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無念の負傷交代も…明治大FW木戸皓貴「悔いはないです」

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[8.14 総理大臣杯決勝 明治大1-0順天堂大 ヤンマースタジアム]

 無念の負傷交代となったものの、試合後の顔は晴れやかだった。明治大FW木戸皓貴(3年=東福岡高)は、2トップの一角に入って先発するも、前半24分の接触プレーで左膝を負傷し、同30分に交代。ベンチから仲間の戦いを見守り、初優勝を見届けて、「ピッチには立てたし、やるべきことはできたので悔いはないです」と言い切った。

 昨夏の総理大臣杯2回戦で右ひざ前十字靭帯損傷の大怪我を負い、今年5月に公式戦復帰した。長く苦しいリハビリを経て、10番はチームへ戻ってきた。今大会では準決勝まで自身の得点こそなかったものの、クロスバーやポスト直撃の強烈なシュートを放つなど、抜群の存在感。そして決勝の舞台へ立った。

 しかし1-0の前半24分にアクシデント。DF原田鉄平(3年=静岡学園高)との接触で左膝を負傷。「全体重が左膝に乗った瞬間に捻ってしまって、もうだめかなと思ったんです」。このプレーで相手の原田は立つこともできずに即座に交代。それでも辛うじて歩けた木戸は、まだピッチに立っていたい気持ちが強く、給水のタイミングでスタッフへ「前半だけでいいからやらせてくれ」と訴えた。

 約5分ほどプレーを続けたが、痛みは強く。「チームもリードしていたし、ここは仲間を信じて、自分は先のことを考えて」、自ら交代を求めた。左膝へテーピングを施したFWは、その後はベンチからチームを支えた。必死に声を張り、身振り手振りで味方へエールを送った。

 ハーフタイムを経ての後半20分、MF土居柊太(3年=浜松開誠館高)が途中出場する際は、ベンチ前で肩を組み、「お前が1点を決めて、チームを楽にさせろ」と熱く声をかけた。1年生のときから、ともにトップチームでしのぎを削りあってきた同級生。今大会好調のMFを激励した。

 その後は落ち着かない様子でベンチ前で立ったり座ったりしながら、「正直早く時間が過ぎろと思っていました」と祈るように戦況を見守った。木戸の願いは届き、明治大は1-0で逃げ切っての勝利。初優勝を遂げた。

「日本一になれたことは嬉しく思うし、この一年間は他の人以上に(怪我の影響で)苦労してきたし、去年はああいう形でチーム全体で悔しい思いをでしたので、それを返せたのは嬉しいです」 

 悔いはないと語った10番だが、まだやり残したことはある。今大会無失点で大会を終えたことは、来年への“宿題”となった。「今大会得点を取れていないので、そういう悔しさがまた改めて出来た。その悔しさを後期リーグにぶつけたい。三冠を獲るためにはリーグ戦で優勝しないといけない。まずはその一歩として、チームに貢献できるように。自分が得点を取り続けて、チームを勝たせ続けられれば、それがいいなと」。

 負傷の程度は現時点では不明。それでも過去約9か月に渡る苦しいリハビリの日々を乗り越えてきたFWは、また強くなって戻ってくるはずだ。紫紺の10番はどんな苦境も跳ね除ける。

(取材・文 片岡涼)
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