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[MOM392]順天堂大MF旗手怜央(1年)_「高校で磨いてきた技術がある」、1年生の“別格”MFが3戦連続弾

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[8.10 総理大臣杯準々決勝 びわこ大0-1順天堂大 ヤンマーフィールド]

 ルーキーらしからぬ落ち着いた佇まいで、そのMFはピッチに立つ。今大会4点目となる3戦連続弾を決めたのは順天堂大MF旗手怜央(1年=静岡学園高)だ。その右足でゴールネットを揺らし、順天堂大を18年ぶりの全国4強に導いた。

 値千金の決勝点が生まれたのは0-0の後半7分だった。センターライン付近でボールを受けた旗手は自ら持ち上がり、やや右へ流れながらPA手前で右足を振りぬいた。

 「前半からシュートを外しすぎていた部分があって。あの位置で打つか迷ったんですけど、目の前にゴールが見えて、シュートコースも空いていたので」。冷静に見極めての鋭い一撃はゴールへ突き刺さった。「上手く力を抜いて、隅を狙って打ったら入った。良かったです」と1年生MFはハニかむ。チームはびわこ成蹊スポーツ大を1-0で下し、4強入りした。

 とはいえ、この日のプレーには課題も浮かんだ。順大の堀池巧監督は「彼はもちろん期待以上のことをやっていると思うけれど、それ以上に決定機だったり、決めないといけない部分を外している事実もある」と言い、「もっと周りを使って活かすプレーもある。前半なんて、なんであの角度で打ったんだと……」と指摘した。

 そんな指揮官も口にする課題が見えたシーンは前半44分、左サイドからカウンターで持ち込んだ旗手は、角度ない位置から自らシュートを放ったがサイドネットへ外れた。ファーサイドに味方2人が控えていたが、「(自分が)シュート、シュートで見えていなかったです」。

 あの場面を決めていれば、前半リードで折り返し、もっと楽な試合展開になっていたはずだった。強く悔やんだMFは「自分でいくというのが(自分の)持ち味ですけど、そういうのを出しすぎると、こういう難しい試合展開になるので、そこは反省して、味方を活かせるところは活かしていきたいです」と反省していた。

 もちろん厳しい言葉をかける指揮官も、旗手の良さは十二分に分かっている。「たしかにあの場面で自分で打ってしまいましたけど、彼の良さは強引にいくこと。コンタクトプレーを怖がらないのは彼の良さ。それに体力的には大学5年生だから」とジョーク交じりに評価を語る。

「(旗手は)ボールを扱う技術を持っている。狭いブロックの中でもコンパクトななかでも、相手を背負いながらボールを受けることができるというのは、体幹だったり技術があるからこそ。逆に相手が取りにきたときは、それを利用する力。そういうのは教えなくてもできるので。ドリブルしながらでも相手にぶつかれるのも、技術があるからこそのこと」

 静岡学園高から今春に順天堂大へ進んだ旗手。高校選抜の欧州遠征などもあった影響で開幕デビューとはいかなかったが、第2節で途中出場すると、後半からの出場となった第3節ではアシストを記録。第4節以降は先発へ定着し、前期リーグでは10試合へ出場すると4得点1アシストの結果を残した。「こんなに出られるとは思っていなかった」と言うが、新人賞筆頭候補といえる奮闘ぶりだ。 

 大学サッカーでの挑戦が始まり、約4か月が経ったが「身体が強かったり、足が速かったり、ヘディングが強いという選手がいっぱいいて、戸惑う部分もあるんですけど。自分は高校の時に磨いてきた技術があるので、そこで勝負するという部分では負けていないと思う。でもまだまだ止められている部分やシュートにいけない部分があるので、そこは磨いていきたいです」と手応えとともに課題を口にした。

 ファイナル進出をかけて、準決勝の相手は日本体育大。関東勢同士の対戦となる。旗手には否が応でも4戦連続弾の期待がかかるが「次の試合で決めたら、4戦連続とかを考えるのではなくて。チームの勝利のために点を決められればいいと思っているので。チームのために点を決めたい。次は関東同士で負けられないので。絶対に勝ちたいと思います」と強く誓った。

 今はまず総理大臣杯での日本一獲得を目指し、将来的にはJ入りを見据えている。1年生MFは「高校卒業でプロへいけずに順天堂大に来たので。4年後の最終目標がプロであるように、焦りすぎてはだめだと思うので、ゆっくりゆっくりプロに近づけるように頑張りたい」とも語った。

 旗手は高まる評価や周囲からの声に流されることなく、自身の足元を見つめ、自省しながら着実に歩みを進める。本人は淡々とプレーし、やるべきことをやっているだけというスタンスを貫くが、順天堂大の試合を見た人々に28番の姿は強く刻まれるはずだ。それだけのものを1年生MFは示している。

(取材・文 片岡涼)
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