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[MOM1863]大津MF中野夏輝(3年)_G大阪ユース完封した“潰しのエキスパート”

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[8.27 高円宮杯プレミアリーグWEST第10節 大津高 3-0 G大阪ユース 大津町運動公園競技場]

 球際、切り替え、運動量。この3つの要素でG大阪ユースを上回り、大津高の完勝となった高円宮杯プレミアリーグWEST第9節。そのMOMの候補としては、先制点を決めた上で守備での奮闘も光ったMF田中匠、先制アシストに3点目を決めたFW藤山雄生、あるいは決定的な2点目に加えた再三の突破でG大阪守備陣をかく乱したMF杉山直宏の名前が挙がるだろう。彼らがそれぞれ素晴らしかったのは間違いない。ただ、この試合の殊勲者として、得点には絡んでいないボランチの名前を挙げたとしても、異論は出ないのではないか。

 序盤から大津が挑んだのは“ガチンコ”の勝負だった。相手より早く走り、相手より強く当たる。「セカンドボールを全部相手に取られた」とG大阪・宮本恒靖監督が唇を噛んだように、中盤での“拾い合い”も制してゲームの主導権を握った。その中心にいたのが、DF登録のボランチ、中野夏輝だった。

「本職はサイドバックなんです」と言うように、基本はサイドで運動量を出し、対人で戦うタイプ。ただ、「中盤の守備を作りたいときに僕を(ボランチに)置くみたいです」とも語る。G大阪攻撃陣に対して、「バイタルを開けると10番(FW食野亮太郎)にやられる。バイタルの前で潰せる選手が必要だった。あそこで抑えられるかどうかだった」(平岡和徳総監督)。 “潰しのエキスパート”は「決まったのは3日前くらい。平岡先生のひらめき」(山城朋大コーチ)という大抜擢へ、見事に応えることとなる。

「自分のストロングポイントはそこしかないので」と言う球際の守備。何度“バチン”という音がピッチに響いたか分からないが、相棒の石坂竜哉とともにまったく怯むことなく、G大阪のテクニシャンたちに応戦。少しのコントロールミスも見逃さずに攻撃を潰し、奪ったボールはシンプルに離して攻守のリズムも作った。対戦した宮本監督は「相手のボランチの圧力が素晴らしかった」と真っ先に称えた。

 元々は宮崎県綾町の出身。地元ではその身体能力のポテンシャルで有名人だったそうで、「遠征すると、町長が『中野は元気にやっていますか?』と聞いてくる」(山城コーチ)のだそうだ。かつてはその運動能力に任せたプレーが先行してしまったそうだが、大一番で見せた組織の中で機能する着実な仕事ぶりは、この3年間の成長を誇示するもの。3-0での完勝の陰には、守備で魅せた“潰しのエキスパート”がいた。

(取材・文 川端暁彦)
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