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いわきFCはJ3福島に延長の末、惜敗…天皇杯出場ならずも「遠い存在じゃない」

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[8.21 福島県選手権決勝 福島2-1(延長)いわきFC あいづ]

 第21回福島県サッカー選手権兼天皇杯全日本サッカー選手権福島県代表決定戦の決勝が21日、あいづ陸上競技場で行われ、J3の福島ユナイテッドFCが福島県2部のいわきFCに延長戦の末、2-1で競り勝ち、9年連続9回目の天皇杯出場を決めた。

 県2部リーグのチームが、Jクラブをあと一歩のところまで追い詰めた。スポーツメーカーのアンダーアーマーの全面サポートを受けて今季より生まれ変わったいわきFC。公式戦連勝は「21」でストップしたが、先制されながら後半41分に追いつき、延長戦まで持ち込む粘りを発揮した。

 いわきFCは4-3-3のシステムを採用し、GK大野将弥、4バックは右からDF佐藤令治、DF高野次郎、DF古山瑛翔、DF新田己裕と並んだ。中盤はMF山崎大成をアンカーに、インサイドハーフがMF新井伶治とMF久永翼。3トップは右にFW平岡将豪、左にFW片山紳、中央にFW菊池将太が入った。

 前半4分、片山が左サイドを突破し、左足でシュート。角度はなかったが、積極的にチームのファーストシュートを打った。その後も左サイドから積極的に仕掛ける片山。立ち上がりはいわきFCペースだったが、前半16分、福島はMF村岡拓哉の右クロスにFW金弘淵が頭で合わせ、先制点を奪った。

 勢い付く福島は前半24分、再び村岡の右クロスからこぼれ球をMF橋本拓門がシュート。決定的な場面だったが、GK大野が至近距離で止め、ピンチをしのいだ。GKのビッグプレーで勢いを取り戻したいわきFCは前半アディショナルタイム、佐藤の縦パスを平岡が胸トラップからボールを浮かせて素早く反転。スルーパスに片山が走り込み、GKと1対1を迎えたが、シュートはGK内藤友康の好セーブに阻まれた。

 1点ビハインドで前半を折り返したいわきFCは後半17分、新井に代えてMF吉田知樹を投入。後半25分過ぎの給水タイム後にはCBの高野を前線に上げるパワープレーに出た。同33分には片山に代わってMF下重優貴がピッチに入り、攻勢を強める。同41分、負傷の山崎がDF大出圭亮と交代するアクシデントもあったが、直後の後半42分、左サイドのスローインからゴール前の菊池がラストパス。高野が抜け出し、GKとの1対1から冷静に左足で流し込んだ。

 土壇場の同点ゴールで1-1。試合は延長戦にもつれ込んだ。いわきFCは高野をCBに戻すが、2点目を奪ったのも福島。延長前半9分、DF酒井高聖の右クロスに途中出場のFW樋口寛規が右足ボレーで合わせ、2-1と勝ち越した。必死の反撃に出るいわきFCだが、延長前半11分の下重のシュートはDFのブロックに遭い、同14分、右CKに合わせた平岡のヘディングシュートもGKに弾かれた。

 もう一度、高野を前線に上げるパワープレーを仕掛けるいわきFC。延長後半に入り、福島の選手が次々と足をつり始める中、決して走り負けることはなかったが、最後のところで決め切れない。延長後半アディショナルタイム、左CKの場面でGK大野もゴール前に上がったが、ゴールは生まれず、タイムアップのホイッスルが鳴った。

 試合終了の瞬間、高野、菊池はピッチの上に大の字に倒れ込み、試合後の整列では涙する選手の姿もあった。シュート数は17本対11本、CKの数も16本対6本と、数字上は上回っていた。しかし、結果は1-2の惜敗。Jクラブに地力の差を見せつけられ、今季公式戦22試合目にして初黒星を喫した。

「選手は最後まであきらめず、ファイトした。彼らのハードワークはうれしい」。ピーター・ハウストラ監督はそう選手をねぎらうと、公式戦初黒星にも「90分を終えた時点では1-1。負けていないからオーケーだよ」とジョークを飛ばし、「負けから学ぶこともある。こういう種類の試合から学ばないといけない」と指摘した。Jクラブ相手の公式戦が貴重な経験となったのは間違いなく、「今日の試合は自信になったはず。(Jリーグは)近いレベルにある」と手応えもあった。

 今後は県2部リーグが再開し、9月に全国クラブ選手権東北大会、10月には全国地域チャンピオンズリーグ出場権を懸けた全国社会人選手権も開催される。天皇杯への出場は逃したが、今後も大事な大会が続いていく。

「Jリーグのチームと公式戦で対戦するのは初めてだったけど、練習試合では何度もやっていた。今日も全然やれていたと思うし、そんなに遠い存在じゃない」。そう力説した高野は「一番目指しているのは(全国地域チャンピオンズリーグを勝ち上がっての)JFL昇格。そこを目指して、目の前のすべての試合に勝っていきたい」と前を向いた。

(取材・文 西山紘平)

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