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[選手権予選]伝統校・帝京が3か月半ぶり着用のカナリアユニとともに舞う!昨年度全国2位の國學院久我山撃破!:東京B

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[9.10 選手権東京都Bブロック予選1回戦 國學院久我山高 0-1 帝京高 駒沢補助]

 第95回全国高校サッカー選手権東京都予選は10日、1次予選を突破したチームとシード校による2次予選が開幕。昨年度全国高校選手権準優勝の國學院久我山高と全国優勝6回の名門・帝京高が対戦した注目のBブロック1回戦はFW中瀬大夢(3年)の決勝点によって帝京が1-0で勝った。帝京は7年ぶりの全国大会出場へ向けて難敵を突破。帝京は18日の2回戦で修徳高と戦う。

 伝統のカナリアカラーのユニフォームが歓喜に舞った。自分たちの良さを出すというよりは、相手の良さを“壊す”サッカー。理想としているサッカーではなかったかもしれない。だが、日比威監督が「昔の帝京らしい、潰して蓋をしていく」守備と走ることを徹底した帝京が、昨年度全国ファイナリストとの注目対決を制した。日比監督は「出ているヤツ、出ていないヤツ含めて全て3年だった」と勝因に3年生たちの奮闘を挙げる。この日は、シーズン当初から先発を務めてきたMF三浦颯太や10番FW佐々木大貴といった注目1年生たちがコンディション不良もあって、ベンチスタート。その中で「3年生っていう意地もありますし、チーム内の競争で今3年生がスタメンで出ている。頑張って良かった」と振り返るMF高橋心ら3年生たちが気迫あふれるプレーをして見せた。

 日比監督が「行かないと好きなことをやられてしまう」と説明し、中瀬が「最初からガンガン前から行こうと。先週のTリーグ(國學院久我山に0-1で敗戦)ではリトリートしたんですけども、きょうは奇襲をかけようと思っていた。怖さ捨てて、もう一個相手に寄ろうと話していた。自分たちはチャレンジャーの気持ちで。上手さは向こうの方があるので走り勝つと思っていました」と振り返ったように、帝京は序盤から前へ、前への積極サッカーを展開。立ち上がりから決定機をつくり出すなど、入り良く試合を進める。3年生たちの気迫に呼応するかのように、注目のブラジル人アタッカー、MFサントス・デ・オリベイラ・ランドリック(1年)も守備での健闘が光っていた。

 一方、國學院久我山は清水恭孝監督が「勇気が足りなかったと思いますね。(重圧があったかもしれないが)それでも、勇気を持ってやらないと久我山ではない」と分析する内容となった。前年度全国準優勝校にとって注目される中での初戦。相手の厳しいプレッシャーもあったが、特に前半、チャレンジする姿勢に欠いたチームは判断のないプレーや適切なポジショニングを欠いた動きが続いてしまう。不用意にロングボールを蹴ってロストしたり、狙いとは異なる攻撃の組み立ても多発。その中でもMF名倉巧主将(3年)が正確なファーストタッチ、鋭いターンからチャンスメークしようとし、MF知久航介(3年)が縦パスを狙うなど攻め続ける。だが、帝京は「自分と五十嵐が(彼等を)どう切りながら、詰められるか。それができて良かった。自分たちが前を向かせない意識をしていた」という高橋とMF五十嵐陸(3年)のダブルボランチらが束になって相手の攻撃に阻止。またCB菅原光義(2年)が広範囲のカバーリングで危険を消したり、左SB市川雅(3年)が澁谷との1対1を止めるなど決定的なシーンをつくらせない。國學院久我山は空中戦の攻防でも強さを発揮する帝京に押し返されてしまった。

 それでも前半37分、國學院久我山はそれまでなかなか仕事のできていなかったエースFW澁谷雅也(3年)が右サイドでDF2人を抜き去ってクロス。クリアを拾った澁谷が再び入れたクロスをFW金田直輝(3年)が右足ダイレクトで合わせる。だがシュートはポストを叩き、スコアを動かすことができない。逆に「守って、守ってというのははじめから頭の中にあったので、ショートカウンターで一発狙おう」(中瀬)と少ないチャンスを狙っていた帝京が先制に成功する。後半12分、帝京は自陣でボールを奪うと、MF遠藤巧(3年)が左サイド前方のFW小田楓大(3年)へパス。縦にボールを運んだ小田が自身を外側から追い越した遠藤へボールをはたくと、コーナー付近まで走り切った遠藤がクロスを入れる。DFに当たってコースの変わったボールがニアへ走りこんだ中瀬の下へ。練習してきた成果を見せつけるようなカウンター攻撃を中瀬が左足で完結させて帝京がリードを奪った。

 國學院久我山は直後、右クロスに交代出場FW宮本稜大(1年)が決定的な形で飛び込み、28分には右サイドで知久からのパスを受けた澁谷がクロス。これをファーサイドへ飛び込んだ名倉が頭で合わせたが、帝京GK和田侑大(2年)がビッグセーブで阻止する。國學院久我山は主体的にボールを動かしながら相手ゴールをこじ開けようとするが、CB原田祐次郎(3年)や右SB青柳寛己(3年)らが相手の攻撃を跳ね返す度に応援席から大歓声の起こる帝京は集中力が切れない。5分間のアディショナルタイム表示後の43分、國學院久我山はショートパスを繋いでサイドを変え、最後は左サイドから切れ込んだMF三橋智哉(3年)が右足シュートを打ち込んだが、これは和田ががっちりとキャッチ。守り切った帝京がインパクト十分の白星を手にした。
 
 かつて数々の栄冠を勝ち取ってきた黄色いシャツは帝京の現役選手たちにとって憧れだ。だが、今年5月の全国高校総体東京都1次予選で武蔵高に苦杯を喫した後、選手たちは3か月半もの間、「オマエら弱いんだから」という理由でカナリアカラーのユニフォームを着用することを許されなかったという。公式戦のT1リーグ(東京都1部リーグ)では常にブルーのセカンドユニフォームを着用。中瀬は「(きょうも)着せてもらえないかなと思っていた」というが、この日待望の伝統のユニフォームをまとった選手たちはそれにふさわしいプレーをして、今季リーグ戦で2敗の強敵から白星をもぎ取った。高校選手権を6度、全国高校総体も3度制している名門も近年は低迷し、全国舞台から遠ざかっている。だが、この日は入学から一度も全国を経験していない3年生の思いが結実したゲームに。それでも、目指すところはもっともっと上にある。高橋は「全国しか無い。そこ目指して一戦一戦やっていきたい」。難敵を突破した帝京の2回戦の対戦相手は3年前に全国8強まで勝ち上がっている修徳。日比監督は「この運を味方につけられるかどうかは自分たち次第」と語っていたが、次の強豪対決でも再び白星を勝ち取れるように、帝京は歓喜の1勝から切り替えて最高の準備をする。

(取材・文 吉田太郎)
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