インパクト”を残すことを考えれば、格好の相手でもある。

 「そういう強い相手とやれる機会はなかなかないと思うので、そこで自分がゴールを挙げて勝ちたいです」と力強く語った畑。にわかに注目を集める2回戦も、“トウガク”の10番から目が離せない。

(取材・文 土屋雅史)
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