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[関西U-16~Groeien~]「競争相手は3年」少数精鋭で意識と力高める履正社が初芝橋本振り切る

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[8.25 関西U-16~Groeien(育てる)~2016第8節 初芝橋本高 1-4 履正社高 伊勢ヴィレッジA]

 25日、関西地域の強豪10校が長期にわたるリーグ戦を通して、U-16選手の育成および指導者のレベルアップを図る「関西U-16~Groeien(育てる)~2016」第8節が行われ、初芝橋本高(和歌山)対履正社高(大阪)戦は4-1で履正社が勝った。

 和歌山の名門、初芝橋本と今夏の全国高校総体8強の履正社との一戦は序盤から履正社が押し込んだが、履正社の上原岳大コーチは「流れはあったけれど、最後の思い切ったところが全然なかった」。履正社の選手たちが丁寧に崩すことにやや重きを置いてしまっていたこと、また初芝橋本が我慢強い守りで乗り切ったことで試合は競った展開となった。

 初芝橋本はベンチ入りした阪中義博監督が「この時期にしては良く頑張ったと思います」と語ったように、個々の技量で上回る履正社に束で挑んで対抗する。履正社は前半33分に右サイドを突いたFW小松海樹の折り返しを全国総体で3試合に先発しているMF野口天葵が1タッチでゴール押し込んで先制したが、ここで落ちなかった初芝橋本は36分にMF梶川絢清のドリブルから絶妙なターンでDFを外したFW伊丹惇朗がスルーパス。これで抜け出したFW小川諒悟が同点ゴールを決めた。

 履正社のミスを突いて高い位置でボールを奪うことに成功していた初芝橋本は、小柄なMF加藤道将のパスから梶川がシュートを打ち込み、試合を通してよくボールに絡んでいたMF中井稀音が直接FKでゴールを狙うなど畳み掛けようとする。「我慢比べやぞ!」という声を背に後半に臨んだ初芝橋本だったが、履正社は流れのいい崩しから2点目をもぎ取った。後半3分、長めの距離のパスを連続で速く、正確に繋いでチャンスをつくり出すと、最後はMF塩谷周造の右クロスをFW阪本隼矢が頭で合わせて勝ち越した。

 90分勝負でともに体力が低下してきた後半半ばに初芝橋本も同点機を迎えたが、20分に小川のシュートのこぼれ球に梶川が飛び込んだシーンは勇気を持って飛び出した履正社GK笹部克海が阻止。逆に履正社は攻守で存在感を示したMF濱瞭太がワンツーからシュートを撃ちこむなど追加点を狙って攻めていく。そして30分、右サイドへ抜け出した阪本のゴールで加点すると、33分には切り返しでDFを外したCB道前克彦のラストパスを交代出場のMF島里将伍が押し込んで4-1。敗れた初芝橋本の阪中監督は「後半(相手の体力が落ちた時に)決めていれば、もう一歩違ったと思う。そこはまた詰めて行くしか無い」。選手たちの頑張りに及第点を与え、ここからのレベルアップを期待していた。

 履正社の1年生は19人。同じ大阪府内でも部員の総数が100、200人を越えるチームもある中では、非常に少ない人数で切磋琢磨している。人数が少ないが故に、彼らにとっては同学年の選手よりも、上級生たちが現実的なライバルだ。上原コーチは「競争相手は3年生。Aチームで何ができるかが基準です」。Aチームを近くに感じながら日々トレーニングしている履正社の1年生。実際に野口や濱、小松はAチームでチャンスを得て、そこで勝負しているが、人数が少ないために彼らは1年生チームの試合でも出場を重ね、同級生たちを刺激させている。野口は「シンプルなプレーとか、もっと自分がトップチームでやっていることを1年生でもみんなに伝えていかないといけない」。

 もちろん、試合の中で個性を発揮するシーンもあるが、上原コーチが「自制しながらやり出して、チームとしてまとまり出した」と語るように、利己的なプレーは確実に減ってきているという。Aチームで求められるものを共有しながら、また少人数でB戦を含めたタイトなスケジュールを乗り切ることでフィジカル面やメンタル面も鍛えられてきた。そしてチームは今大会、最終節を残して3位と、1年生チームでも結果を残している。野口は「3年間で全国で優勝できるチームになりたい。個人的には大事なところで決めれる選手になりたいですね。(1年からAチームにいることは)凄くいい経験。でも、もっと結果出していきたい」。身近にあるAチームでポジションを勝ち取ることに、他校以上に早く視線を向けている履正社の1年生。この「関西U-16~Groeien(育てる)~」の厳しい90分ゲームのリーグ戦も、成長への力にする。

(取材・文 吉田太郎)
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